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宗教と社会の戦後史

編:堀江 宗正

紙版

内容紹介

世俗化と宗教復興,この相反する動きは,実は同時進行していた! 本書は戦後日本の宗教と社会の関係を,このパラドクシカルな動きから理解する.政教分離の建前のもと,国家と宗教はどう関係してきたか,教団はそれにどう適応してきたか.見逃されてきた課題は何なのか.日本社会の転機を根本から問う.

目次

はじめに(堀江宗正)

序章 戦後七〇年の宗教をめぐる動き――いくつかの転機を経て(堀江宗正)
 1 いくつかの転機
 2 社会構造の変化から見た戦後宗教史
 3 終戦か敗戦か
 4 逆コースの戦後政治
 5 国家神道の象徴的復興
 6 靖国問題と国家神道の中心の転換
 7 反共と宗教
 8 戦後の平和主義と宗教
 9 一神教批判の台頭
 10 三・一一後の左傾化?
 11 オウム真理教事件と公明党の位置づけの変化

I部 理論編――戦後宗教史を読むための視座

1章 近代の規範性と複合性――「世俗化」概念の再検討と丸山眞男の近代化論(上村岳生)
 1 はじめに
 2 近代的宗教のモデル――「市民宗教」と「公共宗教」
 3 丸山眞男における近代化と宗教
 4 複合的近代のなかの宗教

2章 政権与党と宗教団体――自民党と保守合同運動,公明党と創価学会の関係を通して(伊達聖伸)
 1 はじめに
 2 戦後日本における「宗教」の位置
 3 宗教団体と政治の関係――構造と類型
 4 神道政治連盟と保守合同運動――国家神道の復活か,脱宗教的な国民運動か
 5 創価学会と公明党の軌跡――「政教一致」から自民党との連立政権成立まで
 6 右傾化のなかの自公連立と宗教的なものの行方
 7 おわりに

3章 戦後宗教史と平和主義の変遷(中野 毅)
 1 忘れられた戦後宗教史――国家と宗教とのはざまで
 2 日本国憲法に表現された平和主義
 3 宗教的平和主義の諸類型
 4 戦後日本における平和主義の変遷
 5 おわりに

II部 歴史編――国家と宗教の関係性

4章 国家神道復興運動の担い手――日本会議と神道政治連盟(島薗 進)
 1 はじめに
 2 「天皇中心の国家」復興運動・日本会議・神社本庁
 3 神社本庁と神道政治連盟
 4 神政連と神宮の真姿顕現
 5 式年遷宮への首相参列
 6 おわりに

5章 靖国神社についての語り――明治維新百五十年で変わりうるか(小島 毅)
 1 はじめに
 2 靖国問題は文化の相違によるものか
 3 靖国神社の起源
 4 靖国神社の英霊たち
 5 怨親平等から怨親差別へ
 6 朱子学の歴史認識と靖国神社へ
 7 おわりに――靖国史観解消への一里塚

6章 忠魂碑の戦後――宗教学者の違憲訴訟への関与から考える(西村 明)
 1 はじめに
 2 箕面忠魂碑違憲訴訟とは
 3 柳川啓一の忠魂碑理解――東京地裁における証人調書から
 4 柳川説と忠魂碑訴訟のコンテクスト
 5 むすびにかえて――忠魂碑の現在

III部 教団編――諸宗教の内と外

7章 キリスト教と日本社会の間の葛藤と共鳴――宗教的マイノリティが担う平和主義(小原克博)
 1 はじめに――戦後を振り返るための基本的背景
 2 戦前における国家と社会
 3 戦後社会とキリスト教
 4 日本における一神教批判
 5 犠牲をめぐるキリスト教と国家の論理
 6 おわりに

8章 戦後の仏教をめぐる言説と政治――近代性,ナルシシズム,コミュニケーション(川村覚文)
 1 はじめに
 2 近代と仏教
 3 「戦後」をめぐる「捩れ」と仏教
 4 「戦後」社会における「仏教」をめぐるポリティクス
 5 おわりに

9章 新興宗教から近代新宗教へ――新宗教イメージ形成の社会的背景と研究視点の変化(井上順孝)
 1 はじめに
 2 戦後七〇年の変化の波
 3 研究視点の変容
 4 新宗教研究から何が見いだされたのか
 5 宗教研究のフロンティアとしての新宗教研究
 6 二一世紀の新宗教研究の課題

終章 宗教と社会の「戦後」の宿題――やり残してきたこととその未来(黒住 真・島薗 進・堀江宗正)
 からみあう世俗化と宗教復興
 権威主義による社会的組織の解体
 ゲノッセンシャフトとしての教団
 国家からの超越性と責任
 「国家神道」と対峙するもの――地域・いのち・スピリチュアリティ
 「新しい社会運動」としての公共宗教
 農業・産業・宗教
 受苦のスピリチュアリティ
 自己無化・自己犠牲と他者への強制
 批判と反省
 儒教と神道の結合
 明治一五〇年をどうとらえるか――富国強兵と環境破壊
 アジアとの関係,移民受入,排外主義
 国家共同体を超える公共性のスピリチュアリティ

年表・宗教と社会の戦後史


Post-War History of Religion and Society in Japan
Norichika HORIE, Editor

著者略歴

編:堀江 宗正
東京大学大学院人文社会系研究科准教授

ISBN:9784130104128
出版社:東京大学出版会
判型:4-6
ページ数:404ページ
定価:3400円(本体)
発行年月日:2019年02月
発売日:2019年04月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QRAX