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わたしの家

痕跡としての住まい

著:柏木 博

紙版

内容紹介

ヴァルター・ベンヤミンは、近代化以降、「家」もしくは「室内」は、その人らしさ
を映し出す「痕跡」であると言っている。どんなに乱雑な部屋でも、あるいはあ
る一つの趣味に統一された室内でも、最小限のスペースしかない家であろうと
も、家からはそこに住まう人が見えてくる。最小限の家コルビュジエの南仏の小
屋。書物を読み書くことを優先させた荷風の偏奇館。放浪作家、林芙美子の終
の棲家……。デザイナーや作家の家などの家を例にとりながら、人と家との関
係について探っていく。
また21世紀となり、私たちはもう一つの室内ともいえるコンピュータを手にし
た。そのバーチャルな私的空間も、あらたな私の痕跡である。私だけの守られ
た場所にいながら、私たちは世界中ともアクセスすることができる、技術の変
化とともに、変わっていく「私」の領域。その痕跡についても考える。人にとって
居場所、家、部屋とはなんなのだろうか。人は家に何を求めるのだろうか。その
ことを歴史的に捉えなおしたのが本書である。

目次

●作家たちの家
偏奇館の『断腸亭日乗』――荷風の室内
童謡作家の室内――「木兎の家」
放浪ではなく終の棲家――林芙美子邸
宮沢賢治のコスモス(楽園)=花壇
痕跡としての室内・澁澤龍彦の部屋
柳宗悦邸見学紀
室内をめぐる物語――ポール・オースター『ブルックリン・フォリーズ』
女中タキの「部屋」――終の棲家
●室内と痕跡
室内の観相――住まいと痕跡
三三六×三三六×二二六センチの家具――コルビュジエの最小限住宅
身体を補足する装置(家具)
箱・キャビネット・室内という書物
コラージュとしての室内
いつも明かりを求め楽しんできた
●室内と安全
わたしのもの(私物)――わたしの場所(室内=内面)
鍵=内と外を認識させる装置
防御・防護・遮断することをめぐって
個人の居場所――室内・パソコンへの侵害
街路の傍観者・監視者

著者略歴

著:柏木 博
1946年生まれ。武蔵野美術大学卒業。デザイン評論家。武蔵野美術大学教授。近代デザイン専攻。著書には『20世紀を作った日用品』(晶文社)、『モダンデザイン批評』(岩波書店)、『探偵小説の室内』(白水社)、『「しきり」の文化論』(講談社)など多数がある。

ISBN:9784750513034
出版社:亜紀書房
判型:4-6
ページ数:320ページ
定価:2000円(本体)
発行年月日:2013年03月
発売日:2013年03月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AMK