岩波新書 新赤版 1856
がんと外科医
著:阪本 良弘
内容紹介
二人に一人はがんになると言われているいま、様々な治療法が研究されている。そのなかで外科手術は、がん治療の根幹である。外科医として、肝がん、そして難治性の膵がんの治療・手術の最前線にいる著者が、肝胆膵のがんの外科的治療の開発研究の軌跡と最新状況、さらに外科医の日常、師からの指導、患者からの学びなどを綴る。
目次
はじめに
Ⅰ 外科医の日々
1 肝臓がん手術の一日
カンファレンスと回診
手術が始まる
患者さんとの約束
肝臓が現れる
肝臓を浮かせる
肝授動に必要な忍耐
出血を減らすために
超音波を武器に
道しるべは肝静脈
麻酔科医からの信頼
一〇時間の手術を経て
2 手術を描き、記録する
脳が蘇らせる手術の風景
ゴールデンタイムのデフォルメ
手術イメージ再現の効用
3 他院での手術
手術の依頼
大切なのは我慢
患者さんの無事を
Ⅱ 肝臓、胆道、膵臓
1 肝 臓
体内で最大の臓器
大樹のように
肝障害が進行すると
胆汁の産生
2 胆 道
胆汁を十二指腸に運ぶ道
閉塞性黄疸
3 膵 臓
内臓の深部に存在
外分泌と内分泌
4 肝臓がん
肝臓がんの分類
肝細胞がんとは
肝細胞がんの治療法
肝細胞がん治療のトピック
5 胆道がん
胆道の三種類のがん
胆道がんの治療法
6 膵がん
膵がんの成績
膵がんの性質
進行した膵がんの治療法
切除可能な膵がんと補助化学療法
Ⅲ 肝胆膵外科医への軌跡
1 地域基幹病院の外科部長からの学び
外科研修先の決定
外科修行
患者さんへの向き合い方
やさしさと厳しさと、探究心
2 肝胆膵外科の師との出会い
レジェンドのオーラ
肝細胞がんの外科治療
幕内基準
肝系統的亜区域切除
師と弟子たち
フェアーな師
日本の生体肝移植の現状
東京大学における生体肝移植
肝移植後の合併症との闘い
Ⅳ 肝胆膵がんへの挑戦
1 肝機能に基づいた肝区域切除
肝臓手術の開発と教育
危険だった肝臓手術
ICGを用いた肝切除基準
間歇的肝門遮断
術中超音波の活用
肝臓の最深部の切除
2 肝門部領域胆管がんの切除と門脈塞栓術
肝門部領域胆管がんの手術とは
術前門脈塞栓術
PVEを併用した成績
3 両葉多発肝転移に対する二期的肝切除とALPPS
大腸がんの肝転移に対するあきらめない肝切除
部分切除が良い理由
肝転移に対するPVEの併用と限界
フランスの二期的肝切除
新しい二期的肝切除ALPPSの功罪
ALPPS変法手術の考案
4 膵がん補助療法開発の歴史
ゲムシタビンの登場
拡大郭清手術の時代
拡大郭清から手術後の補助療法へ
Ⅴ 術後合併症を減らすために
1 術後合併症との対峙とリスク管理
合併症とは
術後の患者さんの容態の変化
肝臓の切除に伴う合併症
膵臓の切除に伴う合併症
2 出血の少ない肝臓の切除をおこなうために
出血の少ない肝切除の必要な理由
出血を減らす秘策
座って手術をする理由
Ⅵ 患者からの学び
1 ある患者さんとの出会い
学ぶ患者、ともに闘う患者
術後の生活
「患者力」を感じる
主治医として患者さんについて考えること
2 再発と対峙する
再発の告知
コンバージョン手術
患者さんと同じ方向を向く
化学療法、コンバージョン手術、そして、化学療法
坂井さんからの問い
Ⅶ 未来への課題
1 リスクへの対峙と教育
手術のリスク
術前診断と手術の適応
ビッグデータを用いた併存症と合併症の解析
リスクの高い手術を引き受けるために
リスクの高い手術での剝離操作
2 外科医の働き方を考える
外科医の減少
外科医の働き方改革
腹腔鏡下手術の導入
3 外科技術の伝承
あとがき
文献注