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東京の生活史

編:岸 政彦

紙版

内容紹介

150人が語り、150人が聞いた、東京の人生。いまを生きるひとびとの膨大な語りを一冊に収録した、かつてないスケールで編まれたインタビュー集。……人生とは、あるいは生活史とは、要するにそれはそのつどの行為選択の連鎖である。そのつどその場所で私たちは、なんとかしてより良く生きようと、懸命になって選択を続ける。ひとつの行為は次の行為を生み、ひとつの選択は次の選択に結びついていく。こうしてひとつの、必然としか言いようのない、「人生」というものが連なっていくのだ。(……)そしてまた、都市というもの自体も、偶然と必然のあいだで存在している。たったいまちょうどここで出会い、すれ違い、行き交う人びとは、おたがい何の関係もない。その出会いには必然性もなく、意味もない。私たちはこの街に、ただの偶然で、一時的に集まっているにすぎない。しかしその一人ひとりが居ることには意味があり、必然性がある。ひとつの電車の車両の、ひとつのシートに隣り合うということには何の意味もないが、しかしその一人ひとりは、どこから来てどこへ行くのか、すべてに理由があり、動機があり、そして目的がある。いまこの瞬間のこの場所に居合わせるということの、無意味な偶然と、固有の必然。確率と秩序。本書もまた、このようにして完成した。たまたま集まった聞き手の方が、たまたまひとりの知り合いに声をかけ、その生活史を聞く。それを持ち寄って、一冊の本にする。ここに並んでいるのは、ただの偶然で集められた、それぞれに必然的な語りだ。だからこの本は、都市を、あるいは東京を、遂行的に再現する作品である。本書の成り立ち自体が、東京の成り立ちを再現しているのである。それは東京の「代表」でもなければ「縮図」でもない。それは、東京のあらゆる人びとの交わりと集まりを縮小コピーした模型ではないのだ。ただ本書は、偶然と必然によって集められた語りが並んでいる。そして、その、偶然と必然によって人びとが隣り合っている、ということそのものが、「東京」を再現しているのである。(岸政彦「偶然と必然のあいだで」より抜粋)

目次

東京の生活史 目次ただ……ピアノは弾くんだと思ってましたから。どう言えばいいん でしょうね、よくわかんないけど。ピアノのない生活なんか考えないですよ語り手=手島儀子 協力=伊藤るり 聞き手=青山薫「私は神様より悪魔のほうが好き」とか言っちゃって母を悲しませたよなぁ聞き手=秋山きららあそこの店やって、みんないろんな人が来て、で、どこ住んでるんですか?って言うと、世田谷から来ましたとか下北から来ましたって、勝ったなって聞き手=浅海卓也で、前の工場っていうのは、そうだ、火事になって焼けた聞き手=足立大樹サーフィンじゃないけど、来た波に乗った感じ。やっぱりみんな何者かに最初からなろうとして目指すものだって言われた聞き手=足立大育目が合っちゃったの。ほかのこととか記憶ないけど(笑)。で、記憶もないんだけど、朝、自分の荷物もないの聞き手=雨澤鴨川に呼び出されてさ。ふたりでさ、けっこう言いあって。でもまあ、ふたりのことが心配だって。刹那的、絶望に、破滅に向かってるみたいな聞き手=飯田沙織で、結局地域の子で「友だち」になった子っていなかったですね、ずっと。うん。それはもう、大人になるまで聞き手=飯山由貴お母様が信頼してる占い師のところに連れて行かれて。