カッコウの托卵
進化論的だましのテクニック
著:ニック・デイヴィス
訳:中村 浩志
訳:永山 淳子
内容紹介
カッコウは昔から托卵をする鳥として知られていますが、その詳細については写真やハイテク機器を用いて個体の同定や追跡、巣内の観察が行われる最近まで不明でした。観察方法の進歩につれ、どのように托卵し、それに対し宿主がどのように托卵を回避するか、共進化の様相が明らかになってきました。カッコウの托卵行動と子育ての放棄・押しつけは、果たして“進化”で説明できるのでしょうか。カッコウは托卵することで“親”という重荷を逃れ、普通の鳥より多くの卵を産む潜在的可能性を持ちます。それは宿主がだまされやすいうちは一時的に得をするかもしれません。しかし宿主が反撃すると、カッコウは結局だましのテクニックに複雑な手順が必要となります。詐欺の常習犯が最後はつかまって償いをさせられるように宿主の防衛は托卵の進化的成功を制限します。しかし、それでもカッコウは托卵を成功させ、現在も托卵を進化させています。著者は世界的なカッコウ研究者で、自らの研究を含めて過去・現在の驚くべき観察事例を豊富に紹介しています。叙述は平明であまり細部に立ち入りすぎることはなく、一般向けの良質な科学読み物になっています。
目次
第1章 巣の中のカッコウ
――昔の文学作品や観察記録の中に描かれているカッコウの托卵。
第2章 カッコウはどのように卵を産むか
――約百年前、宿主の卵を人為的に用意しカッコウの托卵を観察した研究。
第3章 ウィッケン・フェン
――著者のフィールド、ケンブリッジ近郊のウィッケン・フェンでの観察。
第4章 春を告げる鳥
――カッコウはどうやって托卵相手やそのタイミングを選ぶのか。
第5章 カッコウのふりをする
――宿主であるヨシキリは擬卵にだまされるか、それとも見破るか。
第6章 卵をめぐる「軍拡競争」
――擬卵を見破る宿主を相手にした時ほど、カッコウは宿主の卵に似た卵を作る。
第7章 署名と偽物
――宿主が卵に記す「署名」が精巧になるとカッコウの卵も巧妙になり、宿主は「署名」を変える。
第8章 さまざまな装いでのだまし
――カッコウが鷹に姿を似せることで宿主からの反撃を減少させ、宿主は混乱する。
第9章 奇妙で忌まわしい本能
――カッコウの雛は宿主の雛より少し早く孵り、宿主の親がいてもその雛を追い出す。
第10章 餌ねだりのトリック
――カッコウの雛はどのように宿主の気を引くか。驚きの「だましのテクニック」。
第11章 宿主の選択
――カッコウは、個体数が多く雛の餌が共通で巣に近寄りやすい鳥を宿主に選ぶ。カッコウの「好み」が世代を越えて遺伝する理由。
第12章 もつれ合った土手
――同種どうしで托卵しようとする例などさまざまな托卵のが紹介。
第13章 減少するカッコウ
――地球温暖化による托卵の時期の狂いと餌の減少は特に影響が大きい。
第14章 変化する世界
――カッコウが減少すれば宿主の行動も変化する。近年の宿主の行動の変化の例を考察。
■キーワード カッコウ 托卵 共進化
ISBN:9784805208991
。出版社:地人書館
。判型:4-6
。ページ数:344ページ
。定価:2800円(本体)
。発行年月日:2016年04月
。発売日:2016年04月18日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PSVJ。