サバイバーの社会学
喪のある景色を読み解く
編:浜 日出夫
内容紹介
本書は死者と向き合いつつ生きる人と社会のあり方を理論的・経験的に考察することを目的としている。戦争、災害、事件、事故、病で多くの人の命が失われたあと、その死を抱えて生きる「サバイバー」たちについて多彩な手法を駆使しながら経験的に解明するとともに、死者との相互作用を社会に組み込むことで社会学理論の刷新を試みる。
目次
はじめに──喪のある景色
序 章 止まった時計
1 止まった時計
2 サバイバーの社会理論
3 2つの時間が出会うとき
第1章 混沌の生と可塑性の2つの顔──サバイバーズ・ナラティヴの条件をめぐって
1 病いの語りとホロコーストの証言
2 「反-物語」としての「混沌の語り」
3 苦しみの回帰としての語り
4 聴き取られざる物語
5 「再入場」への恐れとサバイバーの孤独
6 「証人」としての病いの語り手
7 語ることの条件を損なわれた語り
8 可塑性の2つの顔
9 この不穏な語りとともに
第2章 「亡くなる記憶」をサバイブする──〈触れられない経験〉の積極性をめぐって
1 「サバイバーの社会学」の問題提起と高校生が描く「原爆の絵」
2 「亡くなる記憶」が息を吹き返す
3 〈触れられない経験〉の積極性
4 経験できない経験の連鎖
5 〈想起の連鎖〉という「死者のデモクラシー」
第3章 サバイバーズ・ギルトを再考する──ライフストーリーとメタ・オートエスノグラフィ
1 社会学的に死者を語る
2 「被爆者になる」という語りの布置
3 罪意識の同心円を再検討する
4 ライフストーリーとオートエスノグラフィ
5 ライフストーリーとメタ・オートエスノグラフィ
第4章 東京大空襲で生き残った者の記憶実践
1 他者の死を抱え続ける人びと
2 記憶の語りから記憶の実践へ
3 死者に謝罪する:Mさんの場合
4 死者をよみがえらせる:Fさんの場合
5 死者を記録する:Hさんの場合
6 空襲の死者との向き合い方
第5章 被災の語りを中断すること──阪神淡路大震災の語り部にとっての東日本大震災
1 2つの震災を語ること
2 東日本大震災後の阪神淡路大震災の語り部という位置づけ
3 語り部へのインタビューから考える喪失体験の個別性と多様性
4 阪神淡路大震災の語り部であり続ける不安
第6章 想像の死者に向けた手紙──ライティング・ヒストリーの可能性
1 第3の可能性を求めて
2 語らない,語りえない縄文人の死生観はどのようにわかるのか
3 敗北宣言
4 亡き人への手紙の試み
5 どこまで聴き取りは日常生活を追えるのか
6 強い当事者性の氷解
7 手紙を書けないということ
8 ライティング・ヒストリーの展開
第7章 ハンセン病療養所を写真に撮り続けるということ──あるカメラマンによる死者との記憶の模索
1 体験者と直接出会うことが困難になるなかで
2 歴史的・社会的な出来事の体験と記憶の継承を巡って
3 ハンセン病療養所を写真に撮りはじめる
4 撮影とともに積み重ねられた関わり
5 変わりゆくその風景を撮り続ける──死者との記憶を生きる形
6 現在に遺された様々な表現を手がかりに
第8章 〈まだ-ある〉と〈もう-ない〉の狭間で──水俣病を生きるというあり方をめぐって
1 死者とともに生きる
2 埋め立てられる海
3 死者を呼び起こす
4 波と樹が語ること
5 〈あわい〉に立ち続ける
第9章 介護殺人加害者のその後
1 介護殺人とは
2 介護殺人加害者に関する先行研究
3 殺害経験・その後の生活の意味づけ
4 介護殺人加害者の「沈黙」
5 サバイバーとしての加害者の社会学に向けて
第10章 生きられる亡き人──時間の旅としての四国遍路
1 同行二人──亡き人との四国遍路
2 クロス・ナラティヴ──交差する物語と交錯する時間
3 生者と生者を結ぶ人──篠崎さんと私ともうひとりの物語
4 生者と死者を結ぶ人──篠崎さんの旅
5 無常のなかの永遠──巡り逢う2つの時間
終 章 止まった時計が動き出す時──サバイバーであっても,サバイバーでなくても
1 止まった時計とサバイバー
2 「死別と遺族の社会学」との微妙な差異
3 「無かったことにはできない」体験
4 プリーモ・レーヴィの生き方・死に方
5 生き残ったことの「罪」
6 「生きづらさ」の経験
7 〈環状島〉というモデル
8 止まった時計が動き出す時
9 サバイバーの自己再帰的再定義
人名索引
事項索引
ISBN:9784623091898
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:336ページ
。定価:3800円(本体)
。発行年月日:2021年10月
。発売日:2021年11月22日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JHB。