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講談社文庫

すべての戦争は自衛から始まる

著:森 達也

紙版

内容紹介

歴史上、多くの戦争が自衛意識から始まった。ナチス最高幹部だったヘルマン・ゲーリングは「戦争を起こすことはそれほど難しくない」と述べている。「国民に対し、我々は攻撃されかけているのだと危機感をあおり、平和主義者には愛国心が欠けていると非難すればいい」と。安倍政権は危機を誇張して「抑止力」や「自衛」の必要性を訴えている。「集団化」が加速するこの国は、その意味を深く考えないまま流されてしまうのか。
だから、「戦争はダメ!」と言い続けなければならない。いや、それでは足りない。「戦争はダメ!」だけではダメなのだと言わなければ。なぜなら、それだけでは「戦争を回避するために抑止力を高める」とか「戦争を起こさないように自衛力を身につける」などのレトリックに対抗できなくなる。我々は戦争の被害だけでなく加害の記憶を刻む必要がある。被害と加害の二つの視点を重ねることで、普通に市井に生きていた人が、なぜあれほど残虐な行為に耽ることができたのか、そのメカニズムが明らかになる。理由までは行き着けないにしても、人間とはそんな存在なのだと実感することができるようになる。戦争の悲惨さ、残酷さが初めて、立体的な姿で立ち現れる。
繰り返す。多くの戦争は自衛の意識から始まる。あの国を侵略してやろうなどと始まる戦争はほとんどない。そして自衛の意識が発動したとき、被害の記憶だけでは踏みとどまれない。加害の記憶から目をそむけず、何度でも自分に刻みこむ。それを自虐史観と呼びたければ呼べばよい。胸を張って自虐する。この国が、再び「戦争」を選ばないために。
今、最注目の論考、待望の文庫化!

著者略歴

著:森 達也
1956年広島県生まれ。映画監督、作家、明治大学特任教授。98年にオウム真理教信者達の日常を追うドキュメンタリー映画『A』を公開、ベルリン国際映画祭などに正式招待される。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。2016年には、佐村河内守の「ゴーストライター問題」を題材に撮影した『FAKE』が大きな話題を呼ぶ。作家としては、2010年に刊行した『A3』で第33回講談社ノンフィクション賞を受賞。他にも、『放送禁止歌』『いのちの食べかた』『ドキュメンタリーは嘘をつく』『死刑』『「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』など注目作多数。

ISBN:9784065143100
出版社:講談社
判型:文庫
ページ数:304ページ
定価:720円(本体)
発行年月日:2019年01月
発売日:2019年01月16日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPS