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岩波新書 新赤版 1874

大学は何処へ 未来への設計

著:吉見 俊哉

紙版

内容紹介

パンデミックで窮状が白日の下に晒された日本の大学。襲いかかるオンライン化の奔流、不可避の人口減、疲弊する教員、逼迫する資金、低下する国際評価——。存続の危機の根本原因はどこにあるのか。本来の大学を追究し続けてきた著者が、「時間」をキー概念に提案する再生のための戦略とは。ロングセラー『大学とは何か』待望の姉妹編。

目次

序 章 大学の第二の死とは何か――コロナ・パンデミックのなかで
 コロナ危機が浮かび上がらせた大学の窮状
 オンライン化で授業の質は劣化する?
 大学に、バブル崩壊が遅れてやってくる
 自らの首を絞め続ける大学の苦悩
 大学は企業のように「経営」されるべきなのか?
 大学入試にしか関心のない日本社会
 グローバル化と日本の大学の存在感低下
 第二世代の大学が迎えつつある死とは

第一章 大学はもう疲れ果てている――疲弊の根源を遡る
 大学は疲れ果てている
 もう一つの平成失敗史――三大改革の顚末
 「選択と集中」の支配 文系の困難
 戦時の須要に応じる知――科学技術研究の大躍進
 総力戦と理系高等教育の爆発的拡張
 東京帝大第二工学部の「戦時」と「自由」
 私学における理系拡張と文系縮小
 高等教育における複線と単線
 阿部重孝の改革案と東京帝大の反発

第二章 どれほどボタンの掛け違いを重ねてきたのか――歴史のなかに埋め込まれていた現在
 占領期改革における継続と断絶
  大学概念はすでにパラダイム転換していた
 旧制高校を吞み込んだ旧制帝大
 東大コマバの脱植民地主義的な挑戦
 リベラルアーツは専門知の基礎なのか?
 学部タテ割りを増殖させた旧制高校廃止
 カレッジとしての新制大学――未完のビジョン
 和田小六と東京工業大学の挑戦
 ボタンの掛け違いはやがて複雑骨折に至る
 なぜ、単位制が理解されなかったか
 大学基準協会における曲折

第三章 キャンパスは本当に必要なのか――オンライン化の先へ
 オンライン化の津波が大学を襲う
 大教室授業のオンライン化は本当に可能か
 オープン・エデュケーションにおける日本の遅滞
 オープン・エデュケーションとしてのOCW
 大規模オンデマンド配信型授業としてのMOOC
 ミネルバ大学の挑戦――キャンパスなき全寮制大学
 オンラインが生む時間と空間の再編
 オンラインとともに町へ出よう

第四章 九月入学は危機打開の切り札か――グローバル化の先へ
 危機のなかの九月入学案
 繰り返されてきた九月入学構想
 東京大学における秋入学構想
 クオーター制という補助線
 困難列挙主義と越えられなかった壁
 入口問題の解決だけが壁突破を可能にする
 「空間の壁」の消失と「時間の壁」の浮上

第五章 日本の大学はなぜこれほど均質なのか――少子高齢化の先へ
 オンライン化、グローバル化、そして少子高齢化
 マルチステージ化する長寿化社会の人生
 それでも大学は期待されていない――通過儀礼でしかない日本の大学
 人生で三回大学に入学する――トランスミッションとしての大学
 「通信制大学」という回路
 「高専」という回路
 金沢工業大学・国際高専の挑戦
 ダイバーシティとコミュニティの両立に向けて――大学の本分

第六章 大学という主体は存在するのか――自由な時間という稀少資源
 大学とは誰か――カレッジ、ファカルティ、ユニバーシティ
 若手研究者たちの絶望と疲弊
 「学長のリーダーシップ」が孕む逆説
 ホモ・アカデミクスたちの大学人生
 大学における教授の四類型
 学長のリーダーシップと構造改革派
 時間という稀少資源と大学構造改革
 時間の劣化を反転させる大学の横断的構造化

終 章 ポストコロナ時代の大学とは何か――封鎖と接触の世界史のなかで
 反復するパンデミックとグローバル化
 大学の場所はどこにあったのか
 「自粛」の日本政治を支える「世間」
 メディア環境化する「世間」
 日本の「大学」はそもそも官吏養成機関?
 オンラインは新たな銀河系?――何が大学を殺すのか

 あとがき
 主な引用・参考文献

著者略歴

著:吉見 俊哉
吉見俊哉(よしみ しゅんや)
1957年 東京都生まれ
1987年 東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学
現在─東京大学大学院情報学環教授
専攻─社会学・文化研究・メディア研究
著書─『都市のドラマトゥルギー』(弘文堂、のち河出文庫)、『カルチュラル・スタディーズ』『視覚都市の地政学』(以上、岩波書店)、『ポスト戦後社会』『親米と反米』『大学とは何か』『トランプのアメリカに住む』『平成時代』(以上、岩波新書)、『「文系学部廃止」の衝撃』『大予言』『戦後と災後の間』『東京裏返し』(以上、集英社新書)、『五輪と戦後』(河出書房新社)、『大学という理念 絶望のその先へ』(東京大学出版会)ほか多数

ISBN:9784004318743
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:316ページ
定価:900円(本体)
発行年月日:2021年04月
発売日:2021年04月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JN