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岩波ジュニア新書 943

数理の窓から世界を読みとく

素数・AI.生物・宇宙をつなぐ

著:初田 哲男
著:柴藤 亮介

紙版

内容紹介

AI(人工知能)、生物の進化、宇宙に存在する暗黒物質--これらまったく異なる研究分野を、同じ窓から読み解く方法があります。数学を共通言語にさまざまな事象を理論的に解明する方法、数理です。数理の窓から見えるそれぞれの世界を、自らの進路選択や研究の魅力を交えながら、若手研究者たちが瑞々しい感性で紹介します。

目次

まえがき……………柴藤亮介

序 章——数理の窓から世界を眺める……………初田哲男


第1章 「数のふしぎ」のその先へ……………宮粼弘安
 数のふしぎをみる実験/数の原子、「素数」/フェルマーの小定理/素数は全部でいくつある?/北極星を追って/無秩序の中にひそむ秩序/フェルマーの挑戦状/数の夜空を彩る星座——素元星座定理/無数に広がる数の世界/数の「かたち」をめぐる旅——数論幾何学/地球とドーナツはどう違う?/曲線なのか面なのか/ドーナツの穴から解をのぞく/ドーナツの上には何が住む?/整数たちの「安住の地」——数論幾何学/数学禅問答——空間が先か、関数が先か/数のふしぎのその先へ


第2章 人工知能に絵を描かせる方法……………田中章詞
まずはじめに
人工知能とは何か
 SF的人工知能の難しさ/人工知能の実際/例迷路を解くプログラム/機械に学習させる/機械学習で絵を描かせる:生成モデル
生成モデルを作るとなぜ嬉しいか?
 いろいろな翻訳が可能になる/データを「増やす」ことができる/環境の動きを予想させることができる
具体的な生成モデル
 物理学を用いたモデル、ボルツマン機械/深層学習/敵対的生成ネットワーク
条件付きの生成モデル
 条件磁場付きのボルツマン機械/条件付きの敵対的生成ネットワーク/絵から別の絵への変換/教師不要の衝撃
機械学習のこれから
 少数データをどう取り扱うか/解釈可能性/知能について、再び


第3章 数理で読みとく生物進化……………入谷亮介
 生物の多様性に法則はあるか?/氏か育ちか/カエルの子はカエル、ダックスフンドの子はダックスフンド/みんな同じ?/突然変異で違いが生じる/偶然から必然へ/適応進化の法則と自然淘汰/生物はみな、うまくできている/研究者の仕事と、研究者になるまでの道のり/身近な「進化」/生物のデザインを実装する「バイオミミクリー」/適応進化をいかに数式で表すか/数理モデルって何だろう?/進化の数理の大胆さ/ゲーム理論の登場/生物の進化ゲーム/勝負の決着/進化の平衡状態とは?/進化ゲーム理論の具体例1 男女比の進化/男女比の適応進化の数理モデル/突然変異が不利とは? 進化的安定性とは?/進化ゲーム理論の具体例2 移動分散の進化/ホーム市場アウェイ市場 どちらに投資?/高校数学を使った適応進化研究の魅力
 【コラム】 自然淘汰の「功罪」


第4章 暗黒物質の色は何色?——見えないモノを調べる方法……………廣島 渚
はじめに/見えないモノの存在/モノが見えるということ/暗黒物質の探し方——物理学者の挑戦/暗黒物質探査の今後——3つの戦略のシナジー/まとめにかえて
 【コラム】 暗黒物質と暗黒エネルギー
 【コラム】 色々な候補


あとがき……………柴藤亮介

著者おすすめの本/執筆者紹介

著者略歴

著:初田 哲男
初田哲男(はつだ・てつお)
1958年大阪生まれ。1986年京都大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士)。筑波大学物理学系助教授、京都大学大学院理学研究科助教授、東京大学大学院理学系研究科教授、理化学研究所主任研究員などを経て、現職は、理化学研究所数理創造プログラム(iTHEMS)プログラムディレクター、東京大学名誉教授。専門は理論物理学。1997年西宮湯川記念賞、2012年仁科記念賞、2014年文部科学大臣表彰(科学技術分野)、2016年東レ科学技術賞、などを受賞。
小学校高学年で湯川秀樹の研究や生き方にあこがれ、理論物理学の世界を目指す。素朴な好奇心を失わず、いつも新しいことにチャレンジしたいと考えている。おもな著書に『岩波講座計算科学〈2〉計算と宇宙』(岩波書店、共著)、『Quark-Gluon Plasma』(ケンブリッジ大学出版局、共著)など。
著:柴藤 亮介
柴藤亮介(しばとう・りょうすけ)
1984年埼玉生まれ。東京都立大学理学部物理学科卒業(原子核理論研究室)。同大学院博士後期課程単位取得退学。2013年に株式会社エデュケーショナル・デザイン(現アカデミスト株式会社)を設立し、2014年に国内初の学術系クラウドファンディングサイト「academist」を、2015年に学術系メディア「academistJournal」を公開。8年間で約1000名の研究者、約1万5000名の支援者が利用するサービスに成長。
会社のビジョンでもある「開かれた学術業界」の実現を目指し、常にアカデミストのことを考えながら日々を過ごしている。サービスを運営するなかで、大学は税金で支援されるべきという「常識」の根源が気になりはじめ、ここ数年は大学論の関連書籍を読むことが増えてきた。

ISBN:9784005009435
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:212ページ
定価:860円(本体)
発行年月日:2021年11月
発売日:2021年11月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PDZ