尊厳と社会 下
編:加藤 泰史
編:小島 毅
内容紹介
下巻では、「尊厳ある社会」を構想する上で、この社会に生きる人々に関わる、より具体的なケースを取り上げる。原爆被害者、ハンセン病患者の隔離、DV、日韓問題、慰安婦、芸術表現と尊厳、障害者倫理学、認知症患者の意思決定、高齢者の介護、終活と死、ケアとジャーナリズム、働き方と企業倫理など。果たしてこれらに「尊厳」はどのように関わるのか。上下各巻に日本語で読める文献の読書案内を付す。
目次
第Ⅳ部 法/政治編
第1章 人間の尊厳と人文社会科学の挑戦──原爆被害者「生活史調査」を中心に(後藤玲子)
第2章 ハンセン病者・療養者の隔離をめぐる「尊厳」──近現代の日本社会における(石居人也)
第3章 尊厳と暴力──公的領域・親密的領域・個的領域の三分法から考える(宮地尚子+金井聡)
第4章 尊厳と歴史──戦後日韓関係の思想から(小倉紀蔵)
第5章 芸術表現による尊厳への加害──リーガル・モラリズムとリベラリズム(原塑)
◎読書案内コラム
6 ホセ・ヨンパルト『人間の尊厳と国家の権力──その思想と現実、理論と歴史』(西野基継)
7 アヴィシャイ・マルガリート『品位ある社会──〈正義の理論〉から〈尊重の物語〉へ』(斎藤拓也)
8 内尾太一『復興と尊厳──震災後を生きる南三陸町の軌跡』(宇佐美公生)
9 山下潔『国際人権法──人間の尊厳の尊重・確保と司法』(中澤武)
第Ⅴ部 介護政策編
第1章 障害者倫理学──人間の尊厳とインクルーシヴな共同体のためのプラグマティズム的アプローチ(ヘザー・キース/小林道太郎 訳)
第2章 認知症患者の尊厳と医療ケアの意思決定──自律尊重と利益保護をめぐって(日笠晴香)
第3章 高齢者の尊厳とは──日独の高齢者介護の比較(浜渦辰二)
第4章 死のセルフマネジメント──「終活」におけるネオリベラルな主体(ドロテア・ムラデノーヴァ/齋藤元紀 訳)
第5章 「声なき声」の表象のポリティクス──ジャーナリズムは「尊厳ある生」に貢献できるか?(田中瑛)
◎読書案内コラム
10 中山研一『安楽死と尊厳死──その展開状況を追って』(松田純)
11 中島みち『「尊厳死」に尊厳はあるか──ある呼吸器外し事件から』(松田純)
第Ⅵ部 企業政策編
第1章 企業倫理学における尊厳(アルベルト・レール/勝西良典 訳)
第2章 企業の義務としてのもっとも貧しい人々の尊厳(ゲルト・ライナー・ヴァーグナー+リューディガー・ハーン/小林道太郎 訳)
第3章 なぜビジネスは倫理的であるべきなのか──日本的経営論からの倫理学(岩佐宣明)
◎読書案内コラム
12 ミヒャエル・クヴァンテ『人間の尊厳と人格の自律──生命科学と民主主義的価値』(吉田量彦)
13 金子晴勇『ヨーロッパの人間像──「神の像」と「人間の尊厳」の思想史的研究』(津田栞里)
14 加藤泰史編『尊厳概念のダイナミズム──哲学・応用倫理学論集』(齋藤元紀)
編者後書き 尊厳概念の構築と個の尊重(小島毅)
索引
執筆者・訳者紹介