歌集『沈黙と落日』
著:森脇 正基
紙版
内容紹介
収録歌より
七十八歳、亡父の齢に追ひつくもなほ想ひゐる戦場の父
戦場を語ることなく沈黙をまもり通して逝きし父はや
セピア色せる戦場の一枚の父の写真に〈武漢攻略〉
戦前もその亦戦後も繰り返す欺瞞隠蔽疫病のごと
積極的平和主義とふ詭弁なるいつか来た道今ぞ殲くべし
潔く散れ花に嵐のごとくちれ死の香ただよふ桜花うとみ来
母が遺骨抱き帰りし日の夕の見たこともなき巨き落日
またひとつ雪の茅舎の火影きえ限界集落になりてゆくらし
「どん底」とふ茶房に独りランボーを読みつつ聴きゐし鎮魂の曲