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NHK出版新書 607

証言 治安維持法

「検挙者10万人の記録」が明かす真実

著:NHK「ETV特集」取材班
監:荻野 富士夫

紙版

内容紹介

自由はこうして奪われた――。
体験者の生々しい肉声から、20年におよぶ運用実態に迫る。
地域・年代別に検挙者数の推移をまとめた「ETV特集」が書籍化!

大正末期の1925年に制定された治安維持法。当初は「国体の変革」や「私有財産制度の否認」を目的とする結社―主に共産党を取締り対象としていたが、終戦の年に廃止されるまで運用対象は一般の市民にまで拡大された。
ふつうに暮らすふつうの人々が次々に検挙されたのはなぜか。当事者や遺族の生々しい証言と、公文書に記載された検挙者数のデータから、治安維持法が運用された20年間を検証する。
NHK ETV特集「自由はこうして奪われた~治安維持法 10万人の記録~」の書籍化。


 まず序章で、現在も声を上げ続けている検挙者の証言を入り口に、治安維持法がどのような目的で作られたのか、成立の経緯を概観する。途中、歴史的な記述が続く部分は、同法の成り立ちを理解するために必要と考え、やや詳しく書いたが、証言を中心に読んでいきたい読者は第一章から読み進め、必要に応じて序章に戻っていただいてもいいだろう。
 第一章から第五章では、法律が運用された二十年間の検挙者数のデータを分析して特徴的な変化を示す時期や地域を各章ごとに絞り込み、当時の出来事を、該当する証言者のエピソードを通して描いていく。同時に、証言者たちがなぜ検挙されたのか、時代的な背景や法律の運用状況を専門家の見解を交えながら検証する。
 第六章では、治安維持法をはじめとする戦前・戦中の治安体制と戦後の治安体制の連続性について検証し、終章では本書に登場した証言者たちの戦後の歩みを見ていく。
 書籍化にあたり、番組内で紹介することができなかった当事者の証言やエピソードをできるだけ織り込むよう心がけた。
 戦後七十四年が経過したいま、当時を知る方々から話を聞くことはますます難しくなっている。しかし時代が遠ざかれば遠ざかるほど、実際に出来事を体験した人の生身の感覚こそが重要性を増していくのではないだろうか。さらに強調しておきたいのは、今回取材に応じてくれた証言者の誰もが、治安維持法は遠い昔の無関係な法律ではなく、その時代を知らない私たちにも重要な示唆を与えるものと考えていたことだ。
 本書がかつて存在した治安維持法と、この法律によって人生を変えられた多くの人の声の一端を伝え、これからの社会を考えるための一助となることを願っている。(「はじめに」より)

目次

序 章 声を上げ続ける検挙者たち
第一章 拷問された少女と一人の特高――三・一五事件
第二章 ある青年教師の追放――二・四事件
第三章 転向させられた人々
第四章 言葉を守ろうとした兄――植民地での運用実態
第五章 絵を描いて有罪となった学生――生活図画教育事件
第六章 終戦 治安維持法はなくなったのか
終 章 それぞれの戦後

著者略歴

著:NHK「ETV特集」取材班
1925年から20年間にわたって運用された治安維持法。公文書から抽出した検挙者数のデータを基に、その運用実態を検証し、ETV特集「自由はこうして奪われた~治安維持法 10万人の記録~」を制作した。
監:荻野 富士夫
1953年生まれ。小樽商科大学名誉教授。専攻は日本近現代史。『特高警察』『思想検事』(岩波新書)、『よみがえる戦時体制』(集英社新書)、『治安維持法関係資料集』(新日本出版社)など編著書多数。

ISBN:9784140886076
出版社:NHK出版
判型:新書
ページ数:272ページ
定価:900円(本体)
発行年月日:2019年11月
発売日:2019年11月08日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LNF