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中世王朝物語全集 22

物語絵巻集

編:伊東 祐子

紙版

内容紹介

本巻には、絵巻物の形で伝わった物語、六作品を収める。
なかでも『藤の衣物語絵巻』は、質量ともに注目すべき作品である。
原物語は、山伏に身をやつした太政大臣の子息とその三人の子供たち(中納言・中宮・僧正)が、剣や笛、物の怪の言葉によってめぐりあうという、父と子の絆を軸とした物語であり、鎌倉時代に成立した物語と推定される。
中宮となる女児の母は遊女であり、水辺の遊女の暮らしも描かれており興味深い。
一方、白描絵の中にはおびただしい量の画中詞が書き込まれており、絵巻制作時とおぼしき室町時代の口語を反映したものとして、貴重な国語学的資料と考えられる。
六作品とも初の現代語訳の試みであり、詳細な注と解説により、物語絵巻の世界を解き明かす。

藤の衣物語絵巻 ふじのころもものがたりえまき
本絵巻は孤本であり、現在は日本とアメリカの美術館に分蔵されている。本書の底本には、細見美術館蔵の一巻(実見による)、ブルックリン美術館蔵の一巻(実見による)、ならびにクリーヴランド美術館蔵の一図、フリア美術館蔵の一図を用いた。

下燃物語絵巻 したもえものがたりえまき
本書の底本には、甲子園学院美術資料館蔵の絵巻(一巻。実見による)を用いた。校訂本文作成にあたっては、次の二本を参照した。
・九曜文庫蔵本(一巻。実見による。中野幸一氏「『下燃物語』残欠絵巻について」(『室町物語集』「日本古典文学影印叢刊27」日本古典文学会、1990年5月)に影印と翻刻がある。)
・穂久邇文庫蔵本(一巻。絵はなく、絵にあたる箇所に「絵」と記してあるのみ。コピーによる。)

豊明絵巻 とよのあかりえまき
本絵巻は尊経閣文庫に伝わるのみの孤本であり、本書の底本もそれによる。尊経閣叢刊『豊明絵草子』(1936年1月、育徳財団)の影印を用いた。

なよ竹物語絵巻 なよたけものがたりえまき
本書の底本には、金刀比羅宮蔵の絵巻(一巻。実見による)を用いた。校訂本文作成にあたっては、以下の諸本を参照した。
・『鳴門中将物語』(『群書類従・第二十七輯』巻第四八二、所収)
・『古今著聞集』(「日本古典文学大系」岩波書店、所収。「新潮日本古典集成」新潮社、所収)
・曇華院蔵本(箱書「なよ竹の巻物」。一巻。実見による)

掃墨物語絵巻 はいずみものがたりえまき
本絵巻は徳川美術館に伝わるのみの孤本であり、本書の底本もそれによる。『徳川美術館名品集1 絵巻』(徳川美術館、1993年4月)等所収の影印を用いた。

葉月物語絵巻 はつきものがたりえまき
本絵巻は徳川美術館に伝わるのみの孤本であり、本書の底本もそれによる。『日本の絵巻10
』(中央公論社、1988年1月)等所収の影印を用…

著者略歴

編:伊東 祐子
一九五七年、長野県生まれ。学習院大学人文科学研究科国文学専攻博士後期課程単位取得退学。博士(日本語日本文学)。都留文科大学・東京外国語大学非常勤講師。著書に『藤の衣物語絵巻(遊女物語絵巻)影印・翻刻・研究』、共著に『源氏物語の鑑賞と基礎知識 横笛・鈴虫』、論文に「青表紙本と河内本について—引歌当該箇所を中心に」「源氏物語の引歌の種々相」「奥入掲載歌と新勅撰集について」「平安時代の物語と絵の交渉ついて—徳川・五島本『源氏物語絵巻』東屋(一)の図様と詞書をめぐって」「俊成と紫式部歌をめぐる試論—『千載集』入集の紫式部歌を手がかりとして」ほかがある。

ISBN:9784305401021
出版社:笠間書院
判型:A5
ページ数:516ページ
価格:8800円(本体)
発行年月日:2019年06月
発売日:2019年06月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