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パステルナーク事件と戦後日本

ドクトルジバゴの受難と栄光

著:陶山 幾朗

紙版

内容紹介

かつて日本の文壇を揺るがした「パステルナーク事件」という騒動があった。それは、1958年度ノーベル文学賞がソ連の作家パステルナークに授与されたとの一報から始まった。
それから60年。日本の文学者・知識人たちが無自覚のうちに巻き込まれた、この忘れられた”協奏曲”の真実に、初めて本書が迫る。

目次

序 章 発端 ──1958年10月23日 9

第1章 祝福から迫害へ──1958年10月23日〜11月6日 25
「文学的原子爆弾」? 唸る迫害マシン 「敗北の中の勝利」か? 

第2章 「事件」前史 ──1956〜58年 57
〝雪解け〟という追い風 運命の日──1957年5月 原稿、国外へ 不毛なる暗闘──ソ連vsイタリア

第3章 日本語版『ドクトル・ジバゴ』狂騒曲 79
翻訳まで──日本語版の不幸な出発 「2万部」から「23万部」へ 日本ペンクラブの奇妙な「申合せ」

第4章 糾弾者エドワード・サイデンステッカー 103
〝米・英・独連合〟の成立 「文化帝国主義者」サイデンステッカー 雨と雲と花と

第5章 「文士」と政治 ── 高見順(1) 127
高見順の怒り 「曖昧」の向こう側 文士、政治に近寄らず

第6章 「怖れ」と「美化」と──高見順(2) 149
文士もすなる政治 ソ連招待旅行──「人間に会いにゆく」 「怖れ」と「美化」と

第7章 「モスクワ芸術座」という事件 169
来た 観た 感動した! 浅利慶太の批判 「国禁芸術」と「国策芸術」

第8章 《害虫》のポリティクス 197
「おちつかない老年」再考 パステルナークという「雑草」 「屑」の英雄化における労働の役割

第9章 〝ワルプルギスの夜〟の闇 225
1948年8月、ソビエト農業科学アカデミー総会 〝旋風〟日本に上陸す 八杉龍一vs木原均

第10章 『真昼の暗黒』の来日 ──アーサー・ケストラー(1) 251
「ノー・モア・ポリティクス」を宣言 〝私は出席できません〟──ケストラー 〝最大の侮辱だ〟──高見順

第11章 「目に見えぬ文字」への道程 ──アーサー・ケストラー(2) 279
岐路における言葉 永遠の「党」──『真昼の暗黒』 汝、誠実さのかけらを有するならば──『目に見えぬ文字』

第12章 〝勝利〟の儀式?──第3回ソビエト作家大会(1) 301
〝詩人殺し〟のあとで 「新しい人間」とは誰か 『ドクトル・ジバゴ』はなぜ有罪か

第13章 クレムリン宮殿の中野重治 ──第3回ソビエト作家大会(2) 325
「くつろいでいられる国」 清潔な人、清潔な国 フルシチョフに屈する中野重治

終 章 「事件」の終わり ──かくて人びとは去り…… 355
〝辞退表明〟以後  ボリス・パステルナーク  ニキータ・フルシチョフ  高見順  平林たい子
ジャンジャコモ・フェルトリネッリ アーサー・ケストラー エドワード・G・サイデンステッカー

補 遺 399
わが国メディアに現われた「パステルナーク事件」関連論評(1958〜1967) 400
「パステルナーク事件」関連年表 405
跋 天上のことばを、地上にあって 工藤正廣 414
あとがき 425

*本書において引用したパステルナークの詩は工藤正廣氏の翻訳によった。

著者略歴

著:陶山 幾朗
1940年生まれ。1965年早稲田大学第一文学部卒。著書に『シベリアの思想家ー内村剛介とソルジェニーツィン』(風琳堂)、『内村剛介ロングインタビュー』(恵雅堂出版)、『現代思潮社という閃光』(現代思潮社)、編集『内村剛介著作集』全七巻(恵雅堂出版)。
雑誌『VAV』同人。
2018年11月2日 急逝(78歳)

ISBN:9784874300589
出版社:恵雅堂出版
判型:4-6
ページ数:432ページ
価格:3000円(本体)
発行年月日:2019年11月
発売日:2019年11月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB