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岩波新書 新赤版1790

生きのびるマンション

〈二つの老い〉をこえて

著:山岡 淳一郎

紙版

内容紹介

建物の欠陥、修繕積立金をめぐるトラブル、維持管理ノウハウのないタワマン……。難題山積のなか、住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」がマンションを直撃している。廃墟化したマンションが出現する一方、住民たちの努力でコミュニティを作り、資産価値を高めた例も。何が明暗を分けたのか。豊富な取材例から考える。

目次

まえがき

第一章 何が「スラム」と「楽園」を分けるのか
 認知症と管理組合/「新築・売り抜け」と空き家の増加/七年がかりで空室状態の相続住居を処分/廃墟マンション解体の苦悩/銃弾,不審火,変死体……スラム化の実態/管理組合の役割と「談合・リベート」問題/鎌倉の老朽マンションが「楽園」に/「マンション管理条例」の広がり/スクラップ&ビルド推進の政策潮流/現実とかけ離れた建て替え誘導策/第三者管理者方式の限界

第二章 大規模修繕の闇と光
 掠め取られる修繕積立金/「あなた,責任とれるのですか」談合・リベートのからくり/「営業協力費」「情報提供料」名目でキックバック/管理組合理事に「内容証明」を送りつけた建築設計事務所/管理組合が悪質コンサルタントを撃退/談合・リベートとの決別を宣言したが……/「何でもあり」だった改修業界/国交省調査の大規模修繕「相場」は高いか,安いか/公募「条件」による業者選定の是非を問う/目覚めた管理組合,「現地調査」と「質疑」で業者を選ぶ/結局は「人」,現場代理人がキーパーソン

第三章 欠陥マンション建て替えの功罪
 建物の不具合が法的な「瑕疵」か見極める/横浜の傾斜マンション,報道で三井不動産が態度一変/発覚までの管理組合と三井の紆余曲折/住民が一つになれるのは全棟建て替え/飛び火する杭未達問題/ずさんな建築確認,工法と地層のミスマッチ/真相究明のバトンは国から横浜市へ/「議決権放棄」のプレッシャー/封印された危険性の核心部分/耐震偽装事件――国の建築確認の責任問わず/安全なら建て替えでも補修でも資産価値は変わらない

第四章 超高層の「不都合な真実」
 「容積率の緩和」という錬金術/二〇二〇年東京五輪後の不動産危機/武蔵小杉,東京湾岸の超高層化とインフラ整備の遅れ/大規模修繕ではなく「多元改修」へ/外壁補修に「元施工」の大手ゼネコンを巻き込む/超高層独特の「ひび割れ」二〇〇年スパンで修復/巨額の工事発注の「透明性」を保つ/次々と迫る多元的な改修/市街地再開発マンション,上層と低層で別々に大規模修繕/多数の住民よりも少数の商業施設権利者の議決権のほうが重い?/ロンドン,広島,東京,所沢……超高層火災の怖ろしさ/地震で孤立するタワーマンション

第五章 コミュニティが資産価値を決める
 日本では,なぜ国民が住宅を持って資産を失うのか/長く住み続ける工夫が未来を変える/集いのスペースを増やし,井戸を掘り,住民間の対話で楽園化/管理組合の法人化が鍵を握る/日本初,訪問看護ステーションを設けたタワーマンション/経営的視点で管理組合の将来ビジョン策定/ロシアの国営放送記者が取材に来たマンション/バブルに翻弄された建て替え計画/「草の根」のコミュニケーションが原動力/国交省のリフォーム事業で「外断熱改修」/民間の知恵で耐震化のコストを下げる/用途転換と併せたリノベーションで活路を開く/住宅を社会的資産とする「建築基本法」の提言


参考文献
あとがき

著者略歴

著:山岡 淳一郎
山岡淳一郎(やまおか じゅんいちろう)
1959年愛媛県生まれ.ノンフィクション作家.「人と時代」「公と私」を共通テーマに政治・経済,医療,近現代史,建築など分野をこえて執筆.時事番組の司会,コメンテーターも務める.一般社団法人デモクラシータイムス同人.
著書に,『あなたのマンションが廃墟になる日』(草思社),『神になりたかった男徳田虎雄』『気骨 経営者土光敏夫の闘い』(以上,平凡社),『原発と権力』『インフラの呪縛』『長生きしても報われない社会──在宅医療・介護の真実』(以上,ちくま新書).『医療のこと,もっと知ってほしい』(岩波ジュニア新書),『TPPで暮らしはどうなる?』(共著・岩波ブックレット)ほか多数.

ISBN:9784004317906
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:236ページ
定価:780円(本体)
発行年月日:2019年08月
発売日:2019年08月24日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF