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岩波現代文庫 学術433

歴史論集 2

〈戦後知〉を歴史化する

著:成田 龍一

紙版

内容紹介

敗戦から現在に至る思考の総体を〈戦後知〉として把握しようとする企てに、歴史学はいかに関わりうるのか。松本清張、司馬遼太郎、大江健三郎らの作品から、加藤周一、山口昌男、見田宗介らの思索まで、同時代の想像力を尖鋭に表現する文学や思想の読解を通じて、歴史学を専門知の閉域から解き放つ試み。現代文庫オリジナル編集。解説=戸邉秀明。

目次

歴史論集2 まえがき


問題の入口 なぜ〈戦後知〉を問うのか

第1章 〈戦後知〉のありか

第2章 「戦後七〇年」のなかの戦後日本思想
 はじめに
 1 「戦後」を論じる環境と条件
 2 「戦後」の二つの時期区分——直線型と物語型
 3 「悔恨共同体」の内と外
 おわりに


Ⅰ 「戦後文学」の歴史意識——歴史学からの対峙

第3章 大佛次郎の明治維新像——半世紀後に読む『天皇の世紀』
 はじめに
 1 大佛次郎の明治維新
 2 大佛次郎の認識と叙述——論点の提示
 3 大佛次郎の作法
 おわりに

第4章 司馬遼太郎と松本清張
 1 「近代」の明るさと謀略と
 2 歴史に対面するか対峙するか
 3 戦後社会の理念に賭ける
 4 二一世紀の「手持ちの資源」として

第5章 松本清張の「大日本帝国」——文学者の想像力と歴史家の構想力
 はじめに
 1 一九六〇年代・松本清張へ向かう視線
 2 『象徴の設計』と『火の虚舟』
 3 歴史家の文体をめぐって——むすびにかえて

第6章 「歴史と文学」の来歴
 はじめに
 1 「歴史と文学」の一九七〇年代
 2 「文学史」というアリーナ


Ⅱ 「戦後知識人」から「現代知識人」へ

第7章 「戦後知識人」としての加藤周一
 1 加藤周一(その一)
 2 加藤周一(その二)
 3 戦後を生きた知識人

第8章 大江健三郎・方法としての「記憶」——一九六五年前後
 1 記憶の場所/場所の記憶
 2 記憶をめぐるテクストとしての『万延元年のフットボール』
 3 記憶と表象
 4 語りの位相——むすびにかえて

第9章 井上ひさしの「戦後」——出発点、あるいは原点への遡行
 はじめに
 1 作品のなかの「戦後」認識 Ⅰ
 2 作品のなかの「戦後」認識 Ⅱ
 3 「再帰的戦後」

第10章 「東京裁判三部作」の井上ひさし
 はじめに
 1 「東京裁判三部作」まで
 2 「東京裁判三部作」におけるデモクラシーの構造
 3 「戦後」民主主義者/「後ポスト戦後」民主主義者としての井上ひさし
 おわりに

第11章 辻井喬のしごと——日中友好の井戸を掘る
 はじめに
 1 さまざまな辻井喬
 2 辻井喬の肖像——小説『彷徨の季節の中で』
 3 辻井喬の中国
 4 辻井喬の主張——『茜色の空』をめぐって


Ⅲ 「現代思想」への〈転回〉を歴史化する

 第12章 山口昌男の一九七〇年前後——「歴史学的思考」への挑発
 はじめに
 1 国史から「人類学的思考」へ
 2 一九七一年・「知」のモデル
 3 「歴史」への接近とその作法
 おわりに——「八〇年代」の知に向けて

第13章 見田宗介をめぐってのこと二つ、三つ
 はじめに
 1 一九七〇年代半ばまでの見田宗介
 2 見田宗介と「戦後」認識
 おわりに

第14章 山之内靖と「総力戦体制」論

第15章 「日本文化」の文化論と文化史——日本研究の推移
 はじめに——「日本文化論」と「日本文化史」
 1 「日本文化論」の推移をめぐって
 2 「日本文化史」の推移をめぐって
 おわりに


初出一覧
解 説……………戸邉秀明

著者略歴

著:成田 龍一
成田龍一(Ryuichi Narita)
1951年生まれ。日本女子大学名誉教授。近現代日本史。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。著書に『近現代日本史との対話【幕末・維新─戦前編】』『同【戦中・戦後─現在編】』(集英社新書)、『近現代日本史と歴史学』(中公新書)、『大正デモクラシー』(岩波新書)、『増補「戦争経験」の戦後史』(岩波現代文庫)他多数。

ISBN:9784006004330
出版社:岩波書店
判型:148x105mm
ページ数:430ページ
定価:1620円(本体)
発行年月日:2021年05月
発売日:2021年05月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