岩波現代文庫 学術426
政治と複数性
民主的な公共性にむけて
著:齋藤 純一
内容紹介
「余計者」を無視し、黙殺し、遠ざけようとする脱-実在化の暴力に抗し、それぞれの位置から語られる言葉に敬意を払い、一人ひとりの政治的存在者としての現われを相互に保障しあう。アーレントやハーバーマスの議論を踏まえ、排他的な同質性の政治を批判的に問い直す、内向きに閉じない社会統合の可能性を切り開く書。
目次
はじめに――「見棄てる」という暴力に抗して
I
第一章 デモクラシーと複数性
一 政治的存在者としての処遇
二 ラディカル・デモクラシーの条件
三 人びとの間の複数性と内的複数性
四 自己倫理の政治的含意
五 受苦への応答と意見の政治
第二章 デモクラシーと社会統合
一 社会の脱-統合化への対応
二 ナショナルな統合の再生――リベラル・ナショナリズム
三 ポスト・ナショナルな社会統合の構想――憲法パトリオティズム
四 デモクラシーによる社会統合
II
第三章 表象の政治/現われの政治
一 現われの封鎖
二 現われの空間と表象の停止
三 アゴニズムと反本質主義
四 パーリアと政治的抵抗の公共圏
五 「聴くこと」の政治
第四章 公共性の二つの次元
一 公共性と非共約性
二 生の二元化――ビオスとゾーエー
三 ニーズ解釈の政治
四 セキュリティ・ユニット
五 「見棄てられた境遇」と親密圏
六 現われの公共性
III
第五章 社会の分断とセキュリティの再編
一 自然状態の黙認?
二 「社会的なもの」と集合的なセキュリティ
三 集合的セキュリティの後退
四 能動的な自己統治
五 社会的排除とアンダークラス
六 生活空間の隔離
七 自由の社会的条件
第六章 社会的連帯の理由
一 社会の持続可能性と連帯
二 社会的連帯とその現状
三 社会的連帯による生活保障
四 社会的連帯の理由
第七章 親密圏のポリティックス
一 親密圏の再-記述
二 親密圏と場所の剝奪
三 社会的なものと親密圏
四 親密圏の危機
五 親密圏の政治
IV
第八章 政治的責任の二つの位相
一 不正義の感覚
二 集合的責任としての政治的責任
三 政治文化の継承
四 「日本人」としての名指し
五 普遍的責任としての政治的責任
第九章 丸山眞男における多元化のエートス
一 ナショナル・デモクラシーから結社形成的デモクラシーへ
二 「権力の偏重」と価値の多元化
三 正統的思考の問題化
四 精神的雑居性と惑溺の間
五 「土着主義」批判という陥穽
六 経験の単独性とアイデンティティの相剋
あとがき
岩波現代文庫版あとがき
注