そしたら、「子どもはできるし、この方が濱口家の金庫番になりますよ」って聞き手=碇雪絵気休めで飲みに行く感覚じゃないっていうかさ、そこで生きるみた いな(笑)語り手=吉田和史 聞き手=石川ひろみやっぱり一番根底にあるのは、普通の社会、一般社会の中で、「普通に働けるよ」っていう姿を見せたいっていうのはあります聞き手=石田賀奈子またその、時代が戻っちゃったけど、だから子供のとき、それで、都電が走ってたっつったじゃん。それと、ジーパンというのを初めて見たわけ聞き手=石田瑞穂ふかひれ、ふかひれだ。だから子供のときはずっと食べていた。自分でやるから安い。レストランとか高いでしょ。サメを捕らえて、普通に料理にできるところまで加工する 聞き手=石鍋啓介私、面倒くさい人で、三倍働くのはイヤなんですよ。だけど、差別されるのもイヤなんです聞き手=石原喜美子息子が産まれたときに「男と和解しなきゃ」って思った聞き手=泉谷由梨子俺たちがやるものは、ナマで、その場で、そのとき限りに起こる、かけがえのない時間を起こさないと、来てくれって言っちゃいけないんだよ語り手=木場勝己 聞き手=市川安紀「長くできてすごいね」じゃなくて、優しさと、惰性と妥協と、で、続いてしまったってだけの話ですね。自らの意思で進んだ一〇年じゃない聞き手=いつか床子だから、モチベーションが違うんだよ、俺はもう、他の人とは、競馬に。ただ好きとかあれじゃない。俺は敵討ちだから聞き手=伊藤宏子自分のなかの乙女な部分が。繰り返し見れる。こわっ! そういう恋愛ってないだろうけど、男とか女とかどうでもいいな聞き手=井上由香そのときにいつもね、その言葉が頭にくるんですね。「ああそうだ、わたし務まるはずがないって言われたの振り切って出てきたんだから」と聞き手=伊野尾宏之大使館の払い下げの物ってさ、厚木基地の中に倉庫があって、そんなかに入れてあるんだよ。で、銃持ってる連中だから。中は治外法権だから聞き手=今岡拓幹もっとすごい色があって、いろんな繊細な色があって、それぞれが 違うけど、それが見えないのが嫌だなと思ってて聞き手=上間陽子誰も助けてくれなかった聞き手=打越正行朝ごはんはクロワッソーンとキャフェオレだよ。それがいきなり「おー」って挨拶したら、小指がねえんだから。そんなやつばっかりだから聞き手=内田竜世マジでほんまに友だちがM‒1で優勝するみたいな感覚ですよ。噓みたいなことがけっこうな頻度で起こるので、ほんまに噓みたいなことが聞き手=大河原さくらもう何百人目かの俺なわけですよ聞き手=大北英人読本に書肆って。書肆、と言ったら、それ本屋のことだぞって、あたしそれで覚えて、それはもういまだに覚えてる聞き手=大久保真由自分の歌を好んで聴いてくれるひとがまだ世の中におったんやっていう気持ちになって、すごい嬉しくて聞き手=大久保理子どうしようもなくなるとね、花をね、がっさり買ってきた(笑)。それで、入り口にばさっと花を飾って、それで、ちょっとこう気持ちを落ち着かせた聞き手=大里瑞夏お坊さんの基本の仕事って話すことだと思うよ。お経を読むとか祈るとかってあるけど、それは話をすることが大前提にあるものだから語り手=早島英観 聞き手=太田典歩ストローでバーッと飲ませるんだよね。それでポンっておいて、またケンカして。また「Kさん、お茶!」って言って、またストローで飲ませて、っていう。それがすごい衝撃で聞き手=大槻美和五、六人ぐらいの子どもで、ぞろぞろぞろぞろ、その銭湯へ行くわけ。大体三時とか午後早い時間に行って、ばしゃばしゃ泳いだり大騒ぎして聞き手=大西未希故郷っていうものに対する考えが芽生えたっていうか、自分の故郷はそこなんだなあと、ははは(笑)、故郷感みたいな聞き手=大八木宏武このままじゃしょうがねぇから、「若い連中誰かやるべぇよ」っちゅう俺が言って。