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シリーズ言語学と言語教育 39

日本語教育におけるメタ言語表現の研究

著:李 婷

紙版

内容紹介

メタ言語表現の学習とコミュニケーションのメタ認知の向上を結びつける日本語教育を提案。日本語学習者の視点を基に、メタ言語表現の学習の意義を捉え直した上で、豊富な談話資料より収集したメタ言語表現を分析する。初級日本語クラスでの学び、インタビューで得られた学習者の語り、待遇コミュニケーション論と文章・談話論に基づいた分析、いずれも日本語教師や日本語教育研究者に有益である。

目次

前書き  

第1章 日本語学習者がメタ言語表現を学習することの意義  
1.1 日本語教育でメタ言語表現を取り入れる際に考えるべきこと  
1.1.1 メタ言語表現を取り入れた日本語教育との出会い  
1.1.2 メタ言語表現が使えるようになればよいのか  
1.2 本書の目的と課題 メタ言語表現の学習の意義と日本語教育における位置づけを捉え直す  
1.3 メタ言語表現とコミュニケーションのメタ認知との関係
1.3.1 本書におけるメタ言語表現の定義
1.3.2 コミュニケーションのメタ認知の定義
1.3.3 メタ言語表現とコミュニケーションのメタ認知との関係
1.4 メタ言語表現の学習を捉え直すにあたって
1.4.1 メタ言語表現の学習を捉え直す方法
1.4.2 メタ言語表現の学習について議論する内容の全体構成

第2章 メタ言語表現とコミュニケーションのメタ認知との関係に着目した本書の位置づけ
2.1 様々に定義されてきたメタ言語表現
2.2 メタ言語表現に関する先行研究
2.2.1 杉戸(1983・1989・1996・2003・2005など)、杉戸・塚田(1991・1993)、杉戸・尾崎(2006)の分析
2.2.2 古別府(1993・1994・1997)の分析
2.2.3 西條(1999)の分析
2.2.4 日本語教育の観点からメタ言語表現を取り入れた諸研究の分析
2.2.5 メタ言語表現に関する先行研究の課題
2.3 コミュニケーションのメタ認知に関する先行研究
2.3.1 メタ認知について
2.3.2 コミュニケーションのメタ認知について
2.3.3 談話の産出・理解におけるメタ認知
2.4 待遇コミュニケーション論による分析観点
2.4.1 「人間関係」、「場」、「意識」、「内容」、「形式」について
2.4.2 「表現意図」による表現行為の類型化
2.4.3 「相手レベル」、「場レベル」、「用件レベル」について
2.5 文章・談話論による分析観点
2.5.1 「文脈展開機能」について
2.5.2 「話段」について
2.6 日本語教育学における本書の位置づけ

第3章 メタ言語表現の学習の意義を検討するための調査とメタ言語表現の分析方法
3.1 [課題1]メタ言語表現の学習の意義を検討するための調査
3.1.1 〈調査1〉初級日本語クラスにおける参与観察
3.1.2 〈調査2〉学習者のインタビュー調査
3.2 [課題2]メタ言語表現の分析方法
3.2.1 メタ言語表現の分析観点
3.2.2 メタ言語表現の用例収集
3.2.3 メタ言語表現の分析方法

第4章 初級日本語クラスにおけるメタ言語表現の学習
4.1 観察されたメタ言語表現
4.2 メタ言語表現を取り入れた教室活動
4.2.1 「ゲスト・セッション」
4.2.2 「個人化作文」と口頭発表
4.2.3 「チャンピオンのスピーチ」
4.2.4 「ショート・スピーチ」の進行、発表と質疑応答
4.2.5 教室活動以外の場面
4.2.6 「教室の文脈」について
4.3 教師の導入と指導
4.4 学習者の学習と使用
4.4.1 メタ言語表現の学習
4.4.2 メタ言語表現の使用
4.5 教師と学習者の相互作用
4.6 初級日本語クラスで観察されたメタ言語表現の指導と学習のまとめ

第5章 学習者がメタ言語表現を捉える観点
5.1 待遇コミュニケーション論に関する学習者の観点
5.1.1 「人間関係」に関する学習者の観点
5.1.2 「場」に関する学習者の観点
5.1.3 「意識」に関する学習者の観点
5.1.4 「内容」に関する学習者の観点
5.1.5 「形式」に関する学習者の観点
5.1.6 待遇コミュニケーション論に関する学習者の観点の特徴
5.2 文章・談話論に関する学習者の観点
5.2.1 「文章・談話の展開」に関する学習者の観点
5.2.2 「文章・談話の多重構造」に関する学習者の観点
5.2.3 「文章・談話の理解」に関する学習者の観点
5.2.4 文章・談話論に関する学習者の観点の特徴
5.3 待遇コミュニケーション論と文章談話論に関する学習者観点の関係づけ
5.4 メタ言語表現を学習することの意義
5.4.1 参与観察で確認されたコミュニケーションのメタ認知
5.4.2 インタビュー調査から確認されたコミュニケーションのメタ認知
5.4.3 メタ言語表現を学習することの意義
5.4.4 メタ言語表現の学習とコミュニケーションのメタ認知の向上を結び付けるために
5.4.5 [課題1]の研究結果から導き出された[課題2]の研究内容と方法論

