早稲田大学ブックレット〈「震災後」に考える〉027
原発政策を考える3つの視点
震災復興の政治経済学を求めて 3
著:齋藤 純一
著:川岸 令和
著:今井 亮佑
内容紹介
住む場所を剥奪されるとは何か,事故情報は自由に十分に伝えられたのか,原発への世論の形成と行方は。直面する3つの課題を考える。
目次
第1章 場所の喪失/剥奪と生活保障(齋藤純一)
はじめに
1 2つの場所剥奪
場所剥奪(1)――強制的な移動
場所剥奪(2)――生の展望の喪失
2 場所剥奪と非対称性
原子力発電所の受容
近代日本における場所剥奪
「限界集落」
都市部における場所の剥奪
3 場所剥奪に関する問い
場所の喪失/剥奪とケイパビリティの縮減
意思形成と場所の非対称性
補償という考え方の問題
4 場所をもつことへの支援
場所を離れる自由の擁護
場所にとどまる自由の擁護
政治的自律性の回復
「自立」への支援
おわりに
第2章 情報の自由で豊かな流通に基づく自省的社会へ(川岸令和)
はじめに
1 情報の自由のための原理論
真理の探求と啓蒙
民主的意思決定と国民主権
異論に対する寛容
自律的な個人と自己実現にとっての価値
2 情報の流通過程の擁護
知ることを妨害されない自由と表現する自由
情報の偏在と積極的な「知る権利」
政府による情報の遮断は許されない
3 情報の自由と緊急事態
緊急事態での考え方
真に深刻な損害が予想されるときのみに
4 東日本大震災の場合
地震と津波情報
原発事故情報
5 ソーシャルメディアの功罪――流言飛語問題
インターネットの新しい機能
デマ,流言――インターネットの弊害
マスメディアの情報源としての信頼性
流言飛語への対応
政府や専門機関の役割と責任
6 利用されなかったSPEEDI情報
SPEEDIとは
エリート・パニック――政府の責任放棄
7 情報の自由による自省的な社会に向けて
マスメディアとインターネットの特性
「自省的な社会」へ――政府・専門家,市民,そしてマスメディア
第3章 原発依存の是非をめぐる世論の動向(今井亮佑)
はじめに
1 理論的背景
沈黙のらせん
社会的望ましさバイアス
2つの理論の接点
仮説の導出
2 データと分析手法
3 分析結果
仮説1の検証
仮説2の検証
4 おわりに
補遺 分析手法と結果