魚の自然誌
光で交信する魚、狩りと体色変化、フグ毒とゾンビ伝説
著:ヘレン・スケールズ
訳:林 裕美子
内容紹介
体の模様・色はなんのためにあるのか、
浮袋が先か肺が先か、
ナマズはハトの捕まえ方をどのように学ぶのか、
群れの中で魚どうしぶつからないのはなぜか、
大きな口で丸呑みする捕食者からいかに逃れるのか、
フグはなぜ自分の毒で中毒しないのか。
世界の海に潜って調査する気鋭の魚類学者が自らの体験をまじえ、
魚の進化・分類の歴史、紫外線ライトで見る不思議な海の世界、
群れ、音、色、狩り、毒、魚の思考力など、
魚にまつわるさまざまな疑問にこたえる。
目次
プロローグ─世界を旅する魚類学者
地球でもっとも成功を収めた生き物
魚をめぐるツアーに出かけよう
私が魚に魅せられた日
魚を眺めるいくつかの方法
世界の海で魚に出会う
chapter1 魚とは何か─魚類学の始まり
魚類学が始まる
16世紀の魚に関する3冊の稀覯(きこう)本
ロンドン王立協会を苦境に立たせた本
魚を分類する
生命の樹の中の魚の枝
[コラム] 海の女神セドナ─イヌイットの伝承
chapter2 深みをのぞく─進化の系統樹をたどる旅
生命の樹で最初に出会う魚のグループ─真骨魚類
ミッシングリンクの探索─魚と両生類をつなぐ生き物
浮袋が先か肺が先か─ハイギョ
どちらが人間に近いのか─シーラカンスvsハイギョ
なぜサメは長寿なのか
顎のない魚の生き残り─ヤツメウナギとヌタウナギ
[コラム] ヒラメが笑顔を失ったわけ─イギリス・マン島、伝承
chapter3 色彩の思わぬ力─体色の意味するもの
体色を獲物の色に似せる戦略
太陽光と深海の赤い魚
同種と闘うための体色
紫外線の効果
銀色の魚が水中で姿を隠す方法
生きた魚を描く
雌はなぜ色鮮やかな雄を好むのか
捕食と体色
濁った水が交尾行動を妨げる
[コラム] 知恵のあるサケ─アイルランド、伝承
chapter4 海のイルミネーション─光を発する魚たち
深海探査の始まり─光る魚たち
青い光の世界へようこそ─バクテリアという相棒
紫外線ライトで見る秘密の落書き
海の中の不思議な赤色の世界
[コラム] オオナマズ─日本、江戸時代
chapter5 群れを解析する─生き残りの戦略
さまざまな推進力
集団で暮らす─縄張りから群れへ
魚の集団を探索する─スワローリーフ
産卵のために集団をつくる魚たち
魚の追跡調査
回遊する魚は大陸の位置も知っている
性転換する魚
巨大魚の昔と今
[コラム] 偉大な王オシリスとエレファントフィッシュ─古代エジプト、今から2400年前
chapter6 魚の食卓─水中で暮らす魚に共通する課題
ハンターとしての魚
海藻農園をつくるスズメダイ
水中の狩りで発達した器官
電気刺激で見る夢の中を泳ぐ魚
食べたら出す
[コラム] もっとも強い毒を持つ魚、バツナゲッダ─アイスランド、16世紀
chapter7 毒を持つ魚─人と魚毒の深い関係
フグはなぜ自分の毒で死なないのか
フグとある女性科学者の冒険
フグと生ける屍─ゾンビ伝説
92歳で水深25メートルのフグの巣を観察
[コラム] 巨大魚チプファラムフラ─モザンビーク、伝承
chapter8 太古の海の魚たち─化石魚から進化をさぐる
性器を持つ最古の魚
生物は絶滅する─舌石(ぜっせき)の教え
サメ類の繁栄
海の生物の構図が変わった白亜紀の大絶滅
[コラム] 海の医者─ペルシャ、8世紀
chapter9 魚のオーケストラ─海は魚たちのたてる音に満ちている
米国海軍と海の中の不明な音
魚の発声の仕組みをさぐる
耳石(じせき)で音を聞く
目が見えなくても位置を知る方法
音をたよりに生活する魚たち
[コラム] 魚と金の靴─中国の唐、9世紀
chapter10 魚の思考力
勝者を好む
魚にだって脳はある
魚の感受性
魚にも福祉を!─アニマルウェルフェア
エピローグ
謝辞
訳者あとがき
章扉イラストの魚種一覧
用語解説
おもな参考文献・注釈
索引