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異文化コミュニケーション学

著:鳥飼 玖美子

紙版

内容紹介

グローバル化が加速し、価値観も多様化している今、異なる「文化」をもつ人とともに暮らすことは日常になっている。異文化コミュニケーションには、民族や言語の違いだけでなく専門性が異なる人同士の対話も含まれるなど、幅が広い。先達の研究を踏まえつつ、数多くの海外ドラマの具体的なセリフから、これらを改めて問い直す。

目次

 はじめに
  コロナ禍での異文化コミュニケーション
  三角測量法

 この本で参照したドラマと映画

1 「文化」とは何か
 1 文化の定義
  「文化」の理解
  言語と文化の多様性
  「異文化理解」とは
  「文化」が指すもの
  目に見えない文化
  日本人による「文化」の定義
 2 「普遍文化」と「個別文化」
  普遍か、個別か
  線引きできない文化
 3 異文化接触
  他者との出会い
  文化の邂逅と摩擦
 4 異文化適応
  異文化感受性の発達モデル
  異文化適応能力
 5 他者と差異 共感と寛容
  異なる文化と接した時
  感情移入としての「共感」
  寛容
  Stand by Your Man
  Save the Last Dancefor Me
 6 多文化共生
  異質性を含めること
  「インクルージョン」とは
 7 多文化社会における通訳と翻訳
  機械翻訳の登場
  言語と文化の橋渡し
  2種類の翻訳

2 「コミュニケーション」とは何か
 1 コミュニケーションとは
 2 異文化コミュニケーション
  他者としての自然
  自分自身との対話
  異文化コミュニケーション研究の軌跡
  幅広い領域
 3 コミュニケーションをめぐる研究
  言語コミュニケーション
  相互行為と話し手の意図
  「会話の協調原理」
  コミュニケーションの6機能
  SPEAKING
  「参与フレームワーク」
  話し手の役割
  聞き手の役割
  「発声体」としての話し手
 4 「コミュニケーション能力」
  言語の社会的規則
  異文化コミュニケーション能力
 5 異文化コミュニケーションの可能性
  コミュニケーションへの意欲
  意欲喚起と動機づけ
 6 言語、文化、複言語能力
  言語と文化は不可分
  言語横断
  複言語の韓国ドラマ
  『失われた時を求めて』にみる詩的機能
  『モモ』の言葉
  時間は語る
  言語の距離と文化の距離
 7 非言語コミュニケーション
  身ぶりや表情
  声色や語調
  沈黙
  空間は語る
 8 科学コミュニケーション
  専門用語をどう説明するか
  ドラマにみる科学者の思考とことば
  科学の真理と人間の言葉
  メタファー
  対話するロボット
  「自分の夢を追いなさい」
  科学者を育てる
  教育者として
  「ある時は一人で、ある時は共に」
  答えがあるからでなく
 9 ビジネス・コミュニケーション
  利益に結びつくもの
  英語での交渉術
  人の心を短時間でつかむ

3 ジェンダー、コミュニケーションの破綻と修復、そして自立
 1 「そんなことしか言えないの?」
  男女の対話は異文化コミュニケーション
  コミュニケーションと性差
  日本における女性とコミュニケーションの問題
  セクハラとコミュニケーション
  職場でのセクハラ
  証言する
 2 コミュニケーションの断絶
  家庭内でのコミュニケーション離脱
  コミュニケーション不全の原因
  言葉で他者を動かす
  観察力と洞察力
  コミュニケーションへの意欲と自信
  噓をつく
  絶望的なわかり合えなさ
  コミュニケーション破綻の修復は可能か
 3 自立とは
  自立への希求
  自立への模索
  「自立」と「自律」
  支え合う「自立」
 4 ギンスバーグ判事と女性の自立
  法科大学院に入学した女子学生
  家庭とキャリアの両立
  男性社会の法曹界
  娘の反発
  「性差別は違憲」で勝訴
  「社会は変化している」
  論理性と柔軟性の法廷コミュニケーション
  日本の女性たち

4 言語、権力、アイデンティティ
 1 コミュニケーションを左右する「象徴的な力」
  権力の存在
  韓国の財閥
  アイデンティティ
 2 英語帝国主義
  帝国主義と言語
  英語支配という現象
  英語が出てくるドラマ
  『愛の不時着』にみる北朝鮮の英語事情
 3 「同化政策」という名の母語剝奪
  ドラマにみるカナダの歴史
  カナダの同化政策
  「私はバカじゃない」
  米国の「同化政策」
 4 新大陸発見と異文化コミュニケーション
  他者との遭遇
  アボリジニー
  マオリ
  言語と「帝国」
 5 言語とアイデンティティ
  スペイン映画にみる言語とアイデンティティ
  アイデンティティとしての「姓名」
  姓をめぐって
  名前へのこだわり
  英国とウェールズ
  ウェールズを訪れて
  民族主義教員との出会い
  チャールズの思い
  ウェールズでのスピーチ
  Do I have a voice?
  王室の「声」
  ことばは翼を与えてくれる

 あとがき

 注一覧
 主な参照、引用文献

著者略歴

著:鳥飼 玖美子
鳥飼玖美子(とりかい くみこ)
上智大学外国語学部イスパニア語学科卒業。コロンビア大学大学院修士課程修了(MA)。サウサンプトン大学大学院人文学研究科博士課程修了(Ph.D.)。1997年より立教大学教授。2002年から11年まで、同大学大学院異文化コミュニケーション研究科委員長。現在、立教大学名誉教授。1971年から92年まで、ラジオ「百万人の英語」講師。98年からNHK「テレビ英会話」「ニュースで英会話」等の講師。現在、NHK「太田光のつぶやき英語」講師、「ニュースで英語術」監修。
著書:『通訳者と戦後日米外交』、『異文化コミュニケーション学への招待』(編者代表)、『英語教育論争から考える』(以上、みすず書房)、『話すための英語力』(講談社現代新書)、『英語教育の危機』(ちくま新書)、『通訳者たちの見た戦後史――月面着陸から大学入試まで』(新潮文庫)、『よくわかる英語教育学』(著者代表、ミネルヴァ書房)ほか多数。

ISBN:9784004318873
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:256ページ
定価:840円(本体)
発行年月日:2021年07月
発売日:2021年07月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB