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ひつじ研究叢書(言語編) 第169巻

ビジネス文書の応用言語学的研究

クラウドソーシングを用いたビジネス日本語の多角的分析

編:石黒 圭

紙版

内容紹介

生きたビジネス文書をネット上からコーパスとして取り出せる時代が到来した。クラウドソーシングをデータベースとし、日本語の国立国語研究所とAIの富士通研究所のコラボで、ビジネス日本語の諸問題と改善法を実証的に明らかにした、新境地を開拓する論文集!

執筆者:青木優子、浅井達哉、石黒圭、市江愛、井上雄太、岩崎拓也、岩田一成、赫楊、喬曉筠、熊野健志、佐野彩子、蒙韞、布施悠子、アンドレイ・ベケシュ

目次

はじめに

I ビジネス文書分析の枠組み

第1章 クラウドソーシングの登場による仕事革命
 Web時代の業務推進に求められるスキルとは 熊野健志
1. 「仕事」の変遷
1.1年間の仕事の変化
1.2 オフィスはどこで生まれたか
1.3 「帳票」と「引継ぎ」
1.4 ヒエラルキー型組織からプロジェクト型組織へ
1.5 労働法が示す労働者の定義
2. クラウドソーシングの登場
2.1 オフィスのコンピュータ化とクラウドソーシングの登場
2.2 クラウドソーシングの仕組み
2.2.1 プロジェクト形式
2.2.2 コンペ形式
2.2.3 タスク形式
2.3 クラウドソーシングの分野の偏り
3. 「仕事」を創り出す力
3.1 Web空間の中の経営者
3.2 プロジェクトの中の業務伝達
3.3 Web時代の業務推進に求められるスキル

第2章 ビジネス文書データベースとしてのクラウドソーシング
 その概要と分析方法 井上雄太
1. はじめに
2. クラウドワークスでの受注の流れ
3. データの概要と構築方法
3.1 データの概要
3.2 発注文書データベースの構築
4. 発注件数と発注者数
5. 形態素数
5.1 件名
5.2 本文
6. まとめ

第3章 受注される発注文書の条件
 労働条件と説明文の関係は? 浅井達哉
1. はじめに
2. クラウドワークス社のデータ
3. 分析対象のデータ
3.1 データの準備
3.2 属性ごとの特徴
4. Wide LearningTMによる分析
4.1 Wide LearningTMの概要
4.2 Wide LearningTMによる分析
4.3 ナレッジチャンクの解釈例
5. まとめ

II ビジネス文書の言語学的分析
発注文書の問題点とその改善法

第4章 よい発注文書の言語的条件
 悪文に学ぶ文書改善法 石黒圭
1. はじめに
2. 先行研究と本研究の視座
3. 分析対象と方法
4. 分析結果
4.1 表記面の不適切さ
4.2 語彙面の不適切さ
4.3 文法面の不適切さ
4.4 情報面の不適切さ
4.5 他者配慮面の不適切さ
5. おわりに

第5章 記号の使用実態とその問題点
 発注者と受注者をつなぐためのカッコの活用 岩崎拓也
1. はじめに
2. 先行研究と本研究の視座
3. 分析対象と方法
4. 分析結果
4.1 依頼タイトルで使用される記号類
4.2 依頼タイトルにおけるカッコの有無について
4.3 カッコ内で使用される表現
5. 記号類使用における問題点と改善法の提案
5.1 句読点の使用にかんする問題点と改善法
5.2 記号類の使用にかんする問題点と改善法
5.3 ウェブ記号の使用にかんする問題点と改善法
6. まとめ

第6章 文法項目の使用実態とその問題点
 外国人にも読みやすい日本語は? 岩田一成
1. はじめに
2. 本章の視座と先行研究
3. 分析対象と方法
4. 分析結果
4.1 初級文法(3級・4級文法)
4.2 敬語
4.3 中級文法(2級文法)
4.4 上級文法(1級文法)
5. 日本語教育関係者に対する提案
5.1 敬語について
5.2 中上級文法について
6. 文法項目に注目した際の改善法の提案
7. まとめ

