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わが家をめざして

文学者、伝書鳩と暮らす

著:ジョン・デイ
訳:宇丹 貴代実

紙版

内容紹介

ブレグジットのイギリスで考える「家とは何か」

 ロンドンで自転車便のドライバーをしていた若き文学者である著者は、大学にポストを得、パートナーが妊娠したことを機に、郊外に家を買った。ところがわが子の誕生が近づくにつれて、自由を奪われ家に縛りつけられているように感じて冒険を夢見はじめ、誕生後は母乳もミルクもなかなか飲まない赤子に、育児ノイローゼのようになってしまう。さらに第二子の流産をきっかけにふたりの間に溝が生まれたことで、自分が思い描いていた「家庭」からしめ出されているように感じはじめる。
 そんな時に彼が思いだしたのは、子どものころ飼っていた鳩だった。雌雄がともに子育てをし、千キロのかなたから巣に帰ってくる伝書鳩とまた暮らしたら、家のなんたるかを彼らが教えてくれるかもしれない―。
 本書は、ときに子育てに似たレース鳩の訓練という側面と、著者の家庭作りという側面を絡めつつ、ホメロス、ゼーバルトをはじめとする文学作品や、ハイデッガー、ロラン・バルト、シモーヌ・ヴェイユといった哲学者の著作、フロイトやダーウィンを読む。ブッカー賞元選考委員が、ブレグジットに揺れるロンドンで家、家庭、故郷、祖国に関して考察した記録である。

著者略歴

著:ジョン・デイ
キングス・カレッジ・ロンドン講師(現代英米文学)。オックスフォード大学セント・ジョンズ・カレッジでDPhil取得。ロンドン・レビュー・オブ・ブックス、ガーディアン、フィナンシャルタイムズ他に寄稿している。2016年にはマン・ブッカー賞の審査員を務めた。著書は他にCyclogeography(2015)がある。
訳:宇丹 貴代実
上智大学法学部国際関係法学科卒業、翻訳家。訳書に、グライムズ『希望のヴァイオリン――ホロコーストを生き抜いた演奏家たち』、マクドナルド『ハヤブサ』(以上、白水社)、ウィンドロウ『マンブル、ぼくの肩が好きなフクロウ』、フィンケル『ある世捨て人の物語』(以上、河出書房新社)ミッチェル『今日のわたしは、だれ?』(筑摩書房)、『モーツァルトのムクドリ』(青土社)など。

ISBN:9784560098325
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:294ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2021年04月
発売日:2021年04月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DNL
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:DS