志士から英霊へ
尊王攘夷と中華思想
著:小島 毅
紙版
内容紹介
反逆の罪に問われて死罪となった吉田松陰は、明治になって甦り靖国神社に祀られ、教育者としても賞揚されている。西郷隆盛も、時代によって、人によって評価がわかれる。幕末に尊王攘夷を掲げた志士たちの実像は、為政者や時代の空気によって書き換えられる。
そもそも尊王攘夷とは、中国の儒教から出てきた考え方で、君主の権威を擁護して異民族を国外に排斥することである。幕末の志士たちは、列強の脅威をはらい天皇を担ぎ出して維新を遂行した。やがて彼ら自身が英霊として担がれ、1945年まで生き続ける。志士から英霊へ――継続あるいは転換はどのようにおきたのだろうか。『儒教が支えた明治維新』に続く新・維新論。
目次
1 二人のジェダイ――西郷隆盛と吉田松陰
西郷隆盛と足利尊氏――大河ドラマ「西郷どん」雑感
西郷隆盛の敬天愛人
大河ドラマ「花燃ゆ」と吉田松陰
吉田松陰と陽明学
明治から昭和へ、松陰像の変遷
破壊王と呼ばれて
私が吉田松陰批判を通じて目指すこと
教育者、松陰の誕生――玖村敏雄『吉田松陰』解説
2 ダークサイドの誘惑――殺身成仁の美学
死を見据える――儒教と武士道、「行の哲学」の系譜
太平記、宋学、尊王思想
太平記と夢窓疎石
3 エンパイアの理念――宋学の思想史的意義
思想史から見た宋代近世論
宋学の尊王攘夷思想とその日本への影響
水戸学の天皇論――現行制度を再検討するために
4 フォースと共にあれ――理気論の人間観
朱子学の理気論・心性論
東アジア伝統思想の「尊厳」
正気歌の思想――文天祥と藤田東湖
あとがき