平凡社新書 958
戦国北条家の判子行政
現代につながる統治システム
著:黒田 基樹
内容紹介
禄(財産)と寿(生命)、まさに穏やかなるべし―。
戦乱の世に「禄寿応穏」をスローガンに掲げ、
五代一〇〇年にわたり統治を実現した戦国北条家は、判子文化、納税や裁判の制度、
公共工事など現代の統治システムの礎を築いた。
領国統治の仕組みから戦国大名国家と現代社会との継受性を明らかにする。
目次
《目次》
はじめに──現代の統治システムの礎が築かれた戦国時代
戦国北条家が一〇〇年続いたことの意義/現代に続く「禄寿応穏」の世界
北条氏綱の遺言状/村落を貧しくしてはいけない/現代の統治システムの原点
第一章 納税通知書と判子文化の成立
納税通知書の発行は戦国中期から/判子文化の起源は江戸時代
北条家の初見の印判状/虎朱印状が創設された背景
村に出された配符の成立/印判状の意味
北条家の地位上昇と印判使用の拡大/北条家の印判使用
広がる印判状の文化/印判状は直状と奉書/花押代用印の普及
第二章 目安制が開いた裁判制度
戦国北条家による開かれた裁判制度/目安制の導入/給人領への適用
給人の租税賦課への適用/目安制の全面展開/評定衆による裁判制度
下級役人の処罰の実態/村落同士の紛争への適用
第三章 一律税率の設定と減税政策
複雑な租税の仕組み/戦国大名の「国役」/天文十九年の公事赦免令
税制改革の推進/段銭・棟別銭の増徴
第四章 徴税方法の変革
納税方式にいつ変化したか/滞納分の債務化/徴税方式から納税方式へ
変更の契機と理由/村役人制の成立/小代官と名主の役割/村役人制成立の意義
第五章 市場関与と現物納
戦国大名が広めた市場への介入/銭納から現物納へ/撰銭という社会現象
北条家の撰銭対策の開始/現物納の採用と納法の制定
代物法度の市場への適用/現物納適用の拡大/収取機構の確立
第六章 「国家」への義務の誕生
「御国のために」という言説/北条家存亡の危機の認識/「御国」の大事
「御国」のため、村のため/「御国」論理の構造/「人改令」の発令
民兵動員の要請/動員の実態/動員対象の拡大
第七章 公共工事の起源
公共工事の源流は「国役」/中世は受益者負担/大普請役の仕組み
「末代請切普請」の導入/葛西堤防の工事/荒川堰の工事
災害対応から生まれた公共工事
おわりに──戦国大名と現代国家のつながり