出版社を探す

確かな英語の力を育てる

英語教育のエッセンシャルズ

著:田中 茂範
著:阿部 一

紙版

内容紹介

近年、国際化に伴い英語教育改革の必要性が叫ばれている。改革のために何が必要か。それは教師が変わること! 語彙・文法・慣用表現を中心に指導のこれまでのあり方を再考し、新しい方向性を示す。生徒の真の英語力を育むために。

■「まえがき」より
英語の学習に関しては夥しい数の書籍があります。これもその1冊になります。われわれも、これまでにも多くの英語関連の本を出版してきました。検定教科書、辞書、文法書、教授法など応用言語学者として幅広いトピックを扱ってきました。今、自分たちがしてきた仕事を振り返り、もし新たな一冊を足すとすれば、何を書くべきか。このことについて二人で議論しました。
そして、ひとつの結論に達しました。それは、英語教育の「エッセンシャルズは何か」を突き詰め、その結果を読者に提供するということです。名詞の“essential”を辞書的に定義すれば“basic things that you cannot live without”(Cambridge Dictionary)あるいは“a thing that is absolutely necessary” (Oxford Dictionary)となります。「絶対に必要な何か」ということです。
エッセンシャルズを明らかにするためには、肝心要の「英語力とは何か」を明らかにする必要があります。英語教育の目標は、端的に、学習者の英語力を高めることにあるからです。英語力とは何であるかが明らかになってはじめて、それを構成する要素としてのエッセンシャルズを引き出すことができるというのが、われわれ筆者がたどり着いた結論です。

目次

Chapter 1 英語力とは何か
 指導要領の狙い
 英語力:タスクハンドリングと言語リソース
 4技能と表現モード
 タスクの具体例
 can-doとcan-sayが両輪
 言語リソースの3つの力

Chapter 2 語彙力とは何か
 語彙力とは何か
 語彙力の定義

Chapter 3 「基本語力」を身につける
 基本語力
 基本語力が弱い
 基本動詞の意味の捉え方:runを事例にして
 使い分け
 基本動詞の学び方
 意味形成の原理
 コアイメージの適用範囲
 基本動詞の教材の作り方

Chapter 4 拡張語彙力を育てる
 拡張語彙力養成エクササイズ
 ボキャチェーンの発想

Chapter 5 文法は学ぶ必要があるの?
 学校の英文法
 現行の学校英文法の問題点
 英文法の棚卸:5文型を事例にして
 不可欠な共演情報は何か
 補語と目的語の意味
 第4文型の問題
 「目的語」のさらなる考察
 動詞の構文的可能性
 全体像の欠如

Chapter 6 文法の全体像を示す
 表現英文法の世界
 名詞の文法
 動詞の文法
 副詞の文法
 情報の配列と構文
 英文法力

Chapter 7 文法指導の原理
 どう教えるか
 教師が英文法の本質を理解する

Chapter 8 口頭で文法力を鍛える
 Grammar in Chunkingの事例
 比較級の指導もチャンキングを使って
 おわりに

Chapter 9 慣用表現を学ぶ
 慣用表現の性質
 慣用表現のタイプ
 「慣用表現力」という考え方
 慣用表現を学ぶ
 慣用表現のプレハブ効果
 会話の流れを調整する慣用表現

Chapter 10 慣用表現の指導のための事例
 断る・反論を述べる際の慣用表現
 一言前置きをする際の慣用表現
 発話に向かう態度
 話題の幅を設定する
 内容に対しての感情的反応を示す
 確信の度合いを示す
 発話に対して態度を示して話す訓練
 話題を調整する際の慣用表現
 話題を導入する
 話題の変更
 話題の変更を望まない
 話題の回避

Chapter 11 まとまった内容を発表する力を鍛える
 表現者になる
 タスクを意識する
 プロダクション力を鍛えるための方法:Navigator in Speaking
 ストックとフロー
 NISの具体的な仕組みと内容
 人物描写
 眼前にある日本固有の何かを説明
 眼前にない日本的なものを説明

Chapter 12 英語は音だ
 ブロークンイングリッシュ
 音作り:口作りと口慣れ
 どうすればよいのか?
 音の聞こえ方
 口作りは音慣れと裏腹の関係

Chapter 13 英語力養成の土台となる音声表現力指導
 「音声」の重要性
 発声のための口作り
 口慣れには音慣れが
 生徒の学習効率化と「アンカー音」への絞り込み
 「母音」アンカー音の指導と練習:口作り
 「母音」アンカー音の指導と練習:口慣れ
 「子音」のアンカー音の指導と練習:口慣れ
 音声英語ではリズムが重要
 口慣れからさらに進めて、本格的な音読:チャンキング音読法
 リピーティング、オーバーラッピングそしてシャドーイング

Chapter 14 英語教育の争点
 英語はできて当たり前
 バイリンガルであることのメリット
 自分で納得するのが一番
 年齢と外国語学習の関係
 学習環境(learning context)と年齢と第二言語学習
 それでも外国語学習は若いほうがよい
 英語教育の成功の条件
 文化適応の問題
 学習支援の必要性
 英語はだれでも身につけることができるのか
 個人差
 日本人は英語が苦手
 英語力の育成を阻むもの

Chapter 15 英語教師の英語力
 教師の英語力
 生徒の発言にフィードバックを与える:教室の雰囲気を作る
 英語で活動させ、それに誤りなどの訂正を行う
 内容の理解と新出単語や文法の説明

おわりに

著者略歴

著:田中 茂範
田中茂範(たなか しげのり)
慶應義塾大学名誉教授/PEN言語教育サービス
NHK教育「新感覚☆キーワードで英会話」講師、NHKラジオ「ボキャブライダー」監修。第30回市河三喜賞を受賞。著書に『表現英文法』(コスモピア)、『イメージでわかる・使える英単語』シリーズ(アルク)など多数。
著:阿部 一
阿部一(あべ はじめ)
英語総合研究所所長/PEN言語教育サービス
元・獨協大学外国語学部,及び同大学院教授
著書に『英語冠詞コーパス辞典』(研究社)、『英語感覚が身につく実践的指導 コアとチャンクの活用法』(大修館書店)など多数。

ISBN:9784874248577
出版社:くろしお出版
判型:A5
ページ数:224ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2021年05月
発売日:2021年05月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JN