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シリーズ比較文化学への誘い 6

人のつながりと世界の行方

コロナ後の縁を考える

編著:山田 孝子
他著:山極 寿一
他著:小河 久志

紙版

内容紹介

ヒトはその進化の過程において、家族や血族およびそれを超えた集団との「つながり」を育み、独自の社会を築くことで他の生物との差異を獲得し、行動範囲を拡げて数を増やしてきました。人類がここまで地球上の広い範囲に住めるようになったのは、「つながり」をつくってきたからに他なりません。

ところが近年では、家族だけを大切にし、親類づきあいや近所づきあいもあまりせず、コミュニティとの関係をほとんどもたずに暮らす人が多くなっています。また、友人も恋人もほしくない、結婚しない、家族をつくろうとしない人も増え、これについて肯定的な意見も多く耳にするようになりました。さらには若者を中心に、友人がいる人のなかでも、SNSやインターネット上でのバーチャルな「つながり」はあるものの、現実に会って会話をしたり、時間と空間を共有して何かをすることが少なくなってきている傾向があります。

しかし、そうした気運の一方で、誰にも看取られずに孤独死してしまう方がたくさんおられることや、頻発する自然災害への対応にはコミュニティの存在が不可欠なことを思えば、人間にとってリアルな「つながり」の重要性は不変です。それは人と人との接触の削減が求められるコロナ禍においても同様です。むしろ人と会えない時期のつらさは、「つながり」が人類にとってなくてはならないものであることをより強く浮かび上がらせました。

本書では、血縁・地縁・信仰縁・嗜好縁など、世界各地の民族や集団の多様な「つながり」の歴史と現在について、霊長類学、民族学、文化人類学の視点から比較・考察。共通点と差異を観察し、歴史的な変化の状況を踏まえて、コロナ禍を乗り越えて世界の人びとが安全かつ豊かに生きる方途を探ります。

目次

刊行にあたって

◆論考
「霊長類学から考える『つながり』と人間社会──共鳴力と共感力が築いた人類の歴史」
山極寿一

◆座談会Ⅰ
「『つながり』の変容から考える日本の未来──AI 時代にも変わらない共有・共感の必要性」
小河久志+桑野萌+小西賢吾+山極寿一+山田孝子

◆論考
「移動する人々のつながり──カザフ草原に生きる家族の事例から」
藤本透子

◆論考
「ローカル/グローバルをこえるつながりのダイナミズム──チベットのボン教徒を事例に」
小西賢吾

◆論考
「結婚と「つながり」のかたち──中央アジア南部のムスリム社会」
和崎聖日

◆座談会Ⅱ
「『つながり』を取り戻す比較文化力の可能性──ネットから離れて未知のフィールドへ」
小河久志+桑野萌+小西賢吾+坂井紀公子+藤本透子+山極寿一+山田孝子

◆論考
「人はどのような『つながり』のもとで生きてきたのか──希求される『つながり』の未来を読む」
山田 孝子

著者略歴

編著:山田 孝子
京都大学名誉教授。専門は人類学、比較文化学。研究テーマはチベット系諸民族の宗教人類学的・民族誌的研究、琉球諸島・ミクロネシアの自然誌的研究、アイヌ研究、シャマニズム、文化復興、エスニシティ
他著:山極 寿一
第26代京都大学総長。専門は人類学、霊長類学。研究テーマはゴリラの社会生態学、家族の起源と進化、人間社会の未来像。
他著:小河 久志
金沢星稜大学人文学部准教授。専門は文化人類学、東南アジア地域研究。研究テーマはタイ・ムスリム社会の民族誌的研究、自然災害と社会・文化の関係。

ISBN:9784909151063
出版社:英明企画編集
判型:A5
ページ数:192ページ
価格:1000円(本体)
発行年月日:2020年09月
発売日:2020年09月04日