それで農業の先駆者として、リーダー格でやったの聞き手=小笠原綾中国は触れないほうがいい、在日は触れないほうがいい、そうやって自分の中で内在化して悪者にしちゃうんですね、自分が悪くないとわかっているのに語り手=チョーヒカル 聞き手=岡本尚之ギーゼキングがドビュッシーの「月の光」弾いて、なんってきれいな世界だ、って。でそれからもう、あんまり感度がよくないラジオ、毎日聴いて語り手=大友聿子 聞き手=岡本史浩……「帰って来て?」それで、帰って来て、何をする?聞き手=荻堂志野ちょっと複雑な思いを抱く故郷ができちゃったわけです聞き手=掛川直之うちはちゃんと四角いから好きなんですよね。正方形か長方形の部屋だけで構成されている家っていうのはレアだったりするので聞き手=笠井賢紀自分みたいな人間もいるよ、っていうのを、認めてくれる大人になりたいな、って思ったんですね聞き手=柏倉功そんときにたまたま見た本に、なんかその、自分の、なんっていうんやろうな、なんかこう、魂が赴くままに行け、みたいな本があったんやね聞き手=梶原亮一ここはもう、まるっきり変わっちゃったわね。だって、普通の住宅が多くなっちゃったもんね。お店がなくなって聞き手=勝浦研斗もしかしたらみんなが集まれる場所を作ったら、喜んでもらえるかなっていう聞き手=葛宮亘日本の雑誌とかすごい見てたんで、しかもけっこうミーハーなので、当時V6とか好きだったんですよ(笑)。まさかのジャニーズ、ふふふふふ聞き手=加藤里織手話で話すので、死角がなくなるように鏡を置いて、鏡越しに会話ができるようにするとか聞き手=加藤夏海普通だよ。だから酒飲んでる。わかるでしょ。嫌だから。これ今の今まで、忘れなさい。って言われてる。「忘れなさい」。子供産んで、忘れなさいはできないんだよな聞き手=加藤雄太隊列なんかせんとバラバラやな。そしたらな、おばあさんが、「兵隊さん、ご苦労様です」言うて、わしに、こう、手に持てるだけの胡桃をくれたんや語り手=金井塚修 聞き手=金井塚悠生車を運転しながら花火がバンバンあがってて。ファンファーレみたい。今から死ぬぞ!じゃないけど聞き手=兼子春菜あるがままって、ご縁なんだよね聞き手=加福文山口百恵みたいにきれいに消えたい。あとは自分の消え方がほんとに、かっこよく、悔いのないようにしたい。たとえ自分が退屈だったとしても聞き手=上久保直紀私のあずかり知る東京はだいたいこのへんがすべてなんですけど。中央線がすべてなんですよね聞き手=唐澤和もう、ちょっと、出世してからじゃないと帰れないみたいな。気持ち的にはそういうのは、あったのかな、と聞き手=川野英二すべて金出すから、そこに住めってね。要は、この子のためだよね。だって、彼氏がね、こんなテントに住んでいるわけにはいかないじゃん聞き手=川端豊子口では田舎暮らしとは言いますけど、実際、本当にそう思っているかと言われたら、こういう「東京」あるよな、泉川みたいな東京もあるよなって聞き手=川邉絢一郎はー、陸続きで荻窪駅着いちゃった。白杖ひとつで隣の島まで歩いてしまった聞き手=河村愛息巻いてやってきていたことっていうのは、すべてただ単に自己満足だったんじゃないのっていうふうに思ったときがあって。なんかもう寒気がしたんだよね聞き手=神原貴大この土地は、江戸時代の初めにうちが住みついていま十数代目だから。昔はこの辺を武蔵国って言って茅の野原だったの聞き手=菊池謙太郎顔を見合わせた。なんか違う、これすごいと。レガートが、シンバルレガートが。これやっぱり東京行こう。