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ネット炎上の研究

誰があおり、どう対処するのか

著:田中 辰雄
著:山口 真一

紙版

内容紹介

インターネットが普及すれば多くの人が自由な議論の輪に加わり討論の民主主義が社会のすそ野に広がっていくと期待された。しかし論調は暗転し、ネット上での意見交換に悲観的な意見が増えてくる。この論調の暗転の大きな原因になったのがいわゆる炎上問題である。本書はこの炎上について定量的な分析を行うとともに、本書なりにその原因と社会としての炎上対策を示す。

目次

はじめに

第1章 ソーシャルメディアと炎上:特徴と発生件数
 1-1 炎上とは
 1-2 炎上の特徴
 1-3 炎上の発生件数推移と傾向
 1-4 参考となる論文・書籍
 1-5 ネットコミュニケーションのゆくえ

第2章 炎上の分類・事例・パターン
 2-1 炎上の分類
 2-2 Ⅰ型:反社会的行為や規則に反した行為(の告白・予告)
 2-3 Ⅱ型:何かを批判する,あるいは暴言を吐く・デリカシーのない発言をする・特定の層を不快にさせるような発言・行為をする
 2-4 Ⅲ型:自作自演,ステルスマーケティング,捏造の露呈
 2-5 Ⅳ型:ファンを刺激(恋愛スキャンダル・特権の利用)
 2-6 Ⅴ型:他者と誤解される
 2-7 炎上のパターンと予防・対処

第3章 炎上の社会的コスト
 3-1 情報発信の萎縮
 3-2 若干の統計的検討
 3-3 初期インターネットとの比較
 3-4 炎上対策の検討
 3-5 結語:炎上のコストは情報発信の萎縮

第4章 炎上は誰が起こすのか
 4-1 人々の炎上とのかかわり方
 4-2 データから見る炎上参加者のプロフィール
 4-3 炎上参加者属性の分析:年収の多い若い子持ちの男性が書き込み
 4-4 炎上参加行動に有意でない属性:ひとり暮らし,学歴,ネット時間等
 4-5 炎上の捉え方と予防方法

第5章 炎上参加者はどれくらいいるのか
 5-1 なぜ参加者数を調べるのか
 5-2 アンケート調査での炎上参加者数推定
 5-3 Twitterでの炎上参加者数推定
 5-4 炎上での直接攻撃者
 5-5 結語:炎上参加者はごく一握り

第6章 炎上の歴史的理解
 6-1 炎上の理解:集団極性化とデイリーミー
 6-2 近代化の歴史より
 6-3 草創期の力の濫用

第7章 サロン型SNS:受信と発信の分離
 7-1 炎上の真の原因
 7-2 サロンの構想
 7-3 自由参入かメンバーシップか
 7-4 結語:サロンの必要性

第8章 炎上への社会的対処
 8-1 炎上とのかかわり方とインターネットに対するイメージ
 8-2 政策的対応の検討
 8-3 炎上への規制対応は難しい

付録 炎上リテラシー教育のひな型

参考文献
索引


[本書で触れられる炎上事例]
第2章
NTTドコモプッシュトーク事件
UCC上島珈琲Twitterキャンペーン事件
ペヤング虫混入事件
グルーポンすかすかおせち事件
USJ迷惑行為事件
ラサール石井麻生太郎元首相批判事件
TSUTAYA不謹慎ツイート事件
倖田來未氏羊水が腐る発言事件
厚労省年金漫画事件TBS架空掲示板偽造事件
食べログやらせ業者事件
SCEPSPステルスマーケティング事件
Google急上昇ワードランキング事件
ペニーオークションステルスマーケティング事件
指原莉乃恋愛事件
北乃きい路チュー事件
大沢あかねブログ炎上事件
はるかぜちゃん名前勘違い事件
平野綾恋愛事件
黒田美帆混同炎上事件
しぎた博昭混同炎上事件
スマイリーキクチ中傷被害事件

第3章
グルーポンすかすかおせち事件
ソニーのPSPステルスマーケティング事件
ペニーオークションステルスマーケティング事件
はるかぜちゃん名前勘違い事件
平野綾恋愛事件
倖田來未氏羊水が腐る発言事件
コミケきんもーっ✩事件
五輪エンブレム事件
小保方STAP細胞事件
「福島はもう住めない」炎上事件
昆虫交尾図鑑事件
ご当地萌えキャラの炎上事件

第5章
ルミネCM炎上事件 
上西小百合事件 
張本・カズ引退事件
アンジェリカ結婚観事件
デモ割安倍くそったれ事件
藤原紀香バスガイド底辺事件

著者略歴

著:田中 辰雄
田中 辰雄(たなか たつお) 1957年、東京都に生まれる。東京大学大学院経済学研究科単位取得退学。国際大学グローバルコミュニケーションセンター研究員、コロンビア大学客員研究員を経て、現在、慶應義塾大学経済学部教授。専攻は計量経済学。主要著作:『ゲーム産業の経済分析』(共編著、東洋経済新報社、2003年)、『モジュール化の終焉』(NTT 出版、2007年)、『著作権保護期間』(共編著、勁草書房、2008年)、『ソーシャルゲームのビジネスモデル』(共著、勁草書房、2015年)、『ネット炎上の研究』(共著、勁草書房、2016年)、『ネットは社会を分断しない』(共著、角川新書、2019年)ほか。
著:山口 真一
山口 真一(やまぐち しんいち) 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授。1986年生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。2020年より現職。専門は計量経済学。研究分野は,ネットメディア論,情報経済論,情報社会のビジネスなど。「あさイチ」「クローズアップ現代+」(NHK)や「日本経済新聞」をはじめ,メディアにも多数出演・掲載。KDDI Foundation Award 貢献賞,組織学会高宮賞,情報通信学会論文賞(2 回),電気通信普及財団賞などを受賞。主な著作に『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社),『なぜ,それは儲かるのか』(草思社),『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版),『ネット炎上の研究』(勁草書房)などがある。他に,東京大学客員連携研究員,早稲田大学兼任講師,株式会社エコノミクスデザインシニアエコノミスト,日本リスクコミュニケーション協会理事,シエンプレ株式会社顧問,日本経済新聞Think! エキスパート,Yahoo! ニュースオーサー,総務省・厚生労働省の検討会委員などを務める。

ISBN:9784326504220
出版社:勁草書房
判型:A5
ページ数:256ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2016年04月
発売日:2016年04月23日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:UB