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岩波新書

花粉症と人類

著:小塩 海平

紙版

内容紹介

目はかゆく、鼻水は止まらない。この世に花粉症さえなければ——。毎年憂鬱な春を迎える人も、「謎の風邪」に苦しみつつ原因究明に挑んだ一九世紀の医師たちの涙ぐましい努力や、ネアンデルタール人以来の花粉症との長い歴史を知れば、きっとその見方は変わるだろう。古今東西の記録を博捜し、花粉症を愛をもって描く初めての本。

目次

はじめに

第1章 花粉礼賛
 1 偉大なる創造物
  花粉の誕生/花粉はなぜ飛ぶのか/風を愛する花、虫を愛する花
 2 花粉発見史
  世紀の顕微鏡学者たち/植物にも性がある!/自然の神秘/花粉への讃歌
 3 日本での事始め
  最初に花粉をみた日本人/花粉という日本語/サムサノナツハオロオロアルキ


第2章 人類、花粉症と出会う
 1 ファースト・フラワー・ピープル
  花粉は情報の宝庫/シャニダール洞窟での発見/ネアンデルタール人は花粉症だった?
 2 最初の花粉症患者は?
  アテネのヒッピアス説/聖書の花粉症/クレオパトラとエジプト医学/アッシリアのナツメヤシ授粉作業/日本最古のナツメヤシ/古代中国の伝承
 3 バラ風邪の発見——古代から中世へ
  医学の父、ヒポクラテス/天才ラーゼス/詩に謳われたバラ風邪


第3章 ヴィクトリア朝の貴族病?——イギリス
 1 花粉症論文、初登場——ボストック
  嘲笑の「新・文明病」/花粉症、医学会に初登場/ボストックの第一講義/ボストックの第二講義/諸説紛糾した病因論/ドイツ人気質の研究者ヒューブス
 2 花粉症研究の父、ブラックレイ
  実験的研究が突き止めた「黒幕」/無謀な実験/空中の花粉量を測定する/ダーウィンからブラックレイへの手紙/「貴族病」の説明
 3 名誉ある病に昇格
  ステータスシンボルとしての花粉症/優生学的発想への誘惑/花粉症は神経衰弱?/松下禎二と病原菌説/ワクチン開発の試み


第4章 ブタクサの逆襲——アメリカ
 1 花粉症の選ばれし家、アメリカ
  モリル・ワイマン医師と「秋カタル」/犯人はブタクサ?
 2 フロンティア開発とブタクサ
  広がるブタクサのフロンティア/花粉症リゾートの形成/鼻持ちならない花粉症学会/ビアードのアンケート/ヘミングウェイと花粉症リゾート
 3 アメリカ人とブタクサの攻防
  世界初の空中花粉地図の作成/エアコンとインドアライフ/「道徳雑草」への出世/スーパーウィードへの変身


第5章 スギ花粉症になることができた日本人
 1 花粉症への「あこがれ」
  枯草熱の記憶/アメリカで花粉症になった日本人/ジェームス原の花粉症研究/民族性をめぐって/GHQと花粉症
 2 初症例から花粉症裁判まで
  花粉症患者、ついに出現/田淵幸一選手の引退/スギ植林政策を問うた花粉症裁判
 3 2人に1人が花粉症
  スギ花粉症は日本人の証明?/誇るべき罹患率


第6章 花粉光環(コロナ)の先の世界
 1 花粉症の効用
  病気にかかるというアドヴァンテージ/衛生仮説と消毒思想/共生への道/スギは日本の秘宝!/シーボルトが愛したスギ/無花粉スギ・少花粉スギ
 2 私の研究遍歴
  鳥もち作戦/スギ花粉との苛酷な闘い/スギ花粉だけを「自殺」させる/シドウィア・ジャポニカに対する苦言/花粉症軽減モデル都市の夢
 3 花粉症と人類の将来
  いくつかの予言/花粉光環を眺めよう!


あとがき

著者略歴

著:小塩 海平
小塩海平(こしお かいへい)
1966年静岡県生まれ。1995年東京農業大学農学研究科博士後期課程修了。東京農業大学助手等を経て、2008―09年オランダ・ワーヘニンゲン大学客員研究員
現在―東京農業大学国際食料情報学部国際農業開発学科教授
専門―植物生理学。幅広く人間の活動と生態系とを視野に入れる
著書―『農学と戦争 知られざる満洲報国農場』(足達太郎、藤原辰史との共著、岩波書店)、『国際農業開発入門』(東京農業大学国際農業開発学科編、筑波書房) ほか
訳書――ヤープ・ファン・クリンケン『ディアコニアとは何か―義とあわれみを示す相互扶助』(一麦出版社)、シャーリー・フェントン・ヒューイ『忘れられた人びと――日本軍に抑留された女たち・子どもたち』(共訳、梨の木舎)ほか

ISBN:9784004318699
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:176ページ
定価:800円(本体)
発行年月日:2021年02月
発売日:2021年02月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VFD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:MJ