また東京行こうと語り手=大森秀斗史 聞き手=岸政彦皇居を見ながら、おっぱいをこう……搾ってる自分がなんかねえ……すごい哀れっていうのか語り手=清水千恵子 聞き手=金直子いつだって顔出してるのはあたしでさ、いつだってリスクが半端じゃないのはあたしのほうなのに、俺の気持ちって何?って感じじゃない?聞き手=木村映里あー、もう、なんでも性格的に受け入れてしまうのかね。もう、そのまんま営業で、ずっと売るために頑張ってた聞き手=具志堅大樹自分が面白いって思うものをやるっていう意味で「誰の言うことも聞くな」っていうのが、一番印象に残ってるっていうか、そういうことが一番大事なのかもしれないなって聞き手=久世英之立志伝中の人物みたいに出世してやろう、大金持ちになろうはさらさらなかった。ただ、とにかく仕事をやんなきゃ。それだけだったね聞き手=熊本博之逃げていく車を津波が飲み込んでいくシーンとか。あれジッと見てたんですよ。そしたら俺何やってんだろうって聞き手=倉数茂自分の欲に何万もかけて来る人がこんなに世の中いるのに、なんでお金のない人とわざわざ付き合ってるんだろうって思って聞き手=小池エリナポンってもう軌道に乗っちゃったからね、俺の場合。軌道に乗っちゃったんだよ聞き手=小泉真由子まあそんなにがむしゃらに働かなくてもいいかぁみたいな感じで。そこからもう余生に入ってしまったんですね、いきなり聞き手=小枝冬実成人式のときに、お母さんがどうしても着物着てって言われて、お母さんの願いを叶えようと思って、そのときに着物着て聞き手=小城萌笑神戸のおうちで目が覚めて、「このままこの家に住んでたら大変なことになるわよ」って声が聞こえたの聞き手=小林真紀子商売やめるかて人間やめられへんから聞き手=小林玲二〇年前の物が……やっぱり、シールのついたテーブルはつらかったね、居間に置く背の低いテーブル。あれはちょっともうつらかったな。うん聞き手=小松順子そう、だから、次は東京に。東京、うん。東京だったらわたし一人ぐらい生きてく場所があるんじゃないかなと思って聞き手=小松原花子よく「左利きなんだ」って言われるんですよ。「実は右が使えないんで」って言えばいいんですけど、とっさにそこまでの会話ができなくて聞き手=米谷瑞恵もうね、ターン、ターン……と焼夷弾が落ちるんです。そのたびに人がね、燃えちゃうんですよ。それを間近に見てた語り手=濱田嘉一 聞き手=近藤夏紀まず上海で二週間隔離を受けた。そのあと武漢に行った。お母さんとお父さんは、僕を迎えに来てくれた。武漢の駅から出たとき、僕は涙を流した聞き手=齋藤あおい「お姉さん、もしかして東京生まれ、東京育ち」とか言って「うん」って言ったら、「むかつく」って言われて(笑)語り手=高岩智江 聞き手=齋藤直子ひとくち目はあんまり味わからなくって。どっちかというと、ひとくち目でちょっと上見たんですよ。雷が落ちるかなーっと聞き手=酒井摂一回ミスらないとわからないじゃん。うちらってたぶんそういうタイプ。あのときの自分死ねって思わないとわからない(笑)聞き手=榊栞理全部お店やめてからね、ヤクルト始めた。ヤクルト始めたらね、自分の給料として入ってくるでしょ、それからね、それからもう私の時代よ(笑)聞き手=坂本絵美子英語のアイデンティティーがそれこそ大きすぎて聞き手=坂本光代「オリバーはオリバーでええやん」の言葉で、どっかで吹っ切れたんですよね。ええふうに持っていこうと思って、これを機に変えようと思って動いただけです、東京は聞き手=坂本唯寒い日に児相行くのに、私のポケットにその子の手をこうやって入れたときに、「ん、つながった」って感じがして聞き手=櫻井勇輔下の子は、あのよく私に言っていたのが「僕はいつもお兄ちゃんの用事にくっついてるだけだね」って言われたりもして聞き手=里芋はじめ毎日毎日、色が変わってた。