出版社を探す

キマイラの原理

記憶の人類学

著:カルロ・セヴェーリ
訳:水野 千依

紙版

内容紹介

「絵文字」にパラレリズムを探る
 「口承的」と呼ばれてきた無文字社会において、「記憶」はいかに生み出され、継承されるのか。記憶、コミュニケーション、そして人間の思考そのものに、言葉とイメージはいかなる役割を果たしているのか。記憶が社会的に共有される「儀礼」という場に焦点を定め、西洋文化のかなたに息づく記憶技術の解明に捧げた本書は、特定の地域研究の枠を超えて、哲学、民族学、心理学、精神医学、言語学、美術史、物語論の成果を縦横に応用しながら、広く人間一般の記憶、認識、想像力をめぐる理論研究として、独創的かつ発展性のある新しい視座を提起する。
 本書を貫くキー概念のひとつである「パラレリズム」とは、反復される定型表現と規則正しい一連のヴァリエーションから構成される形式をさす。この特殊な形式を付与されることにより、物語の連続は記憶を補助する力を獲得する。だがパラレリズムは、テクストの構造に加え、それに関連する「絵文字」というイメージの構造をも統御する。セヴェーリは、アマゾニアから北米大平原に至るまでアメリカ大陸を縦断しながら、先住民の絵文字に、様式的差異を超えて時間的にも地理的にも広大に普及しつつ持続する驚くべき特徴や内的一貫性を浮かび上がらせる。

著者略歴

著:カルロ・セヴェーリ
1952年生まれ。ミラノ国立大学で哲学を修めたあと、パリの社会科学高等研究院(EHESS)にて人類学を学び、クロード・レヴィ=ストロースのもとで博士号を取得。現在、同研究院社会人類学講座教授、フランス国立科学研究センター(CNRS)教授を務めるほか、社会人類学研究所メンバー、パリのケ・ブランリ美術館研究・教育部門協力者を務める。主著に、La memoria rituale (1993)、Naven ou le donner à voir (1994、M. Housemanとの共著)などがあり、監修を担った国際学術雑誌や論集も数多い。最新刊のL’objet-personne(2017)では、本書で構想した「記憶の人類学」からさらに「思考実践の人類学」へと新たな研究の境地を開いている。
訳:水野 千依
1967年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在は、青山学院大学文学部教授。専門はイタリア・ルネサンス美術史。主著に『イメージの地層――ルネサンスの図像文化における奇跡・分身・予言』(名古屋大学出版会、2011年、第34回サントリー学芸賞ほか受賞)、『キリストの顔――イメージ人類学序説』(筑摩選書、2014年、地中海学会ヘレンド賞受賞)、主要訳書にディディ=ユベルマン『残存するイメージ――アビ・ヴァールブルクによる美術史と幽霊の時間』(共訳、人文書院、2005年)がある。

ISBN:9784560095553
出版社:白水社
判型:A5
ページ数:400ページ
定価:7300円(本体)
発行年月日:2017年06月
発売日:2017年06月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBCC