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箱庭療法学モノグラフ 10

「見る」意識と「眺める」意識

心理療法という営みの本質を考える

著:上田 琢哉

紙版

内容紹介

現代人が直面している心理的問題は、「知ること」すなわち「分離し、はっきりさせる」働きを本質とする意識への偏りから来ている。本書は「見る」と「眺める」という枠組みを用いて、意識というものの多様な働きを考察。事例研究を通して「眺める」意識という、従来の意識のパラダイムから見ると未発達で曖昧で力弱いものと考えられてきた意識のもつ心理臨床的意義について明らかにし、新しい意識のあり方の可能性を探る。

目次

序章 はじめに


第1章 「見る」意識と「眺める」意識
 1.1 意識の本質的機能
 1.2 意識の基本形態としての「見る」意識
 1.3 「眺める」意識とは何か
 1.4 ものとこと
 1.5 観の目と「眺める」意識
 1.6 あきらめと「眺める」意識

第2章 和歌の中の「眺め」
 2.1 『古今和歌集』から『新古今和歌集』に至る「眺め」
 2.2 「眺め」と「あくがれ」
 2.3 〈あちら〉の世界へのかかわり方としての「眺め」
 2.4 「眺め」は他者の心を動かすことによってはじめて完結する

第3章 石と「眺める」意識
 3.1 日本人にとっての石
 3.2 置かれた石と「眺める」意識
 3.3 物語の中の石と「眺める」意識
 3.4 まとめ

第4章 事例1
 4.1 事例の概要
 4.2 面接経過
 4.3 考察
  4.3.1 永遠の少年元型について
  4.3.2 〈母なるもの〉からの自立と「見る」意識の確立
  4.3.3 「見る」意識の強調とその行き詰まり
  4.3.4 「眺める」意識の獲得
 4.4 事例1のまとめ

第5章 事例2
 5.1 事例の概要
 5.2 面接経過
 5.3 考察
  5.3.1 中年期危機について
  5.3.2 「老」の意識と「眺める」意識
  5.3.3 二人で月を「眺める」こと
  5.3.4 〈あちら〉の世界を「眺める」こと
 5.4 事例2のまとめ

第6章 心理療法という営みと「眺める」意識
 6.1 意識の偏りを補うものとしての「眺める」意識
  6.1.1 「見る」意識に対する「眺める」意識
  6.1.2 Jung, C. G. の「補償」との異同
 6.2 セラピストの治療的態度としての「眺める」意識
  6.2.1 訴えを「眺める」こと
  6.2.2 ともに「眺める」こと
  6.2.3 「眺める」意識と治療者のエピメテウス性

終章 結びにかえて


引用文献
人名索引
事項索引
初出一覧
あとがき

ISBN:9784422114804
出版社:創元社
判型:A5
ページ数:168ページ
定価:3600円(本体)
発行年月日:2019年11月
発売日:2019年11月18日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MKM