「今日はピンクだー」「今日は緑だー」「今日は何色かな」「あ、今日は紫だー」「あ、今日、きれい! 青だぜ!」聞き手=佐藤いぬこ私は本当、東京は自分のエリアですから、いっくらでもいるじゃないと。ふふふ。だから気に入る気に入らないは一か八かで、人の出会いでしょ?聞き手=實川真規本当の意味でのルーツは沖縄。東京は、住む場所というより、成長できる場、憧れの地という感覚があったんだよね聞き手=篠田里香本来なら届くところにまだ届いてないよな、ていう。届く人は初めからいるんだけど、そこに届けるだけの力がまだ僕にはないんじゃないかって語り手=古明地洋哉 聞き手=芝夏子なにか、二重の構造があるんですよね聞き手=清水唯一朗福生の街ってやっぱ、特有だからね。なんとも面白い聞き手=下地ローレンス吉孝私の人生には、たくさんの麒麟がいる語り手=イヴァンカ・ギヨーム 聞き手=末松史ひとり夜歩きながらフリースタイルとかしますね。なんだろう、セルフボーストするための道具とかではなくて、身についてるというか聞き手=菅谷雪乃改札こうやって入ろうか入ろうかって何回かやって、そのたびに私が一歩踏み出すから、もう笑い出して、向こうから来てくれて語り手=黒田樹梨 聞き手=鈴木紗耶香果たし状を出すの、中学生に。グループがあるの。うちらのグループ、そっちのグループ、果たし状出して、行って、喧嘩するの。髪の毛引っ張ったりね聞き手=鈴木恵理運命じゃないけど、江戸っ子がグイーンって来たっていうか聞き手=スズキナオうぉわ!って(笑)。こんなにお金がある!みたいになって。あはははは。だからもう、ほんとにもう、全然なんか、とにかくもらえるだけでうれしかったんで聞き手=鈴木裕美やっぱり、止まり木なんですよ。鳥が飛んで、休む場所なんですよ聞き手=関駿平たぶん富山ずっと住んでると、少なくとも岡山のデニムは欲しがら ないと思うんですよ聞き手=髙橋かおり混ぜご飯みたいだよ。ぐちゃぐちゃだよ聞き手=髙見之陽真里さんはまぁいいって言ってたけど、私はなんかしっぶって感じだったのね。いやぁ斎藤真里ここで死ぬのみたいな。なんか渋いなって聞き手=武田千愛やっぱり人が死んでいる、亡くなっているっていう事実を、こう、肌で感じながらやらないと絶対いけないんじゃないかなって聞き手=竹谷美佐子天気のいい日に自転車で坂を下りて仕事に行くときはすっごい快適だし。なんか知らないけど突然歌ってるんだよね聞き手=武田梨華これが自分の幸せなんだなって思う、イメージができたし。自分のセクシュアリティを受け容れつつも、幸せにやっていけるのかもしれないって聞き手=太齋慧もう三六五日毎日ですもん! 友だち来ちゃったとかさおすそ分けとかって持って来てくれたら行かれないでしょ? ちょっと帰って、みたいに言えないから聞き手=田中創うえーって吐いて、ぷっと顔上げたら、僕が作ったコピーが目に入ったんですよ。「ウイニングパットはまだまだ続く」って聞き手=田中雅大だから、ツイッターもフェイスブックも更新が三日とかないと、生存確認が父から入る聞き手=辻拓也で、聞いたら、「木更津です」って言うから。「横須賀の向こう側じゃーん!」って話して。「やっぱあの辺の東京湾にはなんかあんのかねぇー!」って語り手=河原田仁志 聞き手=続木順平クワズイモの葉っぱっておっきな葉っぱがあるのよ。雨の日はそれをかぶるの、途中で、拾ってから聞き手=渡真利彩部外者なんだよ、フォトグラファーっていうのは。外から中をのぞきこむ人で、僕の人生自体ずっとそんな感じ。語り手=Jimi Franklin 聞き手=冨手公嘉隣の人だね。うん。