第7章 副詞の使用実態とその問題点
 仕事内容を正確に伝える副詞の使い方 佐野彩子
1. はじめに
2. 先行研究と本章の視座
3. 分析対象と方法
3.1 語数、品詞の全体像
3.2 高頻度副詞
4. 分析結果
4.1 程度に関する副詞
4.2 否定や強調・限定を表す副詞
4.3 二字漢語の副詞を構成要素にもつ四字漢語
4.4 オノマトペ
5. 副詞の使用における問題点と改善法の提案
5.1 程度が曖昧な副詞に関する問題点と改善法
5.2 否定や強調・限定の副詞に関する問題点と改善法
5.3 二字漢語の副詞を含む表現に関する問題点と改善法
5.4 オノマトペに関する問題点と改善法
6. まとめ

第8章 接続詞の使用実態とその問題点
 接続詞は使わないほうがいいのか? 佐野彩子
1. はじめに
2. 先行研究と本研究の視座
3. 分析対象と方法
3.1 語数、品詞の全体像
3.2 高頻度接続詞
4. 分析結果
4.1 接続詞の選択 ①「また」「そして」
4.2 接続詞の選択 ②「ただし」「ただ」「なお」
4.3 接続詞の前後の文脈 ①「および」「かつ」「または」「もしくは」
「あるいは」
4.4 接続詞の前後の文脈 ②「さらに」「しかも」
4.5 接続詞の前後の文脈 ③「しかし」
5. 接続詞の使用における問題点と改善法の提案
5.1 置き換えが必要な接続詞の問題点と改善法
5.2 削除が必要な接続詞の問題点と改善法
5.3 前後の情報の不均衡の問題と改善法
5.4 後続文の説明不足の問題と改善法
5.5 論理展開の矛盾の問題と改善法
6. まとめ

第9章 オノマトペの使用実態とその問題点
 オノマトペはビジネス文書に不要? 赫楊
1. はじめに
2. 先行研究と本研究の視座
3. 分析対象と方法
4. 分析結果
4.1 オノマトペの使用回数
4.2 オノマトペの使用目的による分類
4.2.1 行為要求型のオノマトペ
4.2.2 行為促進型のオノマトペ
4.2.3 行為支援型のオノマトペ
4.2.4 描写型のオノマトペ
4.3 オノマトペの使用効果
4.3.1 スペースを節約する効果
4.3.2 インパクトを与える効果
4.3.3 イメージを喚起させる効果
4.3.4 心理的な距離を縮める効果
4.3.5 文体の硬さを和らげる効果
5. オノマトペ使用における問題点と改善法の提案
5.1 注文が厳しいと感じさせるオノマトペの問題点と改善方法
5.2 嘘っぽい印象を与えるオノマトペの問題点と改善法
6. まとめ

第10章 条件表現の使用実態とその問題点
 どの表現が丁寧な印象を与えるのか? 市江愛
1. はじめに
2. 先行研究と本章の視座
3. 分析対象と方法
4. 分析結果
4.1 「よろしければ/可能であれば/できれば」類の使用
4.2 「〜ば幸いです/嬉しいです/と思います」類の使用
4.3 モシの使用
5. 条件表現における問題点と改善法の提案
5.1 「可能なら」ではなく「よろしければ」を使う
5.2 「〜と幸い/嬉しいです」より「〜ば幸いです」が無難
5.3 問い合わせについて書くときは「もし」をつける
6. まとめ

第11章 ポライトネスの実態とその問題点
 日本式の他者配慮が外国人にどこまで通じるか?
蒙韫(韞)
1. はじめに
2. 先行研究と本研究の視座
3. 分析対象と方法
4. 分析結果
4.1 ポジティブ・ポライトネスの使用実態
4.2 ネガティブ・ポライトネスの使用実態
5. ポライトネスにおける問題点と改善法の提案
5.1 ポジティブ・ポライトネスにおける問題点と改善法
5.2 ネガティブ・ポライトネスにおける問題点と改善法
5.2.1 日本語母語話者でも間違いやすい敬語
5.2.2 過剰に使われている(文末が複雑な)敬語
5.2.3 非母語話者が見慣れない(ビジネス)敬語
5.3 ポライトネスの前提にかんする問題点と改善法
6. まとめ

