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森有正との対話の試み

著:鑪 幹八郎

紙版

内容紹介

哲学者森有正と心理臨床家との対話の試みである。森の生きた道程に分け入り「経験の哲学」と心理療法との関係を糸口に思索に迫る。

目次

序文

第一章 森有正の生涯と家族
 森有正の成育史年表
 森の家系について
 森有礼の結婚
 名前の問題
 森有礼の暗殺
 森有正の父、森明
 父・明と有正
 母・保子
 森有正の学童期から青年期
 森の結核
 東京大学での生活
 結婚
 パリへの留学
 東京大学助教授の森
 フランスへ
 パリ永住の決意
 日本文学史の教育の開始
 娘・聡子との生活
 『バビロンの流れのほとりにて』(一九五七年)の出版
 日本への公式な出張による帰国と執筆の再開
 森の晩年

第二章 森有正がパリに留まる契機について
 パリに留まる無謀な決意
『バビロンの流れのほとりにて』の出版
 森の直観とパリに留まること
 辻邦生の『森有正―感覚のめざすもの』
 フランス留学と惧れ
 裸にされる不安
 詐術性と真正なもの
 森の決意
「本物の自己」と「偽りの自己」
 輸入文化ということ
 レオナール・フジタ(藤田嗣治)
 文化の力

第三章 『バビロンの流れのほとりにて』とアイデンティティ
 エッセーの意味
 森の覚醒
 変化の動機、「不安・恐怖体験」とデソラシオン・コンソラシオン
 内的な変化
 パリに立ち留まる理由
 森の内的な動揺・ヌミノース体験
 精神分析の訓練の体験
 高田博厚
 椎名其二
 受動性と主動性

第四章 森の執筆のスタイル・文体
 第一の手法の特徴:対話としての「書簡」のスタイル
 第二の手法の特徴:日記スタイルの選択
 第三の方法:教会の建物の構造など、「もの」の詳細観察

第五章 教会の観察について:「もの」に直接に出会うこと
 ピザの教会への訪問
 サン・ドニ教会への訪問

第六章 森の音楽修行と私の心理療法の訓練〈対話篇〉
 森の音楽修行についての洞察
 森の記述
 「もの」ということ
 幼児期の意義と被影響性

第七章 森のひととなり
 多面的な森
 表層的対人関係のこころの層
 時間感覚
 恥ずかしさ、対人的感覚
 日常生活の困難
 丸山眞男の例
 井上究一郎の例
 対人関係と内的洞察の解離
 神格化された森
 高田博厚との出会い
 森の対人関係の三層構造

第八章 母性思慕・イメージと女性関係
 最初の結婚
 女性イメージの原型
 谷崎潤一郎の小説から
 「母の背中をさする夢」
 母思慕の主題
 母の社会的閉じこもり
 妹、関屋綾子
 フランス女性について
 ディアーヌ・ドゥリアーズ
 栃折久美子
 朝吹登水子
 森との出会い

第九章 日本語における二項関係
 二項関係とは
 二項関係:日本語に関する哲学的考察
 二項関係とアモルファス自我構造
 二項関係と「世間」
 高田に会って後の森の苦悩
 対話者としての森有正

第十章 経験の哲学という世界
 「偽りの自分」と「本物の自分」
 人格の二重性
 経験と自己組織化
 自己分析の可能性
 自己分析の制約
 森による「経験」の定義
 経験することと時間

追記 森有正のノートル・ダム・ドゥ・パリ大聖堂との心の距離
   ―2019年4月15日~16日の火災のショックな報に接して―

あとがき

参考図書一覧

索引

著者略歴

著:鑪 幹八郎
京都文教大学学長,日本心理臨床学会前理事長。
昭和37年、京都大学大学院博士課程修了。
著書:『心理臨床家の手引』(共編、誠信書房、1983年)、『アイデンティティの心理学』(講談社、1990年)、シリーズ『アイデンティティ研究の展望』(ナカニシヤ出版、1984年?)、ほか多数。

ISBN:9784779514067
出版社:ナカニシヤ出版
判型:A5
ページ数:268ページ
定価:3500円(本体)
発行年月日:2019年10月
発売日:2019年10月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDHC
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