コテハンが「チャーハン」だった時期ですね聞き手=中井澪自分の足、自分で立って、自分の羽、自分で飛んで。お金もらった、私の汗と涙のお金だった聞き手=永井藍子やっぱり自分のお店はいいと思うね。だからここの店大事にしますよ。死ぬまでいるよ聞き手=中植きさら「なんか見つかるんだよね」「そうね、ほんとそう。必ず見つかるんだよね」聞き手=長倉崇宣炭鉱で育って、ふるさと感がまったく他の人と違うってところが、僕がなんか発想の原点が違う、そもそもの理由なんじゃないかと最近思ってるんです語り手=今野勉 聞き手=中島みゆき介護するようになって、母に触るようになって。それであたしも「甘えた」という形になったのかな聞き手=なかのゆかあーほんと。うれしいなあ。自分がここで生まれたんだっていう思いっていいよねえ。ルーツっていうかね聞き手=仲藤里美男児郷関を出ずれば焉んぞというわけで、立派な人間になってというお祖父さんとお祖母さんのお見送りを受けながら、汽車に乗って行きました聞き手=中山早織やっぱり東京の都会のもやしっ子にだけは絶対に、なったら私が嫌いになっちゃうかもしれない聞き手=成瀬郁電車に、ペットボトルのごみ落ちてて……私これを拾わなかったら 明日に残るなと思って聞き手=南里百花掛け算というか、スパイラルにならないと、みんなハッピーじゃないから聞き手=新山大河小学校二年生のときに私、「ノリコ・non-no」って作って。『non-no』編集者になるのが夢だったな、いまだに夢は、叶ってないんですけど聞き手=西岡日花李聞かれてもほんとにね、そうとしか言いようがない。自分の中では選択肢って、あったことがない感じがする。なんかそっちしかないみたいな聞き手=外立勝也俺、いまね、恋してんだ語り手=西村勝男 聞き手=長谷川実一つのところに絞って一生懸命やればそっちがいい。人があんなに成長してるから、自分もそれをできると思うと限りないから。自分に合うことをやらなきゃいけない聞き手=はっとりたくま「の」。それから「は」「に」「る」。いちばん出ないようなやつは「ゐ」。あんなのめったに出ない。なにせ一番出るのは「の」聞き手=林雄司だから私と地球の戦いはまだ続くねん聞き手=東万里江東京と被災地でこんなに違うんだって思っていて。なんか久しぶりに温かい味噌汁飲んで、幸せ感半端なかったんです聞き手=藤代将人用事があって、病院に行ったり、買い物に行かなきゃいけないとき以外は、いますよ。昼間から。土曜日も日曜も祝日も、正月も。ここ数年ずーっといますから聞き手=藤原理子虫がいるのは当たり前なわけなんですよ。僕らがやりたい農業って、そういうことなので。自然の中で作りたい。そこにはいろんな生き物がいる聞き手=古屋敬洋よく東京は目標が多いとかさ、言うけどさ、競合が多い。そのぶん、ぶっちゃけ沖縄って競合がそこまでなくて、決定的な差ってないと思う聞き手=星野光一郎「ピナ・バウシュ見たか?」みたいなことになって、「ああもう。これ大学行かなあかん」て。試しに大芸受けたら受かって。高校行かん言うてた人が聞き手=細貝由衣一〇カ月しかないんですよ、払うのに。前回、ずいぶん勉強させてもらいましたよ。種、蒔いている場合じゃないな、って聞き手=堀部篤東京に来た当初、学校のオモニたちがしゃべっているのを聞いていたら、めっちゃ話の展開が速くてついていけないと感じたことがあってん語り手=金詠実 聞き手=松岡理絵アイスコーヒーっていうのはものすごい手間がかかるんだ。それで、その人は「できました」って持っていくと「はい、ありがとね」って言って、一〇秒だからね、飲むの聞き手=三浦一馬だからなんて言えばいいんだ。