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京城のモダンガール

消費・労働・女性から見た植民地近代

著:徐 智瑛
訳:姜 信子
訳:高橋 梓

紙版

内容紹介

1920-30年代、植民地朝鮮に資本主義が押し寄せ、恐怖と快楽が背中合わせだった京城(現・ソウル)。百貨店・劇場・映画館・最新の公共施設が建ちならぶ近代都市の街路を、断髪に洋装の「モダンガール」が闊歩した。植民地支配と近代化のはざまで登場した朝鮮のモダンガールは、ショップガールやバスガールなどの新職業婦人・妓生(キーセン)・女給・女学生・女工などさまざまな階層からなっていた。商品とイメージを消費し、労働力になり、自ら商品とされつつ、新しい生を生きようとした。
当時、「正体不明の女」「あやまてる女(モッタン・ガール)」とひとくくりにされた「モダンガール」の経験とは何だったのだろうか。
たとえば、朝鮮総督府は日本で不足している米を確保しようと「朝鮮産米増殖計画」を実施、農村は疲弊して多くの農民が流民化した。娘たちも移動し、一部は海を渡って関西の紡績工場などの女工になり、あるいは炭鉱近くの朝鮮料理店で酌婦や女給になった。彼女たちもまた、パラソルやストッキング、都会の生活に憧れ、活動写真に夢中になったモダンガールのひとりだったにちがいない。
女たちを街路へ、国境の外へと押し出した夢や欲望、困難を追い、忘れられた声を復元し、見えていなかった近代を描く韓国歴史学のニューウェイブ。

著者略歴

訳:姜 信子
作家。1961年横浜市生まれ。東京大学法学部卒業。86年に『ごく普通の在日韓国人』でノンフィクション朝日ジャーナル賞を受賞。著書に『うたのおくりもの』(朝日新聞社)、『日韓音楽ノート』『ノレ・ノスタルギーヤ』『ナミイ! 八重山のおばあの歌物語』『イリオモテ』(いずれも岩波書店)、『棄郷ノート』(作品社)、『安住しない私たちの文化 東アジア流浪』(晶文社)、『今日、私は出発する ハンセン病と結び合う旅・異郷の生』(解放出版社)、『はじまれ 犀の角問わず語り』『生きとし生ける空白の物語』(いずれも港の人)、『旅する対話 ディアスポラ・戦争・再生』(春風社)、『声 千年先に届くほどに』(ぷねうま舎)、『はじまりはじまりはじまり』(羽鳥書店)など多数。訳書に、李清俊『あなたたちの天国』、ソ・ジヨン『京城のモダンガール』(共訳)、編書に『死ぬふりだけでやめとけや 谺雄二詩文集』(いずれもみすず書房)。
訳:高橋 梓
1983年生まれ。東京都出身。東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程在学中。上智大学言語教育研究センター非常勤講師。研究分野は朝鮮近代文学、植民地期の朝鮮人作家の日本語創作。論文に「金史良の日本語文学が生成された批評空間――植民地出身作家の交流の場としての『文芸首都』(『JunCture』第7号、名古屋大学「アジアの中の日本文化」研究センター、2016年)、「金史良の二言語作品における表現の差異をめぐる考察」(『言語・地域文化研究』第20号、東京外国語大学大学院、2014年)、「「反復」と「差異」――1940年代前半期における植民地の「国民文学」 尹大石『植民地国民文学論』を読む」(『Quadrante』第15号、東京外国語大学海外事情研究所、2013年)。翻訳に、ソ・ジヨン『京城のモダンガール』(共訳、みすず書房、2016年)、韓基亨「「法域」と「分域」――帝国内部における表現力の差異と植民地テクスト」(紅野謙介他編『検閲の帝国 文化の統制と再生産』新曜社、2014年)。

ISBN:9784622079804
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:400ページ
定価:4600円(本体)
発行年月日:2016年04月
発売日:2016年04月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBS