岩波新書 新赤版 1894
ジョブ型雇用社会とは何か
正社員体制の矛盾と転機
著:濱口 桂一郎
内容紹介
前著『新しい労働社会』から12年。同書が提示した「ジョブ型」という概念は広く使われるに至ったが、今や似ても似つかぬジョブ型論がはびこっている。ジョブ型とは何であるかを基礎の基礎から解説した上で、ジョブ型とメンバーシップ型の対比を用いて日本の労働問題の各論を考察。隠された真実を明らかにして、この分析枠組の切れ味を示す。
目次
はじめに
序 章 間違いだらけのジョブ型論
1 氾濫するおかしなジョブ型論
2 ジョブ型の毀誉褒貶
3 メンバーシップ型の矛盾
第1章 ジョブ型とメンバーシップ型の基礎の基礎
1 ジョブ型契約とメンバーシップ型契約
2 入口と出口とその間
3 賃金制度と「能力」
4 対照的な労使関係
5 非正規労働者と中小企業労働者
6 法律と判例の複雑な関係
第2章 入口と出口
一 入口——就職と採用
1 採用の自由と採用差別禁止
2 試用期間の意味
3 学歴詐称の意味
4 入口の年齢差別禁止法
5 周縁地帯の中途採用
二 入口以前の世界
1 教育と職業の密接な無関係
2 日本型雇用の収縮に取り残される教育
3 アカデミズムの幻想と職業訓練の世界
4 学び直しというけれど
5 学習のフォーマルとインフォーマル
三 定年と高齢者雇用の矛盾
1 定年退職は引退に非ず
2 根っこにある中高年問題
3 矛盾に矛盾を重ねる高齢者雇用対策
四 解雇をめぐる誤解
1 ジョブ型社会で最も正当な整理解雇
2 誤解だらけの「能力」不足解雇
3 現実社会の解雇の姿
4 移る権利・移らない権利
第3章 賃金——ヒトの値段、ジョブの値段
一 生活給を「能力」で説明した年功賃金の矛盾
1 職務評価による固定価格がジョブ型賃金
2 生活給から「能力」主義への曲がりくねった道
3 下がらない「能力」の矛盾とご都合主義の成果主義
二 日本版同一労働同一賃金という虚構
1 非正規労働者の均等・均衡処遇政策
2 同一労働同一賃金という看板を掲げた政策過程の裏側
三 家族手当と児童手当の間
1 家族手当の展開
2 児童手当の曲がりくねった細道
3 矛盾に満ちた家族手当
第4章 労働時間——残業代と心身の健康のはざま
一 残業代とエグゼンプションの迷宮
1 労働時間とは残業代と見つけたり
2 適用除外制度をめぐるねじれた経緯
3 月給制と時給制の一体化
4 管理職は職種か処遇か
二 本当のワーク・ライフ・バランス
1 夫と妻のワークライフ分業
2 迷走するワーク・ライフ・バランス
3 転勤という踏み絵
三 過労死防止のパラドックス
1 残業規制の源流は過労死裁判
2 健康とプライバシーのはざま
四 メンタルヘルスの迷宮
1 メンタルヘルスのパターナリズムとプライバシー
2 メンバーシップ型はパワハラの培養土
第5章 メンバーシップの周縁地帯
一 女性活躍というけれど
1 女子は若いのに限る——花嫁候補のOLモデル
2 ジョブの平等、コースの平等
3 ジョブなき社会の女性活躍
二 障害者という別枠
1 メンバーシップ型になじまない障害者雇用
2 発達障害と躁鬱気質のパラドックス
三 ローエンド外国人——サイドドアからフロントドアへ
1 サイドドア型外国人労働者導入政策
2 サイドドアからフロントドアへ
四 ハイエンド外国人の虚実
1 ジョブ型「技人国」在留資格とメンバーシップ型正社員の矛盾
2 専門職はどこまで高度か
第6章 社員組合のパラドックス
一 企業別組合——労働組合だけど従業員代表
1 ジョブ型社会の労働組合と従業員代表
2 事業一家の覇者交替
3 戦後日本社会の設計図
4 労働争議の蔓延と絶滅
二 従業員代表制は転機になるか?
1 企業別組合から排除された人々
2 一九四九年改正の隠れた意図
3 企業別組合と従業員代表制の複雑な関係
参考書
ISBN:9784004318941
。出版社:岩波書店
。判型:新書
。ページ数:306ページ
。定価:1020円(本体)
。発行年月日:2021年09月
。発売日:2021年09月21日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF。