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岩波新書 新赤版1818

レバノンから来た能楽師の妻

著:梅若 マドレーヌ
訳:竹内 要江

紙版

内容紹介

祖国の内戦を逃れ来日した女子高校生が若き能楽師と出会う。コンピュータサイエンスの博士号を捨て、閉ざされた伝統芸能の世界に入る彼女を待ち受けていた試練とは。能の魅力を妻兼マネージャーとして国内外に発信し再び世界を駆け巡る傍ら、子育てや母を日本に呼び寄せての介護に奔走する。異文化理解の架け橋となったある女性の記録。

目次

プロローグ――この世界の片隅で

第1章 レバノンとの別れ
 1 ベイルートと家族
  子ども時代/父,エドゥアール・アブデル・ジャリル/記憶の劇場/母,ジャネット・アビ・ナジェム
 2 内戦下の暮らし
  引っ越しに次ぐ引っ越し/家族と離れて
 3 若き能楽師との出会い
  姉,マリーローズの結婚/猶彦との出会い/帰国,そしてイギリスの大学へ/ベイルートに戻る/ふたたび日本へ/猶彦との再会/梅若一族との対面,そして結婚

第2章 能との出会い
 1 求められる伝統と使命
  能に魅了される/猶彦と能/父,猶義の影響
 2 「和」を乱す変化
  能の世界のしきたりとわたしたち夫婦/能を外国人へアピール/日本人にも能を
 3 能の舞台裏
  夫婦間の距離/「昔の人」/舞台上に見えているものと見えないもの

第3章 梅若家の子育て
 1 能楽師の子どもたち
  子どもを授かる/命名/能の稽古
 2 異文化のなかでの教育
  日本語の習得/イギリスでの学園生活/東京からも能からも離れて
 3 アイデンティティを探し求めて
  日本への帰国/帰国子女のとまどい/「どうしてぼくのお父さんは日本人なの?」/バイカルチュラルの子どもたちの研究と学校探し/順応に苦しむ息子/忘れられないエイプリルフール

第4章 能と世界をつなぐ
 1 新風を吹き込む
  梅若実による再興/能を伝えた外国人たち/新作能という戦略/バチカン宮殿への道/能を売り込むプロデューサーの仕事
 2 転 機
  一本の電話/桜と能/海外への同行の楽しみ/ボーデン湖畔での『屋島(弓流素働)』/『リア』での共演/猶彦の前衛演劇
 3 「彼女がわたしの上司です」
  能に反映されるわたしの声/努力が報われるとき

エピローグ――レバノンと日本で母と共に暮らす
  テータ(おばあちゃん)/母の病気のはじまり/レバノンでの生活/レバノンのアートシーン/母の最後の来日/幸運なできごと/心温まる異文化コミュニケーション

おわりに

著者略歴

著:梅若 マドレーヌ
梅若マドレーヌ(うめわか まどれーぬ)
レバノン,ベイルート生まれ.英国レディング大学でコンピュータ・サイエンスを学び,優等の成績で理学士の学位を取得.大阪大学大学院情報工学科入学中退,その後,東京大学大学院情報科学研究科(研究生)で研究を続ける.日本や世界各地で新作も含んだ能の舞台公演のプロデュースにかかわり,能の普及につとめる.レバノン国内の活発な芸術文化活動を取り上げたドキュメンタリー映画『明日になれば』ではプロデューサーを務め,同作品は2015年にレバノン文化省より文化推進功労賞を贈られた.
訳:竹内 要江
竹内要江(たけうち としえ)
翻訳家.南山大学外国語学部英米学科卒業,東京大学大学院総合文化研究科(比較文学比較文化)修士課程修了.訳書に中濵ひびき『アップルと月の光とテイラーの選択』(小学館),ゲイル・サルツ『脳の配線と才能の偏り』(パンローリング)他.

ISBN:9784004318187
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:222ページ
定価:780円(本体)
発行年月日:2019年12月
発売日:2019年12月23日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DNB