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「僕ら」の「女の子写真」から わたしたちのガーリーフォトへ

著:長島 有里枝

紙版

内容紹介

ボクには理解できるよ、という傲慢な批評を細かく切り刻む鋭利さに痺れた。武田砂鉄

ガーリーってかわいいと思う?
ううん、めちゃくちゃ強くてしなやかでカッコいい。
ほんとは知らなかったたくさんのこと、
無かったことにされてきたかつての女の子たちの抵抗と戦い、
今を生きる私たちにゆりえさんが
誇りと尊厳について投げかけてくれる。
新しい時代の女の子革命のための指南の書!
とにかくただただ話がしたい。
これから私たちがどうやって生きるかについて。
太田莉菜

「当事者から、異議を申し立てます」。
1990 年代に若い女性アーチストによって生まれた写真の潮流—— 同世代の多くの女性に影響を与え、一大「写真ブーム」を巻き起こしたムーブメントは、「女の子写真」と揶揄的に呼ばれた。性別で写真家をくくる「技術的につたない」「半径5メートル以内しかない視野の狭さ」「機械に弱い女性」。そして写真賞受賞者の性差を強調し、女性写真家たちを若さのうちに葬り去ろうとするさまざまな言説を、ジェンダーの視点から検証する。
本書はまた、これまで十分な分析がなされてこなかった1990年代の女性写真家たちがとった「セルフポートレイト」と「ヘアヌード」写真ブームの関係性についての検討を試みる。「ヘアヌード」写真ブームとは、一体何だったのか。撮る側と撮られる側の権力関係に、彼女たちはどう向き合ったのか。木村伊兵衛写真賞受賞作家・長島有里枝がいま世に放つ。

目次

当事者から、異議を申し立てます。
1.ジェンダー規定的な写真カテゴリーはどのように成立可能なのか
2.本書が依拠する分析の方法
3.ジェンダー、セックス、性差について
4.資料選定の方法と、各章の構成

1章 「女の子写真」を振り返る
1.はじめに
2.飯沢耕太郎の「女の子写真」論
3.近年の文献にみる「女の子写真」言説
4.「女の子写真」言説の〝自明性〞を疑う

2章 未熟さと処女性—— 一九九〇年代初頭の「女性写真家」の言説
1.一九九〇年代は「『女の子写真』の時代」なのか
2.木村伊兵衛写真賞選評にみる「女性写真家」の言説
3.男性誌が生み出す「女性写真家」像

3章 レベル・ガールズ、革命のきざし
1.プレ「女の子写真」期における女性写真家の言説
2.若くて、女性で、現役美大生
3.「撮る側」と「撮られる側」の権力関係を攪乱する
4.「セルフヌード」の誕生
5.定まらない「若手女性写真家」像
6.「大人」を喜ばせるためじゃない
7.わたしのカメラはペニスじゃない
8.〝理解ある擁護者〞になりたい「男性」論客たち

4章 「僕ら」のアイコン、ヒロミックスの言説
1.ヒロミックスと「女の子写真」が変える、女性写真家の言説
2.ヒロミックスの登場
3.混同される「写真」と「写真家」
4.ヒロミックスは誰のもの?
5.「女の子」を所有しようとする男性論客の「コンプレックス」
6.〝わたし〞に引き寄せる、林央子の語り
7.飯沢耕太郎の「少女環境と写真の現在」
8.「女の子たち」への先入観と偏見に満ちたまなざし
9.「ヒロミックスが好き」特集の反響
10.論考「声とカメラ」における「女の子写真」の言説

5章 「女の子写真」とミソジニー
1.ジェンダー/セックス/セクシュアリティの混同
2.「女の子写真」の言説に抗う当事者たちの語り
3.「女の子写真」言説の影響力
4.「僕ら」に抗う「ガーリー」の言説
5.「もちあげもてはやす」という抑圧
6.現代美術の文脈における「女の子写真」言説
7.女性誌の写真特集にみる「女の子写真」への抵抗

6章 ガーリーフォトと木村伊兵衛写真賞
1.「女の子写真」からガーリーフォトへ
2.「女の子」の言説に対する批評性の欠如
3.「私」における性差、歴史的差異への無関心
4.「女の子写真」言説への反論
5.一人歩きする「女の子写真」
6.カテゴリー名を変えても解決しないこと

7章 なぜ「女の子写真」ではいけないのか
1.『「女の子写真」の時代』における「女の子写真」の言説
2.言語〝以前〞の領域に押しやられる「女性アーティスト」論
3.《女性原理》と《男性原理》
4.宮迫の理論における問題点

8章 「ヘアヌード」写真ブームへの異議申し立て
1.「女の子写真」の論客が語らなかった二つの背景
2.ヘアヌード写真ブームとはなんだったのか
3.「ヘアヌード」に対する女性誌の反応
4.男性写真家の〝闘争〞に利用される女性の身体
5.女性たちにとっての「ヘアヌード」写真ブーム

9章 ガーリーフォト、新しいフェミニズム
1.「ガーリーフォト」と第三波フェミニズム
2.林央子と松谷創一郎の「ガーリー」、「ガーリーフォト」論
3.ガーリー・カルチャーと「乙女」文化
4.第三波フェミニズム
5.〝 every girl is a riot grrrl〞 (すべての女の子はライオット・ガール)
6.ライオット・ガールの女性的表象とメディアイメージ

10章 自分のために「声」をあげる
おわりに

著者略歴

著:長島 有里枝
1973年、東京都生まれ。1993年、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン 学科在学中に「アーバナート#2」でパルコ賞を受賞しデビュー。 1999年カリフォルニア芸術大学 Master of Fine Arts 写真専攻修了。 2001年『PASTIME PARADISE』で第26回木村伊兵衛写真賞受賞。 2010年、短編集『背中の記憶』で第23回三島由紀夫賞候補、第 26 回講談社エッセイ賞受賞。2015年武蔵大学人文科学研究科社会学専 攻前期博士課程修了。早稲田大学、東京大学などで写真を教えながら、 ジャンルの枠を超えた表現活動を行なっている。

ISBN:9784908465116
出版社:大福書林
判型:4-6
ページ数:412ページ
定価:3300円(本体)
発行年月日:2020年01月
発売日:2020年01月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:WFA
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:AJ