第6章 「人間関係」、「場」、「意識」、「内容」、「形式」に関するメタ認知の向上を促すメタ言語表現
6.1 「人間関係」に言及するメタ言語表現
6.1.1 「自分」に言及するメタ言語表現
6.1.2 「相手」に言及するメタ言語表現
6.1.3 「話題の人物」に言及するメタ言語表現
6.2 「場」に言及するメタ言語表現
6.3 「意識」に言及するメタ言語表現
6.4 「内容」に言及するメタ言語表現
6.4.1 「題材」に言及するメタ言語表現
6.4.2 「内容」に言及するメタ言語表現
6.5 「形式」に言及するメタ言語表現
6.5.1 「表現形式」に言及するメタ言語表現
6.5.2 「表現の調子」に言及するメタ言語表現
6.6 「人間関係」、「場」、「意識」、「内容」、「形式」の組み合わせに言及するメタ言語表現
6.7 「人間関係」、「場」、「意識」、「内容」、「形式」に関するメタ認知の向上を促すメタ言語表現のまとめ

第7章 「表現意図」に関するメタ認知の向上を促すメタ言語表現
7.1 「宣言」の表現行為におけるメタ言語表現
7.2 「確認」の表現行為におけるメタ言語表現
7.3 「許可求め」の表現行為におけるメタ言語表現
7.4 「申し出」の表現行為におけるメタ言語表現
7.5 「忠告・助言」の表現行為におけるメタ言語表現
7.6 「勧め」の表現行為におけるメタ言語表現
7.7 「依頼」の表現行為におけるメタ言語表現
7.8 「許可与え」の表現行為におけるメタ言語表現
7.9 「指示・命令」の表現行為におけるメタ言語表現
7.10 「誘い」の表現行為におけるメタ言語表現
7.11 「表現意図」に関するメタ認知の向上を促すメタ言語表現のまとめ
7.11.1 《パターンⅠ》メタ言語表現が「表現意図」を明示するパターン
7.11.2 《パターンⅡ》メタ言語表現が「表現意図」を明示しないパターン
7.11.3 《パターンⅢ》メタ言語表現自体が言語行動の「行動展開表現」になるパターン
7.11.4 《パターンⅣ》メタ言語表現自体が言語行動の「行動展開表現」になると同時に、一般行動の「行動展開表現」に言及するパターン
7.11.5 4つのパターンの関係

第8章 談話の展開に関するメタ認知の向上を促すメタ言語表現
8.1 「A.話題開始機能」のメタ言語表現
8.1.1 「a1.話を始める機能」のメタ言語表現
8.1.2 「a2.話を再び始める機能」のメタ言語表現
8.2 「B.話題継続機能」のメタ言語表現
8.2.1 「b1.話を重ねる機能」のメタ言語表現
8.2.2 「b2.話を深める機能」のメタ言語表現
8.2.3 「b3.話を進める機能」のメタ言語表現
8.2.4 「b4.話をうながす機能」のメタ言語表現
8.2.5 「b5.話を戻す機能」のメタ言語表現
8.2.6 「b6.話をはさむ機能」のメタ言語表現
8.2.7 「b7.話をそらす機能」のメタ言語表現
8.2.8 「b8.話をさえぎる機能」のメタ言語表現
8.2.9 「b9.話を変える機能」のメタ言語表現
8.2.10 「b10.話をまとめる機能」のメタ言語表現
8.3 「C.話題終了機能」のメタ言語表現
8.3.1 「c1.話を終える機能」のメタ言語表現
8.3.2 「c2.話を一応終える機能」のメタ言語表現
8.4 談話の展開に関するメタ認知の向上を促すメタ言語表現のまとめ

第9章 談話の多重構造に関するメタ認知の向上を促すメタ言語表現
9.1 「話段区分箇所」と「話段内部箇所」におけるメタ言語表現の出現率
9.2 第1・2次元の「大話段区分箇所」におけるメタ言語表現
9.2.1 第1次元の「大話段区分箇所」におけるメタ言語表現
9.2.2 第2次元の「大話段区分箇所」におけるメタ言語表現
9.3 第3・4次元の「話段区分箇所」におけるメタ言語表現
9.3.1 第3次元の「話段区分箇所」におけるメタ言語表現
9.3.2 第4次元の「話段区分箇所」におけるメタ言語表現
9.4 第5次元の「小話段区分箇所」におけるメタ言語表現
9.5 全「話段区分箇所」におけるメタ言語表現の特徴
9.5.1 全「話段区分箇所」におけるメタ言語表現の出現傾向
9.5.2 全「話段区分箇所」におけるメタ言語表現の種類別の出現傾向
9.5.3 「話段区分箇所」におけるスライドの切り替えとメタ言語表現の使用
9.5.4 「話段区分箇所」におけるメタ言語表現・接続表現・フィラーの共起
9.6 談話の多重構造に関するメタ認知の向上を促すメタ言語表現

第10章 日本語教育への提言と今後の課題
10.1 各章で述べてきたことのまとめ
10.2 コミュニケーションのメタ認知の向上を目指す日本語教育
10.3 コミュニケーションのメタ認知の向上を促す学習項目としてのメタ言語表現
10.4 日本語教育学における本書の意義と今後の課題
10.4.1 日本語教育学における本書の意義
10.4.2 今後の課題

参考文献
謝辞
索引

著者略歴

著:李 婷
1980年中国青海省生まれ。
2009年文部科学省国費奨学金で来日し、2011年早稲田大学日本語教育研究科博士後期課程に入学。
2016年から2年間同研究科助手を務め、聖学院大学で非常勤講師として留学生に日本語を教える。
2018年に博士号(日本語教育学)を取得し、日本大学文理学部助教に就任。

主要論文として、「メタ言語表現の「文脈展開機能」」(2013年、『早稲田日本語研究』22)、「メタ言語表現に関する語りから見た日本語学習者の待遇意識」(2018年、『待遇コミュニケーション研究』15)などがある。

ISBN:9784823410215
出版社:ひつじ書房
判型:A5
ページ数:368ページ
定価:7200円(本体)
発行年月日:2020年01月
発売日:2020年02月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:CJBR
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:2GJ