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平凡社新書 924

日本人は本当に無宗教なのか

著:礫川 全次

紙版

内容紹介

日本人は「無宗教」と言われるが、本当にそうか。
かつての日本では、宗教と習俗とが補完し合う形で
人々の心を支え、社会や共同体を支えていた。
ある時期まで、日本人は十分に「宗教的」だった。
では、いつから日本人はいつから無宗教になったのか。
どうして無宗教になったのだろうか。
日本人の間に「無宗教」が生じた時期、
その背景について歴史民俗学的考察を試みる。

目次

《目次》
はじめに
第一章 かつての日本人は宗教的だった
『今昔物語』に見る日本人の冥途観/鎌倉新仏教と武士
ザビエルの手紙に書かれた日本人信者の悩み/「妙好人」に見られる宗教的発想
日本人の親切心と宗教心

第二章 近世における「反宗教」と「脱宗教」
一向宗はなぜ民衆の支持を集めたのか/キリスト教に対する権力の恐怖と憎悪
進んで支配体制に加わった仏教/近世の武士における反宗教的感情
心学は町人が生んだ脱宗教的学問

第三章 本居宣長と平田篤胤の思想
本居宣長と上田秋成の「論争」/「優れた国柄世界が仰ぐ」
本居宣長の皇国思想は宗教か/「宗教か否か」の基準/平田篤胤は「大山師」か
キリスト教神学を学んだ平田篤胤/平田篤胤の復古神道について

第四章 幕末に生じた宗教上の出来事
水戸学とは何か/水戸光圀の宗教政策/アフリカで仏教に幻滅した外国奉行
「国家安全祈願」という宗教行事/「奉幣使」の再興と排仏思想
「キリシタン再発見」という事件/つくられた宗教現象「ええじゃないか」

第五章 明治政府は宗教をいかに扱ったか
民衆はなぜ寺院や仏像を破却したのか/廃仏毀釈を支えた「来世より現世」
「浦上四番崩れ」に発展したキリシタン再発見
浦上キリシタンへの弾圧はなぜ中止されたか/物議を醸した「グナイスト談話」
「耶蘇教を仏教に改むべし」/シュタインの講義を受けた保守派のふたり
明治政府に採用されたシュタインの宗教政策
シュタインは神道を「宗教」と捉えていたのか/伊藤博文が「国家の機軸」に置いた皇室
皇室の藩屛としての華族

第六章 明治期における宗教論と道徳論
オールコックによる日本の宗教論/欧米諸国が問題視した日本の宗教的不寛容
日本人の無宗教について論じた福地桜痴/「日本国の道徳」を説いた西村茂樹
宗教と道徳に関する井上哲次郎の講話/織田萬の「神道非宗教論」

第七章 昭和前期の宗教弾圧と習俗への干渉
明治における盆踊り禁止令/乃木希典はなぜ盆踊り禁止に抵抗したのか
井上哲次郎の筆禍事件/井上が暴漢に襲われた理由/「ひとのみち」教団に対する弾圧
「ひとのみち」はなぜエロ宗教と呼ばれたのか/戸坂潤の「ひとのみち事件批判」
「疑似宗教国家」への転化/戦中における結婚問題/「結婚報国」というスローガン

終章 改めて日本人の「無宗教」とは
「宗教」と「性」の関係/宗教と習俗の共存関係/バテレン追放令とその発想
安定した宗教的環境の破綻/日本人の「無宗教」を成り立たせているもの
日本人はなぜ「無宗教」になったのか

あとがき
参考文献

著者略歴

著:礫川 全次
1949年生まれ。在野史家、歴史民俗学研究会代表。著書に『サンカと三角寛』『知られざる福沢諭吉』『アウトローの近代史』『日本人はいつから働きすぎになったのか』(いずれも平凡社新書)、『隠語の民俗学』『異端の民俗学』(いずれも河出書房新社)、『サンカと説教強盗』(河出文庫)、『史疑 幻の家康論』『大津事件と明治天皇』『日本保守思想のアポリア』(いずれも批評社)、『独学で歴史家になる方法』(日本実業出版社)、編著書に『タブーに挑む民俗学──中山太郎土俗学エッセイ集成』(河出書房新社)などがある。

ISBN:9784582859249
出版社:平凡社
判型:新書
ページ数:240ページ
定価:840円(本体)
発行年月日:2019年10月
発売日:2019年10月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QRAX