日本史研究叢刊 37
奈良平安時代史の諸問題
著:木本 好信
内容紹介
著者の専攻する二分野である「奈良時代政治史」の考察と、「平安時代公卿日記」の考証についての諸論を収める。前者では、大伴旅人・家持父子をめぐる長屋王、桓武天皇・早良親王らの権力闘争、そして『萬葉集』最終編纂者として五百枝王説を説く。後者では、散逸した貴重な公卿日記の逸文を引いた『朔旦冬至部類』の成立期や儀式内容、『類聚国史』の書誌的考察、村上源氏隆盛の基礎を築いた源師房の日記について論及する。
目次
第一章 奈良時代史の諸問題
第一節 大伴旅人小論 ― 長屋王の変との関わりを中心として ―
はじめに
一 旅人の経歴
二 旅人と長屋王の変
三 旅人と長屋王―『萬葉集』巻三、二九九~三〇二番歌から ―
四 四首構成の背景
おわりに
第二節 橘諸兄と橘奈良麻呂の変
はじめに
一 天平年間末期の橘諸兄と藤原仲麻呂
二 『萬葉集』からみた橘諸兄の政治行動
三 天平勝宝七歳十一月の集宴
おわりに
第三節 黄文王と橘奈良麻呂
はじめに
一 黄文王擁立の理由
二 黄文王と橘氏・黄文氏
おわりに
第四節 私の仲麻呂像 ― 反逆者像の払拭と政治観 ―
はじめに
一 仲麻呂の反逆者像の再検討 ― 駅鈴・御璽の争奪 ―
二 仲麻呂の反逆者像の再検討 ― 都督使のこと ―
おわりに ― 仲麻呂のめざした政治 ―
第五節 『続日本紀』左右京尹創設条について ― 春名宏昭氏説への疑問 ―
はじめに
一 左右京尹創設条の訓み
二 左右京尹創設条の本意
三 左右京尹創設の理由
おわりに
第六節 桓武天皇の皇権確立 ― 薭田親王の死をめぐる臆説 ―
はじめに
一 薭田親王をめぐる皇位継承
二 桓武天皇の皇権確立 ― 藤原浜成・氷上川継排斥、井上廃后・他戸廃太子事件 ―
三 桓武天皇の皇権確立 ― 早良皇太子排斥事件 ―
おわりに
第七節 志貴皇子系諸王と『萬葉集』の成立 ― 新たに最終編纂者五百枝王試論 ―
はじめに
一 志貴皇子系諸王の注記 ― 市原王と家持 ―
二 五百枝王と家持
三 五百枝王・家持と藤原種継暗殺事件
おわりにかえて ― 五百枝王の『萬葉集』最終編纂者試論 ―
付論㈠ 市原王と能登内親王の婚姻 ― 志貴皇子と紀朝臣氏の血脈 ―
はじめに
一 市原王と光仁天皇
二 志貴皇子系諸王と紀朝臣氏
おわりに
付論㈡ 五百枝王配流の政治背景
はじめに
一 五百枝王と藤原種継暗殺事件
二 五百枝王配流の政治背景
おわりに
第八節 大伴家持の娘
はじめに
一 家持と妾の死
二 家持の娘と藤原久須麻呂
三 家持と藤原仲麻呂
四 家持の娘と藤原二郎
おわりに
第九節 橘古那可智の入内と藤原氏
はじめに
一 古那可智姉妹
二 古那可智の入内
三 古那可智と藤原氏
おわりに
第二章 平安時代史の諸問題
第一節 宮内庁書陵部蔵柳原本『朔旦冬至部類』について
はじめに
一 柳原本『朔旦冬至部類』 ― その概要と成立 ―
二 朔旦冬至賀表について ― 加判と「等言」 ―
三 朔旦叙位について ― 菅原在良の昇叙と大江匡房 ―
おわりに
第二節 『類聚国史』について
はじめに
一 『類聚国史』の成立と菅原道真
二 『類聚国史』の篇目と内容
三 『類聚国史』の篇目(部立て)と逸文
四 『類聚国史』の写本
おわりに
第三節 「外記庁例」の成立期について
はじめに
一 「外記庁例」成立の最上限期
二 「外記庁例」の逸文
おわりに
第四節 『土右記』と逸文補遺
はじめに
一 源師房の経歴と藤原道長・頼通
二 『土右記』の概要
三 『土右記』の新逸文
おわりに
付章 書 評
一 鷺森浩幸著 『天皇と貴族の古代政治史』
二 倉本一宏著 『藤原氏の研究』
三 瀧浪貞子著 『光明皇后』
四 中村順昭著 『橘諸兄』
あとがき
初出一覧