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思想をよむ、人をよむ、時代をよむ。

書ほどやさしいものはない

著:石川 九楊

紙版

内容紹介

あんな書こんな書、珍書奇書
西郷隆盛、副島種臣、徳川綱吉、大塩平八郎、九代目市川團十郎、平塚らいてう、南方熊楠、岡本かの子など
書からすべてをよみとおす。

一画一画、一字一字の書の背景には、その人物の思想や生きた時代が宿る。王羲之、顔真卿、副島種臣、そしてこれまであまり取り上げられることのなかった西郷隆盛、大塩平八郎、岡本かの子に至るまで、一話一話読み切りで、古今東アジアの書を巡り、人と思想、時代を読み解く一冊。

目次

序 書ほどやさしいものはない

Ⅰ 一月一書、季節を楽しむ
   一月 歳(王羲之「蘭亭叙・八柱第一本」) 
   二月 雪(伝嵯峨天皇「李嶠雑詠残巻」)
   三月 陽(褚遂良「雁塔聖教序」)
   四月 花(副島種臣「杜甫曲江対酒詩句」)
   五月 風(良寛「夢左一覺後彷彿」)
   六月 雨(副島種臣「帰雲飛雨」)
   七月 水(藤原佐理「詩懐紙」)
   八月 遊(藤原行成「白氏詩巻」)
   九月 雲(池大雅「徐文長詩四種」)
   十月 恋(「紙撚切道済集」)
   十一月 清(松花堂昭乗「長恨歌」)
   十二月 酒(伝醍醐天皇「白楽天詩句」)

Ⅱ タテ画、ヨコ画、十字選
   瘦せたところも肥えたところもある描線
   点画の成立
   筆あそび(書)の発生
   石刻文字、「十」字八態
   刻字の虚像
   篆刻の文字から――星光のごとく、光芒のごとく
   権威を写し込んだ「政治文字」
   余計な力を加えず、世界を横切っていく
   呪符か、祝符か
   無意識層まで法華経
   名刀の「十」字
   一幅の水墨画
   古典的(アルカイック)な書法
   自身の哲学を裏切る書
   彫刻的筆画
   革命家の書
   明治新政府と時代への否定と逆転
   「十」字の原風景
   幾何学的、建築的、書的美学の集積
   印刷活字のモデル
   女手(ひらがな)書法の漢字
   左右対称を超える多析法の美学
   書の近代の誕生
   右から左の「十」字
   硬筆の書きぶりから生まれた「十」字
   文学の文体(スタイル)がのぞける

Ⅲ 一人一書、浮世ばなし
   人の短を言わず、己の長を説かず――空海
   天に則り私を去る――夏目漱石
   一日作さざれば一日食わず――西田幾多郎
   過ては則ち改むるに憚ることなかれ――徳川綱吉
   独立自尊新世紀を迎う――福澤諭吉
   簡素――島崎藤村
   敬天愛人――西郷隆盛
   災難に逢う時には災難に逢うがよく候――良寛
   徳は孤ならず――志賀直哉
   為政清明――大久保利通
   やみがたくして道はゆくなり――高村光太郎
   仰天有始――岡倉天心
   無――白隠慧鶴
   桃花細逐楊花落(とうかさいちくようかおち)――副島種臣
   敏於事而慎於言(ことにびんにしてげんをつつしむ)――犬養毅
   伝国之辞――上杉鷹山
   六十一歳自画自賛像――本居宣長
   無限生成――平塚らいてう
   荀子識語――大塩平八郎
   白楽天詩句――伝醍醐天皇
   寸松庵色紙――筆者不詳
   虹いくたび――川端康成
   神島建立歌碑表面自筆草稿――南方熊楠
   日本美術院院歌――横山大観
   井上馨宛書状――九代目市川團十郎

Ⅳ 珍書奇書、あんな書こんな書
   「古今和歌集」の背景――伝醍醐天皇「白楽天詩句」
   縮織か絞染を思わせる――円珍書状
   連綿がひらがなを生んだ――虚空蔵菩薩念誦次第紙背仮名文書
   天平時代の落書――写経生楽書
   ガリ版文字のような――金農「昔邪之廬詩」
   蛇のような、ツチノコのような――空海「崔子玉座右銘」
   一筆書きの書――呉説「王安石蘇軾三詩巻」
   狂草の逸品――許友「七絶二首」
   骨書きの書――宋・徽宗「夏日詩」
   日本墨蹟のはじまり、やぶれがぶれ――一休「漁父」
   輪舞曲(ロンド)を踊ろう――解縉「文語」
   こんな字、書いてみました。――空海「崔子玉座右銘」
   聖草・韮、雉の舞い――雑書体・鳥毛篆書屛風
   体は金文、心は草書――傅山「七絶十二屛」
   集字聖教序に瓜二つ――唐招提寺木額字
   無法と無茶、そして狂――一休宗純「靈山徹翁和尚示榮衒徒法語」
   逆入法成立以前の「古文」書法――王樹「易経謙卦」・傅山「七絶十二屛」
   巨大な構想――副島種臣「杜甫曲江対酒詩句」(上)
   巨大な構想――副島種臣「杜甫曲江対酒詩句」(下)
   書くことの楽しさ――居延出土習字簡
   上へ・下へ・伸ばして伸ばす――張旭「自言帖」
   「右ハライ」こそ書の始まり――嵩山太室石闕銘
   消えた文字の謎を解く――掛字と掛筆(上)「寸松庵色紙」
   溶ける文字、溶ける筆画――掛字と掛筆(下)「香紙切」

あとがき
人名・事項索引

著者略歴

著:石川 九楊
書家・評論家

ISBN:9784623090754
出版社:ミネルヴァ書房
判型:4-6
ページ数:322ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2021年08月
発売日:2021年09月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:WFU