岩波新書 新赤版 1884
『失われた時を求めて』への招待
著:吉川 一義
内容紹介
岩波文庫版『失われた時を求めて』(全14冊)の完訳を達成したプルースト研究第一人者が作品の核心に迫る解説書。この不世出の大長編は、なにを、どのように語った作品なのか。全体の構成、特長、勘所を分かりやすく読み解く。魅惑の読書体験へといざない、全篇読破に挑戦する人には力強い羅針盤となるスリリングな一冊。
目次
はしがき
『失われた時を求めて』の構成
『失われた時を求めて』の主な登場人物と架空地名
第1章 プルーストの生涯と作品
1 プルーストの生涯
2 初期作品————『楽しみと日々』、『ジャン・サントゥイユ』、ラスキン翻訳
3 『サント=ブーヴに反論する』から『失われた時を求めて』へ
第2章 作中の「私」とプルースト——一人称小説の狙い
1 『失われた時を求めて』の「私」はプルーストなのか
2 主人公の「私」はなぜ影の薄い人間なのか
3 語り手の「私」に寄りそう作者プルースト
第3章 精神を描くプルースト——回想、印象、比喩
1 『失われた時を求めて』はすべて「私」の回想談
2 マドレーヌ体験の意味——無意志的記憶とはなにか
3 印象の記述になぜ比喩が多用されるのか
第4章 スワンと「私」の恋愛心理
1 「スワンの恋」はなぜ必要なのか
2 「私」のジルベルトとアルベルチーヌへの恋
3 スワンと「私」に内在する分身の声
第5章 無数の自我、記憶、時間
1 恋愛における無数の自我
2 自我はつねに無数
3 記憶と時間
第6章 「私」が遍歴する社交界
1 ゲルマント公爵夫妻のサロン
2 本作品における社交サロンの意味
3 全篇の中心を占める祖母の病気と死
第7章 「私」とドレフュス事件および第一次大戦
1 ドレフュス事件はいかに語られるか
2 第一次大戦はいかに語られるか
3 社会はなにゆえ変容するのか
第8章 「私」とユダヤ・同性愛
1 「私」とユダヤ人
2 「私」と「ソドムとゴモラ」
3 ソドムとゴモラの「結合」
第9章 サドマゾヒズムから文学創造へ
1 ソドムとゴモラにまつわるサドマゾヒスト
2 『失われた時を求めて』に頻出するサドマゾヒスト
3 文学に必要不可欠なサドマゾヒズム
第10章 「私」の文学創造への道
1 登場人物たちの愛する文学・芸術
2 三人の架空芸術家
3 『失われた時を求めて』の照射するもの
あとがき
【地図】プルーストと『失われた時を求めて』のパリ
『失われた時を求めて』年表/プルースト略年譜
主要文献案内
図版出典一覧
ISBN:9784004318842
。出版社:岩波書店
。判型:新書
。ページ数:286ページ
。定価:980円(本体)
。発行年月日:2021年06月
。発売日:2021年06月22日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB。