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講談社現代新書

経済学の堕落を撃つ 「自由」vs「正義」の経済思想史

著:中山 智香子

紙版

内容紹介

経済学は、なぜ人間の生から乖離し、人間の幸福にはまったく役立たなくなってしまったのか? 経済学の堕落の跡をたどると同時にその再生の可能を探る。「科学的客観性」「ヴァリューフリー」を標榜し、いつしか「人間の心」を失ってしまった経済学。19世紀後半ドイツにおいて始まった経済学「科学化」の動き。ハイエク、「ゲーム理論」、さらには「シカゴ学派」の「ゴッドファーザー」シュルツへと至る、極端な経済の自由化と「脱倫理化」の強化。そして「クズネッツ曲線」をめぐる「新自由主義」の欺瞞。その一方での、上記の流れに抗して「人間の顔をした経済学」を目指した、ポランニー、イリイチ、あるいはウォーラーステインら世界システム論者などにによる、経済学における「社会的公正」理念復権への模索。経済学の歩みを「自由」と「正義」という二つの相対立する思想の相克の歴史と捉え、21世紀の「来たるべき経済学」の可能性を探る。

目次

はじめに
第1部 経済学の分岐点--「倫理」から倫理「フリー」へ
第1章 市場は「自由競争」に任せるべきか--理念と方法を問う
第2章 「暮らし」か「進歩」か--ダーウィニズムと経済学
第3章 「逸脱」のはじまり
第4章 経済学からの「価値」の切り離し--「社会主義経済計算論争」の行方

第2部 「アメリカニズム」という倒錯
第5章 「自由」か「生存」か--大戦間期の「平和」の現実
第6章 マネジメント=市場の「見える手」
第7章 経済成長への強迫観念と、新たな倒錯のはじまり
第8章 (特別編)工業化される「農」--食にみるアメリカニズム

第3部 新たな経済学の可能性をもとめて--擬制商品(フィクション的商品)の呪縛から離れて
第9章 世界システム分析の登場
第10章 「人間」をとりもどす--「労働」から「人間」へ
第11章 「おカネ」とはなにか--「レント」および「負債」をめぐる思考
第12章 「土地」とはなにか--そして「誰かとともに食べて生きること」
終わりに

著者略歴

著:中山 智香子
中山智香子(なかやま ちかこ)
一九六四年生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科理論経済学・経済史専攻博士後期課程単位取得退学、ウィーン大学院経済学研究科博士課程修了。現在、東京外国語大学総合国際学研究院教授。専門は経済思想史。著書に『経済戦争の理論--大戦間期ウィーンとゲーム理論』(勁草書房)、『経済ジェノサイド-- フリードマンと世界経済の半世紀』(平凡社新書)が、共著に『アルジャジーラとメディアの壁』(石田英敬・西谷修・港千尋との共著、岩波書店)がある。

ISBN:9784065219539
出版社:講談社
判型:新書
ページ数:288ページ
定価:1000円(本体)
発行年月日:2020年11月
発売日:2020年11月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KCA