NHK出版新書 594
救急車が来なくなる日
医療崩壊と再生への道
著:笹井 恵里子
内容紹介
119番ではもう助からない!?ある医師は言った──。「本当は高齢者を断り、助けるべき命を救いたい」この上なくリアルな現場報告
もう119番では助からない!?
救急車の現場到着時間が年々延び続けるなかで、搬送される高齢者は増え、医師不足は避けられない──。それでもこの国の救急医療を維持していくために、いったい何が必要なのか? 都心の大病院から離島唯一の病院までを駆け巡ったジャーナリストが、私たちの安心・安全が崩壊していく実態を生々しくレポート。救急医たちの偽らざる本音に、救急医療再生のヒントを探る。
第1章 2025年、救急医療崩壊
第2章 崩壊をどう食い止めるか
第3章 救急医たちのリアル
第4章 現場から見えてきた希望
目次
第1章 2025年、救急医療崩壊
1 119番ではもう助からない?
高齢者だらけの救急現場
二〇二五年に待ち構えている危機
年々到着が遅くなる救急車
ガイドラインに遠く及ばない実態
「すべての命を助けるのが正しいのでしょうか」
2 患者が選別される時代へ
「助けるべき命」と「助からなくてもいい命」
「たらいまわし」の仕組み
現代版たらいまわしの問題点
3 崖っぷちの救急医療
病院が救急から手を引き始めた
ある医師の悲痛な訴え
専門医不在で小児死亡
働き方改革で生まれる救急車難民
医師の過重労働に甘えた制度
医師は聖職者か労働者か
4 国の対応は間違いだらけ
「適正利用」の落とし穴
軽症な顔をしていても……
患者側に判断を押しつける制度
「コンビニ受診」はほとんど存在しない
第2章 崩壊をどう食い止めるか
1 日本独自の救急医療体制
一次・二次・三次という区分け
「二次でいい」で患者死亡
ER型へシフトせよ
知られざる「見逃し」のリスク
2 「救急科専門医」という職業
医師になるまでの道のり
「救急」を専門にするということ
「なんでも診る」ことのジレンマ
3 国が向き合うべき三つの課題
提言1 入り口を集約化せよ
国民にわかりづらい仕組み
提言2 「コンビニ受診」を可能にせよ
夜間診療がしにくい国
提言3 転院搬送を制度化せよ
4 超高齢化社会と救急医療
高齢者に「救急車に乗るな」と言えるか
救急車有料化の罠
ベッドが高齢者で埋まっている
「救急」と「介護」の地続き状態
5 地方と救急医療
ドクターヘリという切り札
離島の救急医療
ドクターヘリで赤字に?
医師の偏在をどう解消するか
第3章 救急医たちのリアル
1 救急現場に集まる社会的弱者
絶対に急患を断らない病院
「救急医泣かせ」の患者たち
息子から放置された老婆
「誰でもいつでも」の美点
現場から見えてきた救急医の原点
2 「死に際」に悩む患者たち
「助かる命」と「尽きる命」
ゴルフ場でいきなり脳出血
「死に際」は唐突にやってくる
救急医たちの苦悩
父の蘇生行為を止めた娘の思い
3 救急医に求められる資質
症状を見極める眼
当直医の「見逃し」
命を救うトリアージ
トリアージに求められる根気強さ
「仕事の慣れ」が救急の大敵
急患患者の立場に寄り添えるか
「救急だから」と妥協した処置は許されない
4 離島の救急医に何ができるか
深刻な人手不足
離島には輸血がない
医療がないところに人は集まらない
離島研修医の毎日
離島でしかつめない経験
第4章 現場から見えてきた希望
1 押し寄せる患者をどう受け入れるか
病院専属の救急救命士
救急医が治療に専念できる仕組み
地域の状況がまるごとわかるシステム
2 地方で進化を続ける救急医療
僻地であることのメリット
ドクターカーとは何か
「待つ医師」から「出向く医師」へ
島全体の連携によって救われた命
3 各病院にできること
トリアージの精度をあげる取り組み
救急医と各科専門医の関係構築
4 医師不足への処方箋
倉敷中央病院に研修医が集まる理由
救急医が増えれば他の医師も増える
いい循環をどうつくるか
5 私たち患者にできること
救急隊に必要な情報を残しておく
なぜ福岡県の救命率は高いのか
困るのはこんな患者
研修医はむしろ見逃しが少ない?
おわりに