没入と演劇性
ディドロの時代の絵画と観者
著:マイケル・フリード
訳:伊藤 亜紗
紙版
内容紹介
観者の存在を前提とするミニマリズム作品を批判した概念として名高い「演劇性」は、18世紀のフランス絵画の成立条件に関わる根本的な問題として登場した。画家たちの様々な試みを見るとともに、ディドロに代表される当時の美術批評家の言説を読み解きながら、いかにして観者という存在のあり方が問題視されるようになったのか、その理論的枠組を大胆に提示する。
《ディドロの絵画観は、突き詰めると、観者は存在しない、観者は本当の意味ではそこに、画布の前に立ってはいない、という究極の虚構に立脚している。そして、絵画のうちにそうした虚構を打ち立てようとするならば、行為と情熱をドラマ的に描き表すこと、そしてそれに伴って生じる因果関係によって瞬間的に見てとれる単一性=統一性(ユニティ)のあり方というものが、利用可能な手段のなかでも最良のものだったのだ。》(本書より)