第12章 発注文書から伝わる書き手の発話キャラクタとその問題点
 ビジネス文書に透けて見える書き手像 井上雄太
1. はじめに
2. 先行研究と本章の視座
3. 分析対象と方法
4. 分析結果
4.1 語の選択と発話キャラクタ
4.2 発注文書内における発話キャラクタの一貫性
4.3 発注内容と発話キャラクタ
5. 発話キャラクタに着目した問題点と改善法の提案
5.1 発話キャラクタの一貫性に関わる問題点と改善法
5.2 不利益が生じうる発話キャラクタの問題点と改善法
6. まとめ

第13章 情報提示の実態とその問題点
 何をどのように伝えるか? 青木優子
1. はじめに
2. 先行研究と本章の視座
3. 分析対象と方法
4. 調査の結果
4.1 情報の有無
4.2 情報の量
4.3 情報の質
4.4 情報の前提・背景
5. 情報提示における問題点と改善法の提案
5.1 情報の有無にかんする問題点と改善法
5.2 情報の量にかんする問題点と改善法
5.3 情報の質にかんする問題点と改善法
5.4 情報の前提・背景にかんする問題点と改善法
6. まとめ

III ビジネス上のやり取りの言語学的分析
発注者と受注者の関係と表現

第14章 発注者の評価からみたやり取り文書の実態とその改善法
 受注者に汲み取られにくい発注者の意図 布施悠子
1. はじめに
2. 先行研究と本章の視座
3. 分析対象と方法
4. 分析結果
4.1 作業環境への認識のずれ
4.2 指示文書に対する理解不足
4.3 返信待ちの時間ロス
5. 発注者からみたやり取り文書の改善法の提案
5.1 作業環境への認識のずれの改善法
5.2 指示文書に対する理解不足の改善法
5.3 返信待ちの時間ロスの改善法
6. まとめ

第15章 受注者の評価からみたやり取り文書の実態とその改善法
 文字と行間に隠れた受注者の気持ち 喬曉筠
1. はじめに
2. 先行研究と本研究の視座
3. 分析対象と方法
4. 分析結果
4.1 情報面の問題
4.1.1 提供する情報の不足
4.1.2 指示内容の説明の不足
4.2 管理面の問題
4.2.1 連絡をめぐる不安
4.2.2 相談をめぐる不安
4.3 配慮面の問題
5. 受注者からみたやり取り文書の改善法の提案
5.1 情報面の問題の改善法
5.2 管理面の問題の改善法
5.3 配慮面の問題の改善法
6. まとめ

第16章 クラウドソーシング発注文書の特徴
 発注者と受注者の力関係との関連 アンドレイ・ベケシュ
1. はじめに
1.1 クラウドソーシングの社会的背景
1.2 クラウドソーシングの特徴と仕組み
2. 分析の枠組み ディスコース(テクスト)と状況の文脈
3. クラウドワークス(CW)発注文書における状況の文脈と言語表現の特徴
3.1 CW発注文書における状況の文脈の特徴
3.2 CWデータにおける言語表現の特徴と状況の文脈との関係の
質的分析
4. 本書のその他の章で取り上げられた言語表現の特徴と状況の文脈

5. まとめ

おわりに
索引
執筆者紹介

著者略歴

編:石黒 圭
石黒圭(いしぐろ・けい)
国立国語研究所日本語教育研究領域教授、一橋大学大学院言語社会研究科連携教授
おもな著作:『日本語教師のための実践・読解指導』くろしお出版(2019)、『文脈情報を用いた文章理解過程の実証的研究—学習者の母語から捉えた日本語理解の姿』ひつじ書房(編著、2020)

ISBN:9784823410161
出版社:ひつじ書房
判型:A5
ページ数:322ページ
定価:7200円(本体)
発行年月日:2020年02月
発売日:2020年02月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:CJBG
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:CFK
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:CBG
国際分類コード【Thema(シーマ)】 4:2GJ