歌集『オルフェの亜空間』
著:小谷 博泰
紙版
内容紹介
収録歌より
記憶からこぼれる時間 黄アゲハの二羽がもつれて飛ぶ草の上
あちこちの雲に火がつきパラシュートのジャックがひとり吹き流される
はいったらもう出られない縄跳びのおはいりの歌だけが聞こえて
慰霊碑の周りをかこむ彼岸花 一つ一つが子どもの笑顔
間引かれた子は弟か妹か鏡のおくの見えない部屋の
地蔵堂のロウソク短くなっており旧街道に雨の止みたる
陽が落ちて空にかぼそき二日月その内側に抱く黒い月
並んでいた屋台店消え誰もいない道となりつつたそがれている