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NHK出版新書 598

誰も知らないレオナルド・ダ・ヴィンチ

著:斎藤 泰弘

紙版

内容紹介

自筆ノートから見えてくる「天才画家」の正体──

芸術家であり、軍事技師であり、幾何学者であり、解剖学者であり、天文学者であった「世紀の偉人」が、本当になりたかったもの─それは「水」の研究者であり、アルキメデスだった! レオナルドの「手稿」(自筆ノート)研究の第一人者が、図像と鏡文字(左右反転させた文字)の読み解きから、天才画家の知られざる素顔を描き出す!

第1章 アルキメデスになりたかった男──天才の壮年期の肖像
第2章 水を操る軍事技師──わが友マキアヴェッリと共に
第3章 芸術とは「優美さ」である──ミケランジェロとの闘い
第4章 人間は鳥になれるか──飛行機械への欲求
第5章 《岩窟の聖母》は、なぜ二点あるのか 1──ロンドン版 「聖母」の戸惑い
第6章 《岩窟の聖母》は、なぜ二点あるのか 2──ルーヴル版 「天使」と「幼児」は誰か
第7章 生命の神秘なる世界──霊魂創造説か、自然発生説か
第8章 宇宙の真理を解き明かせ──太陽は「動かない」
第9章 幾何学こそが科学である──「霊的なもの」の正体
第10章 手稿だけが知っている真実──なぜ科学的成果は消されたか

目次

    はじめに

第1章 アルキメデスになりたかった男
    ──天才の壮年期の肖像
    一五〇〇年、フィレンツェ凱旋/素描こそが芸術の本質
    芸術家以上の何者か/絵を描かない大画家

第2章 水を操る軍事技師
    ──わが友マキアヴェッリと共に
    二人を結びつけた戦争/共通する「水攻め」のアイデア
    破滅から救われるのは「野蛮人」だけ?/レオナルドの力学世界
    水への愛着と恐怖心/マキアヴェッリの「美徳」とは?
    近代に橋渡しをした科学者/アルノ川変更計画
    その意気やよしか? 人間の愚かな自惚れか?
    
    間奏曲(インテルメッゾ)1 海峡を跨ぐ「夢の石橋」

第3章 芸術とは「優美さ」である
    ──ミケランジェロとの闘い
    クヮトロチェントからチンクェチェントへ/並び立つ新旧の両雄
    この独創的な文章を見よ/《アンギアーリの戦い》の恐るべき迫力
    またも失敗に終わった名画/そして、ライバルの絵も中断した
    本当にフィレンツェ人というのは……

第4章 人間は鳥になれるか
    ──飛行機械への欲求
    ルネサンス文化の中心地フィレンツェ/たたき上げの職人たちの批判
    鳥のように空を飛んでみたい?/革新的な前期の飛行機械
    「羽ばたき」から「滑空」へ/失敗、しかし飽くなき探究心

第5章 《岩窟の聖母》は、なぜ二点あるのか 1
    ──ロンドン版 「聖母」の戸惑い
    ダ・ヴィンチ最大の謎/ルーヴル版を先発とする二つの仮説
    不当なすり替えはありえない/ロンドン版が先発だ!
    《幼子の礼拝》の図像は何を物語るか/《岩窟の聖母》との類似点と相違点
    聖母の左手の仕草は何を意味するのか/聖母の戸惑いと苦悶

第6章 《岩窟の聖母》は、なぜ二点あるのか 2
    ──ルーヴル版 「天使」と「幼児」は誰か
    《聖母の無原罪の宿り》という教義/可能、適切、そして実
    無原罪の聖母のさまざまな図像/ルーヴル版は異常な宗教画
    指差す天使、その正体は……/合掌する幼児は聖ヨハネなのか
    ルイ一二世の離婚した妻/ルーヴル版についてのわたしの仮説
    わたしの仮説を裏付けてくれるもの

    間奏曲(インテルメッゾ)2 《サルヴァトール・ムンディ》は、本当にレオナルド作か?

第7章 生命の神秘なる世界
    ──霊魂創造説か、自然発生説か
    画家になるには科学を学べ/画家から解剖学者へ
    心臓の微細な孔と「生命精気」/「部分的な死」と「全体の死」が放つ臭気
    至高の真理には手を触れず/「生命を尊重しない者は生きるに値しない」

第8章 宇宙の真理を解き明かせ
    ──太陽は「動かない」
    『天上界と地上界について』を読む/アリストテレスの宇宙観に物申す
    月が光り輝くわけ/地球は宇宙の中心ではない
    コペルニクスに先立つ「地動説」?/アフォリズムの真意

第9章 幾何学こそが科学である
    ──「霊的なもの」の正体
    魔術師、あるいは異端の研究者か?/「自然の人間化」と「人間の自然化」
    人間の破滅にあこがれる本能/錬金術は科学ではない
    魔術、そして占星術は……/生命体アナロジー理論の破綻
    美徳を磨き、知識を手に入れる

第10章 手稿だけが知っている真実
    ──なぜ科学的成果は消されたか
    科学的成果を「発信」しなかった理由/稀代の哲学者として名声を博す
    手稿から見る宗教観/「罪のない動物」とは誰のことか?
    そして臨終の場面はこう描かれた

    おわりに
    文献目録

著者略歴

著:斎藤 泰弘
1946年福島県生まれ。京都大学名誉教授。78年京都大学大学院文学研究科博士課程修了。京都産業大学助教授、京都大学助教授、同大学大学院文学研究科教授等を歴任。専攻はイタリア文学、イタリア演劇。『鳥の飛翔に関する手稿』(谷一郎、小野健一と共著)で第3回マルコ・ポーロ賞受賞。著書に『レオナルド・ダ・ヴィンチの謎─天才の素顔』(岩波書店)、『ダ・ヴィンチ絵画の謎』(中公新書)。レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿の翻訳多数。

ISBN:9784140885987
出版社:NHK出版
判型:新書
ページ数:280ページ
定価:1100円(本体)
発行年月日:2019年09月
発売日:2019年09月09日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AGA