NHK出版新書 600
日本語と論理
哲学者、その謎に挑む
著:飯田 隆
内容紹介
日本語は本当に非論理的な言語なのか?
なぜ「多くのこども」と「こどもの多く」は違う意味になるのか? なぜケーキを三個「食べてよい」は「以上」で、「食べなくてはならない」は「以下」を意味するのか? 「三人の男」ではなく「三冊の男」で意味が通じる理由は? オスは卵を産めないのに「ペンギンは卵を産む」と言えるのはなぜか?ありふれた日常の表現に潜む奥深い「謎」に、言語哲学の大家が満を持して挑む。通巻600号にふさわしい前代未聞の一冊!
第1章 「こどもが笑った」
第2章 「三人のこどもが笑った」
第3章 「大部分のこどもが笑った」
第4章 「どのこどもも笑った」
第5章 「こどもはよく笑う」全称文と総称文
付録 様相的文脈の中の「三人のこども」
目次
まえがき
第1章 「こどもが笑った」
日本語は非論理的か
特定のこどもを指す「こども」と不特定のこどもを指す「こども」
「いる/ある」の三つの意味
確定的用法と不確定的用法を見分ける方法
日本語の名詞に「可算/不可算」の区別はあるか
助数辞には三種類ある
「三冊分」「三箱分」「三キロ分」
可算名詞とは分類辞を取る名詞である
分類辞の意味上の役割
可算名詞の不可算的用法
不可算名詞の可算化
「つ」について
日本語に可算名詞はあるが、単数/複数の区別はない
単数と複数を区別しない言語にも論理は適用できる
複数表現の論理への二つのアプローチ
この章のまとめ
第2章 「三人のこどもが笑った」
数量名詞と量化
比例的な量化と比例的でない量化
「三人」は複数述語である
「三人のこども」「こども三人」「こどもが三人」
「三人のこども」は、何人のこどもを指すのか
「三人のこども」はやはり、ちょうど三人のこどもを指すのではないか
数と様相
結局「三人のこども」は何人のこどもを指すのか
「三人以上のこども」
「三人以下のこども」
「多数のこども」と「少数のこども」
不可算量化の場合
この章のまとめ
第3章 「大部分のこどもが笑った」
比例的な数量名詞
「多数のこども」と「こどもの多数」
「大部分」は二項の述語である
「の」の意味論(1)───性質を導入する「の」
「の」の意味論(2)───関係項を表示する「の」
「こどもの大部分」の「の」と「大部分のこども」の「の」
「こどもの大部分」の「こども」は複数確定記述である
「大部分のこども」の「こども」は?
「三割のこども」
「三割以上」「三割未満」
「一部」「半数」「半分」「大多数」「大部分」「全部」
多重量化と分配性・集合性
不可算量化の場合
この章のまとめ
第4章 「どのこどもも笑った」
不定詞による量化
なぜ可算の量化になるのか
「こそあど」と最小要素への限定
不可算の量化が不定詞にない理由
量化の「も」と取り立ての「も」
指示詞と付値
存在前提の問題
「全称命題」と存在前提
「か」の意味論
不定詞による多重量化
不定詞量化と数量名詞量化───二つのパターン
不定詞量化と数量名詞量化───第三のパターン
疑問文の意味論
セルと分割
疑問と量化
この章のまとめ
第5章 「こどもはよく笑う」全称文と総称文
総称文の謎
総称文は悪用されやすい
なぜ全称文と総称文が混同されるのか
論理学の罪?
総称文の意味論と日本語
事象文の意味論
事象文の意味論はどこまで一般化できるか
個体の属性文
属性文と時制
属性文としての総称文
日本語と論理学
この章のまとめ
付録 様相的文脈の中の「三人のこども」
必然性タイプの場合
可能性タイプの場合
マクロな言語理解とミクロな言語理解
あとがき
参照文献
索引