叢書・知を究める 19
虫たちの日本中世史
『梁塵秘抄』からの風景
著:植木 朝子
内容紹介
本書は、平安時代末の流行歌今様を出発点に、中世の人々と虫の関わりを追いかけ、小さな虫の世界から覗いた中世の風景のささやかであっても豊かな世界を切り取る。私たち現代人の持つ虫への思いは、過去とどのようにつながっているのか、さまざまな文学・芸能・信仰などに現れる虫の姿に導かれながらたどる新しい日本中世史。
目次
序 虫に対する嫌悪と愛着
第一章 中世芸能に舞う虫──蟷螂・蝸牛
1 蟷螂の故事と芸能
2 蟷螂のおかしみとあわれさ
3 舞え舞え蝸牛
4 寂蓮と蝸牛の今様
第二章 中世の信仰と刺す虫──蜂・虱・百足・蚊
1 藤原宗輔の蜂飼と堀河天皇の虫撰び
2 蜂の智恵と聖性
3 虱の遊びと発心
4 俵藤太の百足退治
5 毘沙門天と百足
6 蚊のまつ毛
7 蚊との闘い
第三章 中国文芸と鳴く虫・跳ねる虫──機織虫・蟋蟀・稲子麿
1 機織虫の織る衣
2 四天王寺西門信仰と機織虫
3 機織虫を愛した人々
4 蟋蟀は鉦鼓の名人
5 古き筆、蟋蟀となる
6 闘う蟋蟀
7 稲子麿は拍子つく
8 嫉妬しない稲子麿
第四章 王朝物語から軍記物語へ飛び交う虫──蝶・蛍
1 はかない蝶・豪華な蝶
2 瑞兆としての蝶・凶兆としての蝶
3 神秘の蝶の二面性
4 恋する人の魂と蛍
5 武将の亡魂と蛍
6 腐草、蛍となる
第五章 中世の子ども・武将・芸能者たちと遊ぶ虫─蜻蛉
1 蜻蛉の呼び名
2 鼻毛で蜻蛉を釣る
3 蜻蛉釣りと蜻蛉の玩具
4 目を回す蜻蛉・くしゃみする蜻蛉
5 蜻蛉と武将たち
6 蜻蛉返りする人々
7 芸能と蜻蛉返り
第六章 中世の意匠と巣を編む虫──蜘蛛
1 吉兆の蜘蛛
2 蜘蛛の知恵
3 蜘蛛のもたらした道具
4 蜘蛛と遊ぶ
5 蜘蛛の芸能
6 蜘蛛の怪物
7 蜘蛛の巣の美
8 蜘蛛の巣文様
第七章 中世人が聞いた秋に鳴く虫──松虫・鈴虫・轡虫
1 秋の夕べに鳴く虫尽くし
2 鳴かない虫を聞く
終 豊かなミクロコスモス
あとがき
人名・事項・作品名索引