植える野菜も根っこが生えるが、俺にまで根っこが生えちまった、っていうこった聞き手=水野萌そんなもん知らんがな、じいさんなんか。それであくる日一番に実家帰ろうって思って、東京駅まで出ちゃったわけやんか語り手=三浦紀子 聞き手=宮田桃子二月のすんごい寒くて、風の強いときって嫌でしょ? けど、あのおいしい切り干し大根ができるんだったらと思って、ちょっと嬉しくなるの聞き手=宮本由貴子暗黒の四日間を耐えて、で、そのまま過ごしてたら、友だちと話してても当たり障りのないことしか言えなくなっちゃって聞き手=村上ももこガスがもう、二〇年以上かかってやってるから。だからガスしかないのよ。要するに身体の、頭の中がさ聞き手=村松賢高校卒業して外出たことないお母さんが電車に乗って行くっていうのがすごい大変で、銀座線に乗るときに、電車に二回落っこちてるんだよね聞き手=村本洋介「あんな山が本当にあるのかしら、この目で見たい」という。本当にそう、それだけ。憧れよねぇ聞き手=毛利マナ寝てるときにもガタンガタンガタンてね、聞こえた。それも毎晩じゃない? 貨物電車だと思う。うるさくはないの。寝心地のいい音で聞き手=森山晴香雑誌を買ってページをめくってると、新島の海の色って独特だから、すぐにわかるんですよね。あ、これ新島だって語り手= 梅田久美 聞き手=薮下佳代現実逃避だよね。金なかったもう。人から金借りて、家賃払いながら、自分は日銭でパチンコ向かう。最悪ですよはっきりいって(笑)聞き手=山口聖二もういずれはやるんだからじゃあ時期を早まらせて親世代である残留孤児たちのために介護をやろうと思って、その場で決めちゃった聞き手=山崎哲レコード屋はほんとに夢の公民館で聞き手=山田哲也身軽っちゃ身軽。地面に根をおろすくらいじゃない。鉢植えくらい、まだ。聞き手=山本ぽてとドラマチェックはずっと続いてるわね。でも、出てくる人の顔がわからないから、出てくる人のストックがなくなってきてるっていうかさ聞き手=湯田美明どうかなあ。まあ、レスだからね。なにレス……言わないよ!聞き手=ルイス自分からアイヌのことをなくしてしまったら、想像できないですけど、その、店もそうだし、伝承活動もそうですけど、もうかなり軸となってるので聞き手=渡邊直紀あとがき--偶然と必然のあいだで 岸政彦

著者略歴

編:岸 政彦
岸 政彦(きし・まさひこ)一九六七年生まれ。社会学者・作家。立命館大学教授。主な著作に『同化と他者化──戦後沖縄の本土就職者たち』(ナカニシヤ出版、二〇一三年)、『街の人生』(勁草書房、二〇一四年)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社、二〇一五年、紀伊國屋じんぶん大賞2016受賞)、『質的社会調査の方法──他者の合理性の理解社会学』(石岡丈昇・丸山里美と共著、有斐閣、二〇一六年)、『ビニール傘』(新潮社、二〇一七年、第一五六回芥川賞候補、第三〇回三島賞候補)、『マンゴーと手榴弾──生活史の理論』(勁草書房、二〇一八年)、『図書室』(新潮社、二〇一九年、第三二回三島賞候補)、『地元を生きる──沖縄的共同性の社会学』(打越正行・上原健太郎・上間陽子と共著、ナカニシヤ出版、二〇二〇年)、『大阪』(柴崎友香と共著、河出書房新社、二〇二一年)、『リリアン』(新潮社、二〇二一年、第三四回三島賞候補)など。

ISBN:9784480816832
出版社:筑摩書房
判型:A5
ページ数:1216ページ
定価:4200円(本体)
発行年月日:2021年09月
発売日:2021年09月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF