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旅行ガイドブックから読み解く 明治・大正・昭和 日本人のアジア観光

著:小牟田 哲彦

紙版

内容紹介

昔はアジア旅行も大らかだった。
日露戦争後、明治末からとたんに東アジアへ旅行に行く人が増えて、各種旅行ガイドブックが刊行されてきた。
読み捨てられたそれらのガイドブックを古本で集め、丹念に読み解く作業を続けると、歴史のリアルな実相が見えてくる。

船や鉄道の乗り継ぎ、観光地、旅館、ナイトライフ、通貨、パスポートなど、
現代の旅行客と同じ問題を当時はどうやって解決していたか。
鉄道や旅行の歴史に詳しい著者が、時刻表や路線図などを駆使して、昔のアジア旅行の実態を検証。
楽しい観光旅行を追体験したり、戦後の団体旅行ブームや、閉鎖的な社会主義国への旅行など、
朝鮮・満州・中国・台湾の激変する歴史を旅行という観点から見直した稀有な論考。写真、図版多数挿入。

目次

〔目次〕
第一章 大日本帝国時代のアジア旅行

昭和初期までのアジア旅行事情
 江戸時代にもあった旅行ガイドブック 
 東アジアへと広がった旅行範囲 
 八十年前の日本人が持っていた空間意識
 「旅行可能な中国」はまだ限られていた
 メインコースは戦跡巡り
 観光旅行の大義名分
 団体ツアーが主流だった
 団体旅行向きだった治安イメージ
 人気がなかったシベリア横断鉄道の旅

今とは異なるアジア旅行の実践環境
 モデルコースの比較からみる外地旅行費用
 中国旅行にパスポートは不要
 日本国内での越境手続き 
 満洲国から中華民国への国境越え
 ソ連出入国の厳しさは戦後と同じ
 広域の割引切符制度が充実していた
 大陸旅行は豪華列車と優雅な船旅で
 外地を驚異的に近くした空の旅
 日本語で旅する新領土
 旅行会話事情が示す国際情勢
 満洲国成立後は日本円が基軸通貨だった
 世界一複雑だった満洲国以前の中国貨幣事情
 日本軍票が通用した中支と大正期の山東鉄道 
 分単位の時差が設定されていた 

日本人観光客による外地の楽しみ方
 外地で楽しむアウトドア・アクティビティ 
 どこにでも温泉を開発した日本人
 ホテルは西洋式、和式、現地式が選べた 
 レストランの案内に見る食の楽しみ 
 駅弁文化は大陸では定着していない 
 台湾にはアヘンの販売場所があった 
 遊廓がナイトライフの一部だった 
 東アジア旅行が大らかだった時代 

第二章 戦後の日本人によるアジア旅行

海外旅行自由化までの外国渡航事情
 終戦直後の旅行事情 
 外貨事情によって海外渡航が制限されていた 
 東京オリンピック直前に海外旅行が自由化 
 残存していた旅行の「大義名分」要否の議論 
 パスポートは繰り返し使えなかった 
 所持金の携帯方法の変化 
 戦前よりも高嶺の花だった外国旅行 
 ガイドブックが物語る団体旅行主流の時代 
 ジャンボジェット機が登場して船旅が消えた 
 アジア旅行は不人気だったのか 
 アジアの特定地域に集中した理由 
 準外国扱いだった沖縄渡航 

日本人のアジア観の移り変わり
 『外国旅行案内』に見る中台の記述の変遷
 中国への政治的配慮が紙面の随所に
 中国旅行が文革後に〝社会科見学〟として復活 
 中国社会の価値観の変化を行間に見る 
 戦後アジアの旅行会話事情 
 ガイドブック非公認の日本語通用国・イラン 

旅行ガイドブックの読者層の変化
 個人旅行者向けの情報が紙上に増加
 女性向けの海外旅行情報は出遅れた
 着物姿の外国旅行が推奨された
 「女の値段」が書かれている香港の舞庁紹介 
 台湾で引き継がれた温泉芸者とお座敷宴会 
 男性目線旅行の象徴・キーセン観光 
 女性読者が増えて書籍としての見栄えが向上 
 アジアは急速に旅行しやすくなった

エピローグ 旅行ガイドブックの変遷から見えるこ

著者略歴

著:小牟田 哲彦
小牟田哲彦(こむた・てつひこ)
昭和50年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒業、筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業科学専攻博士後期課程単位得取得退学。日本及び東アジアの近現代交通史や鉄道に関する研究・文芸活動を専門とする。平成7年、日本国内のJR線約2万キロを全線完乗。世界70ヵ国余りにおける鉄道乗車距離の総延長は8万キロを超える。平成28年、『大日本帝国の海外鉄道』(東京堂出版)で第41回交通図書賞奨励賞受賞。ほかに『鉄馬は走りたい―南北朝鮮分断鉄道に乗る』(草思社)、『鉄道と国家―「我田引鉄」の近現代史』(講談社現代新書)、『去りゆく星空の夜行列車』(草思社文庫)など著書多数。日本文藝家協会会員。

ISBN:9784794224026
出版社:草思社
判型:4-6
ページ数:336ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2019年06月
発売日:2019年06月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBCC