ぼくはヒドリと書いた。宮沢賢治
著:山折 哲雄
著:綱澤 満昭
紙版
内容紹介
それは一つの論文から始まった。
なぜ︑最後の手帳が公開されても、「ヒデリ」は「ヒドリ」に訂正されることはなかったのか。手帳に記された「ヒドリ」の文字を高村光太郎はなぜ、「ヒデリ」と墨書したのか。手帳のなかから取り出された「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」は作者の意図とは無関係に日本で最も有名な詩の一つとして世界中を独り歩きしている。
果たして「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」の前後に書かれた曼荼羅とこの詩を切り離したことは正しかったのか。そして、本当に愛した人は誰だったのか。
我々は議論しなくてはならない。宮沢賢治が生きていたら、もしかすると今日、「ヒデリ」と伝えられているこのことを「ぼくはヒドリと書いた」と明確に否定するに違いないからだ。
目次
第1章 手帳の中の「雨ニモマケズ」の真実
◉「ヒドリ」と「ヒデリ」をめぐる和田文雄氏の論文から
◉高村光太郎の墨書のナゾと罪業意識
◉切り離された宗教と文学
◉方言を手がかりに
第2章 賢治が愛した人々
◉賢治のセクシャリティと保阪嘉内
◉重なる悲恋、妹トシの自省録
◉斎藤宗次郎とデクノボー論
第3章 賢治と「農」の関係
◉「東北」という背景
◉賢治は農本主義者か
◉山男・縄文・童子・鬼
第4章 最後をどう生きるか
◉雪や雨と同じだと言った賢治の戦争観
◉いのちと向き合い最後に行き着く法華経