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頸動脈エコー法の臨床

撮り方と読み方

編:山崎 義光

紙版

内容紹介

(編者序文より抜粋)
 頸動脈エコー検査は、1980年代後半に開発された、非侵襲的な頻回計測可能な検査法であり、現在、早期動脈硬化検査法としてデファクトスタンダードになりつつある検査法である。本法の長所として、①実際の頸部動脈硬化病変と頸動脈エコーで得られる所見とよく一致すること、②計測の範囲が極めて広いこと(プローベを用いると、3歳の小児の頸動脈も観察し得ること(但し、完全に閉塞すると当然肥厚度は計測できない)、③患者に説得力のある検査結果が得られること、④動脈硬化症の代理指標(サロゲートマーカー)として多数のエビデンスが集積されている、⑤長時間を要するが、治療介入の効果判定にも使用できる、など優れた利点を多く有している。逆に、施行上の問題点としては、①評価に耐えうる画像を描出する術者の手技、②計測方法、手技の均質化、③診断結果の統一性、などがあげられよう。
 本書は、上述の問題点を踏まえ、頸動脈エコー検査実施上で必要な検査手技、計測方法、頸動脈エコー所見の意義などを、実際にこの検査を行う医師や検査技師向けに詳細に解説し、あすからの検査に活かしていただくべく、編集したものである。
 本書が、実地医家の先生や一線の検査技師の方々の必須のマニュアル本として使用されることを祈念して、本書出版にあたっての序としたい。

目次

第Ⅰ章 頸動脈エコー検査の対象
頸動脈エコー検査の対象…松尾 汎
A 動脈硬化と診断法/B 頸動脈エコーの対象/C その他の頸動脈エコーの応用

第Ⅱ章 頸動脈エコーの基礎
1 頸動脈の解剖・病理…杉岡憲一 ほか
A 頸動脈の解剖/B 頸動脈の組織像/C 頸動脈のプラーク形成と不安定プラーク
2 血管エコーの原理…中尾伸二 ほか
A 超音波とは何か/B 画像表示/C 周波数について/D 探触子/E ドプラ法
3 頸動脈内の血流の特性…菅原基晃 ほか
A 心臓血管系の波動/B 前進波と後退波の性質―wave intensity/C wave intensityの超音波計測/D 頸動脈wave intensityの生理学的性質/E 頸動脈血流速度波形の形成/F 頸動脈血流速度に影響を与える因子/G 頭頸部からの反射波/H augmentation index/I 頸動脈脈波速度/J 流れの剥離と頸動脈洞/K NASCETかECSTか

第Ⅲ章 頸動脈エコーの実際
1 頸動脈観察の基本(被験者,器械の条件設定,画像の表示法,短軸操作・長軸操作などの基本手技および描出困難例への対処)…佐藤 洋
A 頸動脈観察の基本/B 描出困難例への対処
2 頸動脈病変の評価―IMT測定…尾崎俊也
A max IMT/B max IMTの計測条件/C IMT計測の実際/D mean IMT/E IMTの計測精度/F IMTの評価
3 頸動脈病変の評価―プラークの分類・プラークスコア…長束一行
A プラークの分類/B プラークスコア
4 頸動脈血流速度の評価…齊藤正樹 ほか
A 血管同定のポイント/B ゲインの調整/C パルスドプラ法による血流速度測定/D 波形の解析/E 経口腔頸部血管超音波検査法(transoral carotid ultrasonography:TOCU)
5 頸動脈病変の評価―stiffness parameter β…絵本正憲 ほか
A 動脈硬化を血管弾性機能から診る/B stiffness parameter βと血管弾性機能の指標/C stiffness parameter β検査の実際/D stiffness parameter βの臨床的意義
6 椎骨動脈の描出と評価…脇 英彦
A 検査の手順と測定アプローチ/B 椎骨動脈の評価/C 椎骨動脈エコーによる評価の実際/D 鎖骨下動脈スチール症候群とは/E 最新のトピックス

第Ⅳ章 頸動脈病変の意義
1 IMTの意義…片上直人
A IMTの定義/B 心血管イベントの予測因子としてのIMT/C IMTの正常値と危険因子
2 プラークの分類と意義,プラークスコアの意義…半田伸夫
A プラークの分類/B 内膜中膜複合体厚とプラークの表記の問題について/C 頸動脈エコードプラ検査で評価したプラークの意義
3 頸動脈血流評価の意義…齊藤正樹 ほか
A 頸動脈エコー検査で血流速度波形が変化する病態/B 拡張末期血流速度の低下/C 測定部位の拡張と狭窄/D 近位側の狭窄と逆流/E 経口腔頸部血管超音波検査
4 stiffness parameter βの意義…藤代健太郎 ほか
A stiffness parameter βとは/B βの計測に必要な項目/C 頸動脈病理所見とβ/D 血圧の影響を受けにくいβ/E 超音波integrated backscatter(IB)値とβの相関/F βの加齢による変化/G 動脈硬化リスクファクターとβの関係/H 虚血性心疾患とβ/I 脳血管障害とβ
5 頸動脈病変と脳血管障害…山上 宏
A 早期動脈硬化病変と脳血管障害/B 頸動脈プラーク/C 頸動脈狭窄症/D 頸動脈狭窄症の脳卒中発症リスク/E その他の頸動脈病変
6 頸動脈病変と冠動脈疾患…片上直人 ほか
A 頸動脈病変の評価/B 頸動脈エコー所見と冠動脈疾患との関連(横断研究の結果から)/C 心血管イベントの予測因子としてのIMT(観察研究の結果から)/D 心血管イベントの代替指標としてのIMT(介入試験の結果から)/E 頸動脈病変の組織性状診断と冠動脈疾患
7 頸動脈エコーと末梢動脈疾患…小山英則 ほか
A 末梢動脈疾患とは/B 全身の動脈硬化症としての末梢動脈疾患/C 末梢動脈硬化疾患の分類/D 血管超音波法と末梢動脈疾患/E 頸動脈エコーは末梢動脈疾患のスクリーニング検査となりうるか?

第Ⅴ章 頸動脈病変に対する治療
1 内科的治療法…堤由紀子
A 脂質異常症の治療/B 高血圧症の治療/C 抗血小板薬と糖尿病の併用治療/D 頸動脈狭窄に対する脳卒中予防の最良な内科的治療としての抗血小板療法/E 大規模研究での脳梗塞発症抑制報告
2 内頸動脈狭窄症に対する外科的治療…種村 浩
A 病変評価・術前評価/B CEA/C CAS/D 脳卒中治療ガイドライン2009

第Ⅵ章 トピックス
1 超音波後方散乱(IBS)…片上直人 ほか
A IBSとは/B 検査機器と検査方法/C 頸動脈壁のIBS値と組織性状診断/D 頸動脈壁のIBS値と心血管イベントとの関連
2 TCDのコツと応用…坂口 学
A 血管同定方法とモニタのコツ/B 超音波血栓溶解療法/C 頸動脈血行再建術時の周期モニタ
3 頸動脈のMRイメージング…西村恒彦
A MRIによる血管病変の評価/B MRIによる頸動脈硬化の評価/C 今後の展開
文 献
資 料
索 引

ISBN:9784880026978
出版社:新興医学出版社
判型:B5
ページ数:135ページ
定価:4200円(本体)
発行年月日:2010年05月
発売日:2010年05月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MJ